アフターコロナで「再開したい飲み会」「再開しなくていい飲み会」
コロナ前に行われていたような「職場の飲み会」は、アフターコロナにも復活するのでしょうか?
コロナが落ち着いた状態でも、以前のように飲み会が盛り上がらない背景には、「義理の飲み会」の復活を歓迎しない空気があるようです。
キリンホールディングス(HD)が行った「コロナ禍を受けた飲酒と『アルハラ』に関する実態調査」(月に1回以上飲酒する全国の20~50代の男女1,000人を対象/2021年4月)によると、「コロナ禍収束後、復活させたい飲み会」についての質問の回答は、1位が「花見」、2位が「忘年会」、3位が「誕生日会」で、プライベートで楽しむことの多い飲み会が上位に位置する傾向にありました。
一方で「コロナ禍収束後も、ないままでいい飲み会」についての質問の回答は、1位が「取引先との接待」、2位が「会社の定期飲み会」、3位が「新年会」で、仕事を通じて行われる「義理」の飲み会が上位に位置する傾向にありました。
この調査結果からも、家族や気心の知れたメンバーと飲む機会は大切にしたい人が多い一方で、義理の飲み会にはコロナが収まってからもできるだけ足を運びたくないと考えている人が多いことがわかります。
「飲みニケーション」は不要? 飲み会ストレス相談はカウンセリングの定番
長年、職場のコミュニケーションには「飲みニケーション」が必要だと言われてきました。共に働く人とお酒を酌み交わしながら話をすると、互いの人となりが理解でき、信頼関係が進むという考え方です。飲み会の席は職場と異なる空間であり、お酒が入れば普段とは異なる互いの側面を知ることができます。一方で、義理の飲み会には気遣いも必要で、立場が上の人には失礼のないようにしなければなりませんし、場の雰囲気を壊さないように会話の運び方にも気を使わなければなりません。
私のカウンセリング経験でも、「飲み会ストレス」はよくある相談の定番です。飲み会は勤務時間外なのに、なぜ自腹を切って職場の人と何時間も過ごさなければならないのかという疑問を持つ人は、以前から多いのです。欠席すると角が立ち、仲間として認めてもらえない可能性もあるため、本当は嫌だけど仕方なく出席している人も少なくありません。
参加強制はアルハラ! 仕事の話が進むとサービス残業状態にも
人々の飲み会への意識が変わるなか、コロナ禍で一度失われた「職場の飲み会文化」は、アフターコロナでも以前のようには復活しない可能性もあります。感染者数がいくら少なくても不要な感染リスクは避けたいと考える人、地方に移住してテレワークを続ける人など、多様な考え方や働き方を選択する人が増えるなかで、皆が一同に会して酒を酌み交わし、コミュニケーションを深める機会を持ちにくくなることが考えられるからです。また、そもそも業務時間外に行われる飲み会は任意の会合であり、普段の業務は飲み会参加の有無に関係なく進めていく必要があります。飲み会で仕事の話をすると不参加者が不利になり、参加者にはサービス残業をさせてしまうことがあります。したがって「飲み会も仕事のうち。全員参加してください」といった強引な誘い方をすると、「アルコールハラスメント」にあたってしまうので注意が必要なのです。
このように飲み会のメリットが薄れてリスクばかりが高まるなか、職場の飲み会の存在意義は年々薄れてしまうように思います。一方で職場のコミュニケーションは、通常業務を通じて円滑にしていくことが重要視されるでしょう。そもそも、普段のコミュニケーションがすれ違っているようでは、飲み会を開いたところで関係性が向上するはずもありません。
職場コミュニケーションを通常業務内で円滑にするコツ
職場のコミュニケーションを改善するには、職場の雰囲気をよくし、互いを思いやりながら仕事を進めていく意識が必要です。そのためには、会話を事務的な言葉のやりとりで終わらせるのではなく、相手と共に働くことで自分がどのような恩恵を得て、何が勉強になっているのか、具体的な言葉で伝えることが必要です。たとえば、「先日のサポート本当に助かりました。すごく感謝しています」「この間のプレゼン、細やかな工夫があってとってもよかったです」、このような具体的で心のこもった言葉を伝えあうことが互いへの承認行動となり、職場のコミュニケーションを円滑に進めるベースになるのです。
アフターコロナに移行しても、テレワークや遠隔会議が続き、仲間との物理的距離が離れた状態で業務を進める職場も多いことでしょう。だからこそ飲み会に頼ることなく、普段の業務のやりとりのなかで思いやりの言葉をかけあいながら、精神的距離を近づけていくことが必要になります。ぜひ、身近な仕事仲間との間で意識して実践し、職場でのコミュニケーションを活発にしていきましょう。