鉄道/鉄道トリビア

【東京メトロ丸ノ内線のトリビア10選】JRの上を走る駅、所要時間「1分」の区間、アルゼンチンから里帰りした電車

東京メトロ丸ノ内線は、池袋駅を起点に都心を半周して東京駅、銀座駅経由で新宿駅に至り、西進して荻窪駅までの本線と、中野坂上駅から分岐して方南町駅に向かう支線とからなる路線だ。何カ所かの区間で地上に顔を出すことでも知られる。

野田 隆

執筆者:野田 隆

鉄道ガイド

東京メトロ丸ノ内線は池袋駅が起点で、都心を「コの字形」に半周して東京駅、銀座駅経由で新宿駅に至り、西進して荻窪駅までの24.2kmの本線と、途中、中野坂上駅から分岐して方南町駅に向かう3.2kmの支線とからなる路線だ。何カ所かの区間で地上に顔を出すことでも知られる。

銀座線と同じく、線路幅は新幹線と同じ1435mmの標準軌、第三軌条集電のため車両の上のパンタグラフや架線はなく、すっきりしている。また、他の鉄道との直通運転は行っていない。荻窪駅までの全線開業は1962年(当時は、新宿駅以西は荻窪線と呼んでいた)、東京では、銀座線の次に古い2番目の地下鉄路線である。
 

1. 丸窓、電源コンセント付きの新型車両

2000系

新型車両2000系

2019年に営業運転を開始した新型車両2000系。丸ノ内線のシンボルカラーである赤(Glowing Scarlet)がひときわ目立つ電車だ。初代300~500形の特徴でもあった白帯の中のサインウェーブも引き継がれている。ただし、従来の電車のように白帯が窓下にあるとホームドアで見えなくなるので、窓とドアの上に配置されている。
丸窓

特徴的な車端部の丸窓

車端部の窓は船のような丸窓で、これは丸ノ内線の「丸」を表しているとか。さらに、通勤電車では珍しく車端部のドア付近には電源コンセントが設置されている。事故などで長時間停車するなど不測の事態に対応するためといわれている。
コンセント

電源コンセントがある車内

2. 茗荷谷駅~後楽園駅付近にかけての地上走行区間、車窓から見える車両基地

本線の右手に車両基地

茗荷谷駅付近、本線の右手に車両基地が見える

丸ノ内線は都心を通るにもかかわらず、地上走行区間が何カ所かある。その中で一番長いのが、茗荷谷(みょうがだに)駅~後楽園駅~本郷三丁目駅間のうち1.1kmと0.6kmの2つの地上区間だ。

茗荷谷駅から後楽園駅に向けて発車すると、すぐ右手には広大な車両基地が望める。地下鉄車内から地上の車両基地がよく見える区間というのは大変珍しい。住宅地の中を築堤で通過し、何カ所か歩道や道路と立体交差しているのもここだけのことだ。
 

3. 後楽園駅の留置線

留置線

文京シビックセンターから眺めた後楽園駅の留置線

地上にある後楽園駅の池袋寄りには、電車を2編成停められる留置線(電留線)がある。これは、もともと隣にある茗荷谷駅隣接の車両基地のスペースが不足していたため、それを補うために造られたものだ。また、後楽園球場(現在の東京ドーム)での試合や大規模なイベントが行われたときの臨時列車増発の待機場所ともなっていた。

少し前までは、朝ラッシュ時終了後に後楽園行きの電車があり、夕方まで電車がここで休んでいる姿が見られた。現在では、深夜にこの留置線まで回送された後、朝まで待機し、早朝の後楽園発池袋行きの電車が設定されている。この留置線は、池袋方面への線路としかつながっていないので、荻窪方面への線路に転線することはできず、この留置線へ入った電車は、バックしてホームに戻ったあと、必ず池袋方面へ向かうことになる。
 

4. 神田川を渡る鉄橋

神田川を渡る02系

神田川を渡る02系

丸ノ内線は、神田川を渡るときに一瞬地上に顔を出す。地上区間は100mほどであり、JR中央線と総武線の下をくぐって、そのまま地下に入り大手町方面へと向かう。丸ノ内線の電車の撮影名所としても有名だ。
 

5. 東京駅に乗り入れる唯一の地下鉄

東京駅の壁面

東京駅の壁面にはカラフルなイラストや丸ノ内線関連の史実が記されている

東京駅は日本を代表するターミナル駅で新幹線を始め、JR各線が乗り入れている。しかし、数多い東京の地下鉄の中で東京駅に乗り入れているのは丸ノ内線だけである。すぐ北に位置する大手町駅が東京の地下鉄ネットワークの要となっているためであろう。
東京駅の3駅長

2014年12月の記念イベントで発車合図をする「東京駅の3駅長」

東京駅は、JR東日本とJR東海が管轄しているので駅長が2人いる。加えて、丸ノ内線の駅長と合わせて「東京駅の3駅長」としてイベントに出席することがある。ただし、丸ノ内線の東京駅を管理しているのは正式には後楽園駅務管区長なのだ。
 

6. 四ツ谷駅はJRの上を走る

丸ノ内線の下を走る中央線

丸ノ内線の四ツ谷駅ホーム。窓の外に下を走るJR中央線が見える

丸ノ内線は赤坂見附駅を出ると四ツ谷駅の手前で地上に顔を出す。距離にして250mほどの地上区間で、右手には上智大学のキャンパスが見える。四ツ谷駅付近はJR中央線が走っていたので、その下をくぐることにすると地下深いところを掘らなければならない。

そこで、建設費を節減するため、駅周辺を地上区間とし、中央線の上で交差しホームを設けることになり、新宿方面は地下の浅いところを通ることにしたのである。
 

7. 新宿駅と新宿三丁目駅は至近距離

所要時間は「1分」

新宿駅を発車、次の新宿三丁目までの所要時間は「1分」!

丸ノ内線の新宿駅と新宿三丁目駅の間は大変短く、電車は加速しないうちに減速して次の駅のホームに滑り込んでいく。駅間距離はわずか300mで東京メトロの路線の中では最短駅間距離である。次点は、日比谷線の日比谷~銀座、銀座~東銀座、半蔵門線の九段下~神保町の400mだ。

新宿駅と新宿三丁目駅は地下道でつながっている。雨の日でも徒歩移動できるし、歩いても大した距離ではないので、この駅間のみの移動なら、敢えて丸ノ内線に乗ることもないであろう。
 

8. 中野坂上駅から分岐する方南町支線

方南町駅

行き止まりの方南町駅

丸ノ内線には、池袋~新宿~荻窪を結ぶ本線のほかに、中野坂上駅から分岐して方南町駅に至る支線がある。途中駅は中野新橋駅と中野富士見町駅の2駅で所要時間は6~7分だ。

分岐線は、中野富士見町駅付近に車両基地を設ける関係で造った路線で、朝夕には車両基地に向かうため、本線から中野富士見町行きの直通電車がある。
支線の案内図

中野坂上駅で見かけた支線の案内図

それ以外は、近年まで中野坂上~方南町折り返しの3両編成の電車ばかりだったが、2019年に方南町駅のホーム延伸工事が完了したため、現在は池袋~方南町の6両編成の直通電車が、昼間は20分毎、ラッシュ時はおおよそ10分毎に運転される。

なお、丸ノ内線の路線記号はMだが、支線についてはMb(Marunouchi branch lineの略)が用いられる。
 

9. アルゼンチンから里帰りした電車

里帰りした500形電車

里帰りした500形電車

丸ノ内線で活躍した500形は名車の誉れ高い車両だったが、老朽化のため1996年までにすべて引退した。そのうち131両は南米アルゼンチンの首都ブエノスアイレスの地下鉄として活躍することとなった。しかし、さすがに寄る年波には勝てず、廃車されることとなった。
スペイン語表記

ブエノスアイレスで使われたときのスペイン語表記が天井付近に残る

しかし、500形の4両が奇跡の里帰りをすることになり、2016年に懐かしい日本に帰国し、整備の上、2017年に公開された。動態保存とのことで、走行を見たいものだが、今のところ実現には至っていない。
 

10. 映画007に登場した丸ノ内線

中野新橋駅

映画『007は二度死ぬ』に登場した中野新橋駅。駅舎に半世紀前の面影はない

人気スパイ映画007シリーズの第5作『007は二度死ぬ』(You Only Live Twice)(1967年公開)は日本を舞台にした作品で国内各地でロケが行われた。その中で、007ことジェームズ・ボンド(ショーン・コネリー)が日本の女性諜報員アキ(若林映子)を追いかけて深夜の地下ホームを走るシーンがあるが、丸の内線の支線にある中野新橋駅で撮影された。
カーブしたホーム

ホームドアが設置され綺麗になったがカーブしたホームはそのままだ

半世紀経って駅入口付近の様子はすっかり変わってしまったが、地上からホームに至る階段、カーブしたホームなど変わっていないものもある。現実には、ホームを走り抜けても行き止まりで、もう一つの出入口はないので、それはご愛敬というもの。むろん、秘密基地への落とし穴などあるわけもないので、ご安心を(笑)。

そして、ボンドは日本諜報部のボスであるタイガー田中(丹波哲郎)と出会い、彼の専用移動オフィスに案内される。これが何と丸ノ内線の赤い電車(500形)なのだ。乗車シーンのみが本物で、特別仕様の応接室となっていた車内は、もちろんセットであり、本物の電車を使ったわけではないだろう。

ほかにも国技館、銀座、ホテルニューオータニなど半世紀ほど前の東京や日本各地が舞台となり、興味深い作品である。今でもDVDなどで鑑賞可能だ。
 
以上、丸ノ内線に関するトリビアをまとめてみた。都内での通勤や移動に使っている人も多いであろうが、新たな発見があれば幸いである。

取材協力=東京メトロ(2000系報道公開、里帰りした500形報道公開)


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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