「参考になりました」「なるほどですね」……イラッとされる言い回し
言葉遣いに不快感を抱く人は意外に多い
職場でイラッとすることの第1位は……
言葉遣いが少々ぞんざいでも、自分は仕事をきちんとしているから大丈夫。そんなふうに思っている人には、「同じ職場のメンバーにイライラさせられたり、困ったことがあったりした経験」という調査の結果(*1)をご紹介したいと思います。
同じ職場のメンバーにイライラさせられたり、困ったことがあったりした経験
「礼儀作法・言葉遣いに関すること(48%)」
「仕事に対する姿勢や努力に関すること(45%)」
「性格や価値観に関すること(44%)」
「業務の説明の過不足に関すること(44%)」
「仕事の成績や進行スピードに関すること(41%)」
「就業時間に関すること(26%)」
なんと1位は礼儀作法と言葉遣いでした。2人に1人がイラッとしたことがあるという結果ですので、「言葉遣いくらい」とは言えないでしょう。どんな言葉遣いに注意したらいいのか、グループインタビュー(*2)で抽出した具体例と、言い換えフレーズを確認しておきましょう。
丁寧なつもりが、上から目線に聞こえてしまうフレーズ3選
丁寧なつもりが上から目線に聞こえてしまうことも
アドバイスをもらったとき、相談にのってもらったときなど、感謝の気持ちを伝えるつもりで「参考になりました」と言っている人がいます。このフレーズは「参考程度にしかならなかった」と解釈されてしまうことがあるので注意が必要です。「○○くん、この間の資料なんだけど、淡い色はあまり使わない方がいいよ。先方がコピーして、いろんな人に見てもらうということもあるから。次から白黒にしたときも見やすい配色で作るといいよ」
「そうなんですね。参考になりました」
言い換えフレーズは「勉強になりました」です。様々なケースに使えますが、よく使われる決まり文句のため、相手の心には届きにくいという欠点があります。気持ちを伝えたいときには「××というアドバイスが大変勉強になりました」というように、具体的に勉強になった部分を付け加えるとよいでしょう。
【言い換え例】
「○○くん、この間の資料なんだけど、淡い色はあまり使わない方がいいよ。先方がコピーして、いろんな人に見てもらうということをもあるから。次から白黒にしたときも見やすい配色で作るといいよ」
「先方でコピーされることまで、考えられませんでした。勉強になりました。ありがとうございます」
2)「なるほどですね」
筆者は「なるほどですね」という言い回しを不快に思わないのですが、リサーチしてみたところ不快に感じる人は少なくないようです。気にならない人もいれば、気になる人もいるといった言い回しは他にもあると思いますが、気になる人もいるということを考えると避けたほうがよいでしょう。「もう少しシンプルな作りにして、価格を下げられないか検討してみてくれ。今は、多少利益率が低くても実績になる案件を増やしていったほうがいいだろう」
「なるほどですね」
言い換えとして「おっしゃるとおりです」というフレーズを紹介している人もいますが、この言い回しも「上から目線だ」と感じられてしまうことがあります。相手の話に興味があること、理解したことを伝えたいときにも「勉強になります」が使えます。
【言い換え例】
「もう少しシンプルな作りにして、価格を下げられないか検討してみてくれ。今は、多少利益率が低くても実績になる案件を増やしていったほうがいいだろう」
「利益率よりも実績が大事な時期もあるんですね。勉強になりました」
3)「いいですよ」
「明日の面談だけど、1時間遅らせて16時からにしてくれ」
「いいですよ。場所は会議室のままでよろしいですか」
「ですます」を使った敬語ですが、してあげるというニュアンスがある言葉なので、目上の人には使えません。言われた方はドキッとするくらい、上から目線に聞こえますので注意しましょう。言い換えは「承知しました」や「かしこまりました」がおすすめです。カタすぎると感じる人は、笑顔で言うようにすると仰々しさがなくなるのでやってみてください。
【言い換え例】
「明日の面談だけど、1時間遅らせて16時からにしてくれ」
「かしこまりました。場所は会議室のままでよろしいですか」
口癖でイラッとさせてしまうフレーズ3選
1)「っていうか」「っていうか」という言い回しは、職場ではNGです。正しくは「というか」になりますが、否定のニュアンスがあります。目上の人にはもちろんのこと、職場の人にも使わないようにした方がよいでしょう。「例の条件について、先方は何か言ってた?」
「っていうか、そもそも値段が合わないみたいです」
「というか」という言い回しは自分の言ったことを否定するときに限って使えると覚えておきましょう。
【言い換え例】
「例の条件について、先方は何か言ってた?」
「(『っていうか』は省く)そもそも値段が合わないようです」
【自分の発言を否定するときに使う例】
×「っていうか、勉強になったと思います」
○「失敗というか、いい勉強になったと思います」
2)「私的には」
口癖で「私的には」という言い回しを使う人がいますが、これは社会人としては避けたほうがよい言い回しです。未熟な印象を与えるだけでなく、自己主張の強さもイメージさせてしまいます。職場だけでなく、プライベートでも使わない方が良いでしょう。「A案とB案どちらがいいと思う」
「私的には、A案ですね」
言い換えフレーズとしては「個人的には」がおすすめです。自分の意見や感想を伝えても、主張し過ぎることがない印象になります。参考程度にしてほしいというニュアンスもあるので、若い人にも使いやすいフレーズです。
【言い換え例】
「A案とB案どちらがいいと思う」
「個人的には、A案だと思います」
3)「ほんとですか」
驚きや喜びを表現するつもりの相槌ですが、声のトーンや表情に気をつけないと、疑いのニュアンスを感じられてしまう表現です。「評価されるのが、そんなに驚きなのか」というように捉える人もいることを知っておきましょう。「この間の契約が評価されて、来週、社内で表彰されることになったよ」
「ほんとですか」
言い換えフレーズとしては「それはすごいことですね」「さすがですね」などがおすすめです。
【言い換え例】
「この間の契約が評価されて、来週、社内で表彰されることになったよ」
「それはすごいことですね」
悪気はないのにトラブルを誘発しやすいフレーズ3選
1)「それって意味あるんですか」忙しいときに意味がない(ように見える)仕事を押しつけられたときなどに、反射的に出てしまうフレーズでしょうか。こうして文字にすれば不快感を与えるフレーズだというのはすぐにわかると思いますので、使わないようにしてください。黙って押しつけられていては支障が出てしまうといった場合でも、丁寧な伝え方をしましょう。「このファイルを五十音順に並べ直しておいてくれる」
「それって意味あるんですか」
言い換えフレーズは「背景を教えてもらえますか」です。この言い換えでも不快に感じる人もいますので、相手の言葉を繰り返し、少しマイルドに伝えるのがポイントです。
【言い換え例】
「このファイルを五十音順に並べ直しておいてくれる」
「並べ直しですね。背景を教えてもらえますか」
2)「でも」
「でも」という言葉は日常でも普通に使う言葉ですが、否定のニュアンスを含むので、相手の意見に反論しているように聞こえてしまいます。意識して使わないようにしましょう。「デザインはラフでいいのでC案まで出してください」
「でも、それだと提出が遅くなります」
言い換えフレーズは「でも」を省くだけです。意外と思う人もいるかも知れませんが「でも」を省いても、十分内容は伝わるので、そもそも使う必要はない言葉なのです。
「それだと××になります」という言い方は、「あなたがそう言うのなら、私はこうします」という攻撃のニュアンスに聞こえてしまうことがあります。語尾を「なってしまいます」に変えることで、「私はそうなってほしくない」という気持ちを込めることができます。
【言い換え例】
「デザインはラフでいいのでC案まで出してください」
「(『でも』は省く)それだと提出が遅くなってしまいます」
3)「なるはやで」
「なるべく早く」を「なるはや」と略した表現も不快に感じる人がいます。「なるべく早く」という表現は人によって受け止め方が違うので、トラブルに繋がりやすいフレーズでもあります。特に「なるはや」と略した場合、期限が曖昧で先延ばししてもよいかのように感じられてしまうリスクが高いと言えるでしょう。言い換えでは、具体的な期限を伝えます。「A社の見積もり、なるはやでお願いします」
【言い換え例】
「A社の見積もりは、水曜の15時までにお願いします」
いずれの言い換えもほんの少し気をつければ、できるものばかりです。あなたは「職場」に対して何を求めますかという調査(*3)では「職場のコミュニケーションが良好であること/職場の雰囲気がよいこと(66.7%)」が第一位でした。職場のコミュニケーションは小さなことの積み重ねですので、ぜひ習慣にしてみてください。
【出典】
*1 大西勝二 (2002). 『職場での対人葛藤発生時における解決目標と方略. 産業・組織心理学研究』. 産業・組織心理学研究 16(1), 23-33.
*2 株式会社アップウェブ(2021) 職場で不快に感じた言葉に関するグループインタビュー(オンラインによる聞き取り, 複数回答形式, n=24, 年齢39歳~57歳)
*3 船木幸弘(2016). 『職場のコミュニケーションの組織マネジメント的検討: 就業意識等の調査結果及び関連事項の先行研究の考察をとおして』. 人間生活学研究 (23), 13-28.
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