高年齢者雇用安定法により、希望者が65歳まで働けるようになった!
平成25年4月から施行の高年齢者雇用安定法改正により、60歳未満の定年は禁止され、65歳まで定年延長するか、継続勤務制度や再雇用制度をもうけて希望者全員を雇用する義務が事業主にはあります。さらに令和3年4月からは、70歳まで希望者が働けるような措置を取るように、事業主には努力義務が課されました。いまは「60歳過ぎても現役」の社会なのです。60歳過ぎても社会保険に入って働けば、年金が増えます
60歳で退職した場合、将来いくらの年金をもらえる?
ただ、現実には60歳で退職する人も数多く存在します。この場合は、いくら年金がもらえるのでしょうか。会社員として働いていた人は厚生年金に加入して保険料を払うため、国民年金にも加入していたことになり、65歳からは老齢基礎年金と老齢厚生年金をもらえます(年齢によっては65歳以前に特別支給の老齢厚生年金を受け取れることもあります)。
ここでは、昭和38年(1963年)3月生まれの現在60歳の男性を例に考えてみます。男性は20歳から22歳になるまでは国民年金(24カ月)、22歳から60歳までの38年間(456カ月)厚生年金に加入し、平均標準報酬額(加入していた期間の平均的な給与、賞与)がずっと30万円だったとして、60歳で退職した場合の老齢厚生年金、老齢基礎年金をざっくり計算してみましょう。65歳以降には老齢厚生年金、老齢基礎年金が支給されます。
・65歳以降にもらえる老齢厚生年金
30万円×5.481/1000×456カ月=年額74万9800円【1】
・65歳以降にもらえる老齢基礎年金
20~60歳まで国民年金保険料と厚生年金保険料を納めていたということなので、満額の79万5000円がもらえます
79万5000円(令和5年度・老齢基礎年金の満額、新規裁定者)×(24カ月+456カ月)÷480カ月=年額79万5000円【2】
【1】74万9800円+【2】79万5000円=年額154万4800円
60歳で退職した場合、65歳以降、老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計は、年額154万4800円になります。
60歳から63歳まで月給20万円で働くと年金はどのくらい増える?
先ほどの男性が60歳から63歳まで月給20万円で働き続け、厚生年金に加入していた場合の年金について、どのくらい増えるか計算してみましょう(働いた期間をざっくり36カ月とします)。この場合、60歳以降、厚生年金に加入して働いて増えるのは、65歳から支給される老齢厚生年金の部分です。・65歳以降にもらえる老齢基礎年金、老齢厚生年金の金額
3年間(36カ月)働いたことによる、老齢厚生年金の増加分
20万円×5.481/1000×36カ月=年額3万9463円【3】
【1】74万9800円+【3】3万9463円=老齢厚生年金年額78万9263円【4】
老齢基礎年金は【2】79万5000円
【4】78万9263円+【2】79万5000円=年額158万4263円
63歳になるまで働いた場合、65歳以降、老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計は、年額158万4263円になります。
63歳退職の年金158万4263円-60歳退職の年金154万4800円=差額3万9463円
60歳から働いて、支払う厚生年金保険料はいくら?
令和5年度協会けんぽの保険料額表(東京都)によれば、標準報酬月額(月給)20万円で60歳以上の方の厚生年金保険料は月額1万8300円、健康保険料が1万1820円(介護保険料含む)です。63歳までの3年間で65万8800円の厚生年金保険料を払うことになります。およその計算では、この人の場合、65歳から約17年(支払い保険料65万8800円÷増額分3万9463円)長生きすれば、受け取る老齢厚生年金で保険料分が回収できる計算になります(*国民健康保険料、介護保険料、後期高齢者医療保険料、税金などは考慮せず)。
扶養する家族が多い人などは健康保険で家族を扶養に入れることができるので(年齢、所得、生計同一要件あり)、働いて社会保険(厚生年金、健康保険)に入り続けることは大きなメリットとなります。
*経過的加算は計算に含めていません。
*厚生年金の全期間を平成15年4月以降の乗率、5.481/1000を使っています。
*加給年金は計算に入れていません。
*標準報酬額の再評価はしていません。
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