都内から水戸、日立、いわき方面へ向かうJR常磐線は、特急列車や長距離列車が走るイメージと松戸、柏方面へ向かう通勤路線の顔という両面性を持ち合わせている。今では品川始発の列車が多いけれど、知る人ぞ知る常磐線の素顔に迫ってみた。
 

1. 常磐線は本線ではなく、長大な支線

品川駅

今や常磐線の実質的な始発駅は品川駅だ

JR常磐線は東京都内の日暮里から水戸、いわきを経て宮城県の岩沼に至る343.7kmの長大な路線で全線電化されている。正式には、中央線は中央本線、東海道線は東海道本線となるけれど、常磐線はあくまで常磐線であって常磐本線ではない。東京近郊では複々線区間があり、半分以上の区間が複線であるにもかかわらず、常磐線は本線ではなく、あくまで東北本線の支線のひとつなのである。
 

2. 東京メトロ千代田線と相互直通運転

綾瀬駅

綾瀬駅までが千代田線となったことが「迷惑乗り入れ」の原因だといわれている

常磐線は東京近郊区間の取手駅までを複々線とし(当初は我孫子駅まで)、各駅停車と快速や長距離列車の線路を分離、1971年、各駅停車は地下鉄千代田線と直通運転を開始した。しかし、地下鉄千代田線と常磐線緩行線の境界駅を快速停車駅の北千住駅としないで綾瀬駅としたことが、混乱を招く結果となった。とりわけ、従来、乗り換えなしに上野駅まで行けた亀有、金町両駅の利用者は、かならず北千住駅あるいは西日暮里駅での乗り換えが発生することになり面倒になった。運賃面でも割高になる区間が生じ、「迷惑乗り入れ」ともいわれた。
 

3. デッドセクション

デッドセクション

藤代駅近くにあるデッドセクション

取手駅の次の駅・藤代駅の手前にはデッドセクションと呼ばれる交流・直流の切替区間がある。直流電化区間のまま延伸すると、石岡(茨城県)にある地磁気観測所のデータに悪影響を及ぼすため取手駅から先を交流電化区間にしたのだ。

そのため、常磐線の取手以北へ向かう列車は、高価な交直両用電車や電気機関車を用いなければならず、かつて電車はデッドセクションにさしかかると、電源切替のため一瞬室内灯が消えていた。現在の電車では室内灯が消えることはなくなったが、エアコンの電源が一瞬切れるため、耳を澄ませているとモーター音が数秒途絶える。

ちなみに地磁気観測所に影響を与えそうな路線であるつくばエクスプレスは守谷駅以南が直流、以北が交流となっているし、JR水戸線は小山駅と小田林駅の間にデッドセクションがある。また、関東鉄道常総線は電化を諦め、全線非電化でディーゼルカーが走っている。
 

4. 偕楽園駅のホームは下り線のみ

偕楽園駅

下りホームしかない偕楽園駅

金沢の兼六園、岡山の後楽園とならぶ「日本三名園」のひとつ偕楽園の直近には偕楽園駅がある。ただし、例年2月から3月にかけての「梅まつり」期間の土休日、それも9時頃から15時半くらいまでしか営業しない臨時駅だ。その時間帯であれば、普通列車のみならず、特急列車などの優等列車も臨時停車する。ただし、上り線にはホームがないので、停車するのは下り列車のみ。上り列車に乗車するには、一旦水戸駅に出なければならない。
 

5. 水戸駅ホームにあるコンビニ

水戸駅ホームのコンビニ

水戸駅7番線ホームにあるコンビニは電車の形をしている

水戸駅の東京方面行きの上り特急列車が停車する7番線ホームには、電車の形をした売店がある。この車両は、かつて特急「フレッシュひたち」としてもっぱら使われていたE653系電車をイメージしたものだ。この車両の外観の下半分は5色の塗り分けがあったが、売店は偕楽園の梅に因んだスカーレットブロッサムが採用されている。

E653系は、常磐線の特急を引退後、改装されて羽越線の特急「いなほ」や新潟~直江津方面を走る特急「しらゆき」として使用中だ。
 

6. 特急ひたち・ときわ

常磐線特急用のE657系

常磐線特急用のE657系

常磐線の代表列車は特急「ひたち」「ときわ」であろう。一時は「ときわ」の愛称は消え「スーパーひたち」「フレッシュひだち」と「ひたち」一色だったが、上野東京ラインが開業した2015年3月から上野~水戸間ノンストップ(一部、柏や土浦に停車する列車あり)が「ひたち」、停車駅が多く、勝田行きやせいぜい高萩止まりが「ときわ」と分けられた。

多くの列車は上野東京ラインに乗り入れ品川発着になったほか、「ひたち」のうち1日3往復はいわきから北上して仙台行きとなっている。所要時間は4時間40分程度で速達性は東北新幹線にかなわないけれど、列車旅愛好者の人気の的だ。
 

7. 日立駅にある海がよく見えるカフェ

シーバーズカフェ

人気のシーバーズカフェ

日立駅海岸口にはガラス張りの通路があり、その先には海の見える展望台およびカフェ「SEA BiRDS CAFE(シーバーズカフェ)」がある。シーバーズカフェは、2011年にオープンして以来、「海に浮くカフェ」として人気が沸騰し、多くの人が立ち寄っている。

カフェを含めたガラス張りの駅舎は、日立市出身の建築家妹島和世さんがデザインを監修し、2012年のグッドデザイン賞のほか、2014年に国際デザインコンペティション「ブルネル章駅舎部門」で最優秀賞を受賞した。なお、妹島さんは、西武の新型特急ラビュー(Laview)の監修も担当している。
 

8. 意外に少ない車窓から海が見える区間

久ノ浜駅付近の車窓

久ノ浜駅付近の車窓

常磐線は水戸から仙台の手前の岩沼駅まで太平洋岸を北上している。しかし、海が見える絶景区間は意外に少ない。強いてあげれば、勿来駅付近、いわき駅から北の区間で久ノ浜駅から末次駅、広野駅にかけての区間だ。とくに後者は山深いところを走り中々の絶景ポイントである。
 

9. 震災後の内陸移設工事

山下駅

山下駅は移設の上、高架となった

2011年3月11日の東日本大震災とそれにともなう福島第一原子力発電所事故の影響で常磐線は一部区間において長期間の運休を余儀なくされた。最後まで不通だった富岡~浪江間が復旧したのは2020年3月14日のことで、その間9年もの時間が経過している。被災区間のうち、福島と宮城の県境付近にある新地駅、坂元駅、山下駅は内陸に移設された新線上の駅として復活した。
 

10. 終点・岩沼駅

岩沼駅

常磐線の終点・岩沼駅

都内の日暮里駅で東北本線と分れた常磐線は仙台の手前の岩沼駅で再び東北本線と合流する。岩沼駅は常磐線の終点であるが、この駅が終着駅となる列車はなく、すべての列車はそのまま東北本線に乗り入れて仙台方面へ向かう。奇しくも日暮里駅も起終点となる列車はなく、上野駅や品川駅へ直通する列車ばかりだ。

したがって、運行形態としての常磐線は、品川、上野駅から仙台駅へ向かう路線として一般的には認識されている。
 
震災による長期の区間運休はあったものの、復旧した常磐線は首都圏の通勤輸送、長距離の旅客と貨物輸送、沿線地域のローカル輸送と様々な役割を果たしながら、今日も元気に走っている。


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