アドバイス1 65歳までに、一人なら十分な金融資産を残せる
家計のやりくりは、世帯によってさまざまです。ゴンさんのように生活費を出し合って共有で使う、というのもひとつの考え方でしょう。ただ、ゴンさんの場合は、配偶者の収入や個人で管理している資産を詮索しない、とのことですから、現在のような家計のやりくりで大丈夫か、しっかり見ていきましょう。現在、ゴンさん個人の金融資産として1487万円あります。これに毎月2万5000円の貯蓄ができていますので、年間で30万円。定年の65歳までの14年間で420万円になり、合計すると1907万円です。さらに60歳からの生命保険の受け取りが300万円ありますので、あわせて2207万円。これがゴンさんの老後資金となります。一人であれば、まったく問題ない金額でしょう。
車の買い替え費用も毎月3万円の積み立てを別途されているので、買い替えで大きな出費もありません。約2200万円は公的年金で不足する分にあてていくことになりますが、それでも十分な金融資産と言えるでしょう。
アドバイス2 65歳以降は配偶者の生活費が続けば問題なし
65歳で仕事を辞めた場合、ゴンさんの公的年金は、今のところ月額10万円ほど。個人的な支出を含めて現在の支出のままだとすると、毎月1万4000円の不足となり、年間で約20万円を貯蓄から取り崩していくことになります。単純に計算しても100年経ってもゼロにはなりません。ゴンさん個人としては、まったく問題ないでしょう。ただ、これもお互いに月7万円の生活費を出し合って生活していくことが前提です。もしも配偶者が7万円の負担ができなくなった場合、ゴンさんの負担は大きくなり、その金額次第で、貯蓄の取り崩しのスピードは速くなっていきます。
仮にゴンさんが65歳以降、配偶者の7万円も負担するとなると年間の不足額は96万円となり、貯蓄2200万円は22年後に底をつくことになってしまいます。
こう考えると、できるだけ長く働き、配偶者も現状維持で構わないので、月7万円の負担ができるだけの収入を得てもらうことが、何よりも大事になってきます。
アドバイス3 リスクを考えれば70歳まで働き、年金の繰り下げを
65歳でゴンさんが仕事を辞めてしまうと、それで生活ができてしまう、と思われてしまうのではないでしょうか? 収入は減るかもしれませんが、再雇用で70歳まで働けるのであれば、ゴンさんが長く働くことが、配偶者もリタイアせず働く動機付けになるように思います。できれば、ゴンさん自身の収支がプラスマイナスゼロになるような働き方ができればいいですが、多少不足があってもご自分の分は貯蓄で賄えます。70歳まで働ければ年金受給を繰り下げて年間177万5000円(月額約15万円)まで増やすことができ、70歳以降の生活は年金だけで賄えるようになります。
配偶者は年下ですので、ゴンさんが70歳の時に何歳になっているか次第ですが、65歳以降、年金受給を繰り下げ、ゴンさんが70歳になった時点で、二人ともリタイアし、年金のみで生活していくことにしたらいかがでしょう。
国民年金の満額は78万900円(令和3年度)です。1年繰り下げれば約85万円。月額約7万円です。配偶者の国民年金加入の状況がわかりませんが、少なくとも65歳までは働き、その後はゴンさんが働いている限りは働いてもらう。そして、ゴンさんと一緒に年金を繰り下げる選択を検討してほしいと思います。
いずれにしても、65歳時点での金融資産をいかに減らさないか、減らすスピードを遅くするかです。配偶者の収入次第で、将来の不安は残りますが、この結果は知らせず、これまでどおり、普段どおりの生活を送られてください。
相談者「ゴン」さんから寄せられた感想
経済的に自立できていることと、私の働き方次第でどうにでもなるということがわかり安心しました。仕事に対する価値観もお互い違うので無理せず、先生のアドバイス通り今の状態を継続していきたいと思います。ありがとうございました。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください。(相談はすべて無料になります)
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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/伊藤加奈子
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