今回の質問はこちら。
Q:60代になると平均給与が下がります。そんな中で、どのようなことにお金を使っていけばいいのでしょうか?
今後の平均給与は、60歳でも下がらない
中野さん:これまでも話してきましたが、高年齢者雇用安定法の改正(※1)がある以上、60歳で仕事を辞める、定年になるという考えは一切捨てましょう。70歳まで仕事をすると考えれば、まだまだ現役。60歳でも社会の流れに取り残されないように、学びにお金を使っていくのがいいのではないでしょうか。国税庁の調査では60代の平均給与は50代と比べて下がるのですが、これは60歳定年が前提になっていますよね(平均給与50~54歳:525万円、55~59歳:518万円、60~64歳:411万円、65~69歳:324万円※2)。
今後は60歳以降も働くことが前提になるのだから、平均給与も上がってくるはずです。おそらくこれまでの60代の人が受け取ってきた給与より多くなってくるでしょう。そうすれば自己投資や学びにもお金を使えると思います。
参考資料
※1「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」厚生労働省
※2「令和元年分民間給与実態統計調査」国税庁
60歳以降の最低限の生活費は、平均22万1000円
中野さん:でも中には60歳になったら仕事を辞めて、ゆっくりしたい、趣味の時間にしたいと思う人もいますよね。その場合の前提で大切なのは、人生100年時代の中で生きているということです。60歳で引退をしたら残りは40年です。この間どうやって生活をしていくのか、お金はどうするのか、とても重要なことを考えなければなりません。公益財団法人 生命保険文化センターがWebサイトで公開している「老後の生活費はいくらくらい必要と考える?」(※3)によると、60歳以降の夫婦2人の最低日常生活費は平均で月22万1000円、ゆとりを持とうと思ったら平均で月36万1000円かかります。そのお金がありますか?という話です。これは絶対に目を背けてはいけない部分ですよね。
参考資料
※3「老後の生活費はいくらくらい必要と考える?」公益財団法人 生命保険文化センター
仕事を続けるのがスタンダードになる
中野さん:これだけのお金が必要と分かれば、普通は「だったら働いた方がいい!」となります。働ける期間にしっかり働いて、社会に参加しながら一定の収入を得る。これが今後のスタンダードになるのではないでしょうか。会社も高齢者だからといって、60代を排除するようなことはないはずです。なぜなら学び続ける60代には経験や知識というものすごく貴重な財産があるからです。若者が60代から学ぶことはきっと多いはず。会社も60代にしかない経験を求めているはずです。
逆に考えれば、60代になった時に求められる人材になっている必要があるということです。あきらめずに常に学び続けることだと、僕は思いますね。
健康投資も忘れずに
中野さん:もう1つ肝心なのは、健康への投資です。いくら会社に求められているとはいえ、健康を害してしまったら働くことができません。せっかくのチャンスを逃してしまうだけではなく、医療費もかかってしまいます。そうならないように、定期的に検査をしたり、運動をして自分の健康は自分で管理していくことも求められると思います。社会貢献ができるのも60代
中野さん:人生の価値観としては、後ろ指をさされない人生を目指すのがいいのかなと思っています。例えば寄付をしたり、社会貢献をしたりです。60歳になると、50代や40代にはない部分に価値を見いだすようになると思いますね。僕の周りでも、60歳を超えて社会貢献に力を入れるようになった人もいます。おそらく人生の半分を過ぎたことを実感し、自分ができることを考えてのことだとは思います。その変化を感じたら、やれることを少しずつ続けていけると素敵ですよね。
――次回は「日経平均3万円回復といわれていますが、実際に経済ってどうなんでしょうか」について聞いていきます。
教えてくれたのは……
セゾン投信株式会社 代表取締役会長CEO 中野 晴啓(なかの はるひろ)
セゾン投信の中野晴啓会長
1987年クレディセゾン入社。セゾングループの金融子会社にて資産運用業務に従事した後、投資顧問事業を立ち上げ運用責任者としてグループ資金運用のほか、海外契約資産などの運用アドバイスを手がける。その後、クレディセゾンインベストメント事業部長を経て、2006年セゾン投信株式会社を設立。2020年6月より現職。現在2本の長期投資型ファンドを運用、販売しており、顧客数は約15万人、預かり資産は4000億円を超える。一般社団法人投資信託協会理事。公益財団法人セゾン文化財団理事。著書に『預金バカ』(講談社+α新書)、『つみたてNISAはこの8本から選びなさい』(ダイヤモンド社)など。
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