労務管理

最低賃金「1500円に」全労連が生活費から算出。最低賃金はどう決まる?

最低賃金は「最低賃金法」により毎年10月頃に決定されます。全労連が算出した最低賃金は「1500円以上」。国が目指す全国平均1000円とは500円の差があります。今回はこれらの情報のまとめと、最低賃金が上がることで生じるメリット・デメリット、「同一労働同一賃金」についてなど賃金設計に役立つルールをご紹介します。

小岩 和男

執筆者:小岩 和男

労務管理ガイド

最低賃金「1500円に」全労連が生活費から算出。最低賃金はどう決まる?

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従業員の賃金は最低賃金以上+納得できる説明も必要です

最低賃金は「最低賃金法」により毎年10月頃に決定されます。従業員の給与はこれを下回らないように決定しなければなりません。今般、全労連から最低賃金額は1500円以上必要との会見がありましたが、国が目指す全国平均1000円とは500円の差が出ています。

今回はこれらの情報のまとめと、最低賃金が上がることで生じるメリット・デメリット、「同一労働同一賃金」についてなど最低賃金を含む賃金設計に役立つルールをご紹介します。
 

2020年度の最低賃金は902円(全国平均)

最低賃金は最低賃金法に基づき、毎年開催される厚生労働省の審議会で議論がなされ、毎年10月頃に決定されます。額は時間(時給)によって決定されますが、日給制や月給制の場合は時間当たりに換算することで求めます。現在(2020年度)の地域別最低賃金は全国平均で902円。最も高いのは東京都で1013円、最低は、秋田、鳥取、島根、高知、佐賀、大分、沖縄の7県で792円と開きがあります。
 
日給・月給の最低賃金の時間額換算法は次の通りです。
  • 日給制=日給÷1日の所定労働時間
  • 月給制=月給÷1カ月平均所定労働時間
 
最低賃金の確認方法はこちらで確認ください。
 

全労連は全国一律時給1500円を求めている!

今年も上記審議会で議論が始まりますが、全国労働組合総連合(全労連)では、2021年5月31日に会見を開き、最低賃金を1500円に引き上げ、全国一律の最低賃金制度の実現を政府に求めました。これは独自に実施した過去6年間で取り組んだ22都道府県の組合員等へのアンケート調査(最低生計費試算調査)結果によるものです。それによると、25歳の単身者が生活するには、毎月23万円(時給1500円)程度の収入が必要との結果だったということです。安心して暮らせる賃金を保障することは、生活の安定にもつながりますね。
 

国は全国平均1000円を目指している!

では、次に国の方針を見てみましょう。政府は2021年6月9日に、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の原案を公表しました。最低賃金は、全国平均1000円にすることを目指すことになっています。コロナ禍の影響もあり賃金格差が広がっていますが、格差是正には国による最低賃金の引き上げが求められます。全労連と国が目指す額には500円の開きがありますが、加重平均(異なる価値を数値化し、掛け算してから求める平均)で1000円を目指すとのことですから、企業実務では1000円を最低基準に今後の賃金決定をしていくことになるでしょう。
 

最低賃金UPのメリット・デメリット

主に非正規社員(パート・アルバイト・派遣社員等)では、最低賃金をベースに額を決定している企業が多いことでしょう。最低賃金が上がれば正規社員との賃金格差が縮まりますからより生活の安定につながります。これは、大いなるメリットですね。

一方、デメリットと考えられるのが人件費の増大です。特に非正規社員が多い企業では影響が大きいものです。総額人件費(給与や福利厚生費等、人にかかわるコストの合計費用)の範囲での雇用となると、最低賃金が上がった分を解消するため、解雇等で失業者が増える要因にもなります。また正規社員の賃金額が減少する要因になる可能性もあるでしょう。
 
デメリットばかりでは最低賃金を上げることは困難です。上げることで中長期的なメリットが考えられるよう、正規社員と非正規社員の賃金のあり方を設計していくことがポイントです。次では、「同一労働同一賃金」について解説します。将来展望が見える制度にすることで、特に非正規社員の動機付けにつながるように設計したいですね。
 

賃金設計(最低賃金含む)では「同一労働同一賃金」に留意!

最低賃金の決定については、過去記事「そうだったのか?最低賃金の基礎知識」をチェックしてみてください。また同時に留意しておきたいのが「同一労働同一賃金」です。これは、同じ企業で働く正規社員と非正規社員(有期雇用・パートタイム・派遣労働者)との間の不合理な待遇差を解消して、多様で柔軟な働き方を「選択」できるようにするという考え方です。大企業は2020年4月から、中小企業は2021年4月から適用されています。
 
最低賃金のルールを遵守することはもちろんのこと、特に、正規・非正規両者の賃金設計では「同一労働同一賃金」を踏まえ決定する時代が到来したのです。厚生労働省から、基本給を含む賃金制度を検討する際に特に役立つツールが公開されていますから、自社の制度設計に使用することをお勧めします。賃金支給には原資が必要ですから、従業員にきちんと説明できる(納得できる)ようなルールづくり(適正な評価による配分)をしていきたいですね。
 
職務分析・職務評価ツール
正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者の基本給について、待遇差が不合理かどうかの判断や、公正な待遇を確保するため、賃金制度を検討する際に有効なツールです。
  
<参考記事>
そうだったのか?最低賃金の基礎知識
 
<参考資料>
最低賃金制度の概要(厚生労働省)
最低賃金特設サイト(厚生労働省)
同一労働同一賃金(厚生労働省)
パート・有期労働ポータルサイト(厚生労働省)
 
 
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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