新型コロナウイルス感染症の影響や税金の見直しなど、家計に与えるダメージが大きくなる日本社会。加えて世帯年収も下がるのでは?という不安がつきまといます。でも私たちは一生お金と付き合っていかなければなりません。そんな中で、お金をどう捉え、どう付き合っていけばいいのでしょう。お金のプロとして資産運用に携わるセゾン投信の中野晴啓会長にお話を伺います。

今回の質問はこちら。

Q:コロナや税金の見直しもある中、世帯年収が減っていく不安もあります。私たちは今後、お金とはどう付き合っていけばいいのでしょうか?

 

今後も年収が下がる可能性は高い

中野さん:まず世帯年収についてですが、今の日本経済を見たら、今後実質的には世帯年収が下がっていく可能性が高いでしょう。もちろん人それぞれ生活環境や職業が違うので一律ではないのですが、日本経済を筋道を立てて考えた場合、残念ながらその流れは起きてしまうのではないでしょうか。

というのも、世帯年収が下がってしまう、税金が上がってしまうなどの将来に対する不安によって、人は消費を控えてしまう傾向がありますよね。ここ1年では新型コロナウイルス感染症の影響もありますが、確実に消費者が使うお金が減っています。
 

お金を使わないと経済は小さくなる

中野さん:日本の国内消費が減るとマクロ経済は小さくなっていきます。日本国内で一定期間に新たに生み出されたモノやサービスの付加価値で、日本の経済力の目安にもなる国内総生産(GDP)の約55%は家計の消費で成り立っています(※1)。

もし消費が減ってしまったらGDPも減りますよね。ということは日本の経済力も弱くなって、それは経済の縮小にもつながってしまいます。そうなると給料が減るのは必然的なことです。つまり収入の減少、消費の減少、経済の縮小、そして収入の減少という負のスパイラルが起きてしまうということです。
 
ちなみに、2021年3月9日に内閣府が発表したGDP実質年率は、2020年通年で前年よりも4.8%減少しています(※2)。実はリーマンショックの時にも5.7%の減少があって、今回はそれに次ぐ過去2番目に大きな下げ幅です。個人消費で見れば5.9%減ですから、消費が減ったことがGDPのマイナス幅を膨らませた結果ですよね。
 
参考資料
※1「第1部 第1章 第1節 消費者を取り巻く環境の変化と消費者問題~家計の消費の動向~|概要」消費者庁
※2「2020年10-12月期GDP速報(2次速報値)」内閣府
 

社会や経済のことを踏まえてお金を考えていく

中野さん:収入が減り消費を抑えると経済は縮小するのだから、お金のことを考える場合には、個人の年収うんぬんではなくて、社会や経済にも目を向ける必要があるということです。その中で自分の生き方を考えながら、お金との付き合い方を変えていくことが求められます。そうしないと、小さくなっていく経済の流れの中で、自分もどんどん貧しくなってしまいますから。
 
お金と付き合うポイントは、例えば政府が強調している「貯蓄から投資」もその1つです。「社会が変わっていくから、国民の皆さんも自分で危機管理をしてください」これがメッセージなんです。政府が訴える通り、これからは自分で考えてしっかりと対応していかなければならないし、それはお金の使い方だけではなく、これからの生き方にも通じます。ここでいったん棚卸しをして、これから自分はどう生きていくのかを考えるタイミングになってきているのです。
 

借金はしてもいい?

中野さん:年収が増えない、でも税金が増えるとなったら借金を考える人もいるかもしれません。

借金には「していい借金」と「してはいけない借金」の2つのタイプがあります。していい借金は、自分の価値を上げるための借金です。借金は、今は実現できない夢や希望を金融の力を借りて実現させることでもありますよね。

例えば住宅を買うことで生活が豊かになり潤いが出るならば、それはいい借金です。ただ借金をする場合には将来自分がどれだけ稼げるのか、「将来キャッシュフロー」を考える必要があります。きちんと数値化していけば、毎月いくらだったら返済できるのかわかりますよね。根拠を持ってお金を借りることが前提になるということです。
 
一方で今の生活がカツカツだから、一時的な穴埋めのためのお金を借りるのは「してはいけない借金」です。なぜならばリターンがないからです。それならば、まずは収入の範囲内で生活することを考えましょう。

つまり身の丈を考えて、それにあった生活をすることです。他人がブランド物を持っているから自分も持つ、他人がいい車に乗っているから自分も……ということではなくて、今の収入の範囲内で何が買えるのかを現実問題として捉えていきましょう。もちろん犠牲は出ます。我慢しなければなりませんし。でもそれによってキャッシュフローが安定してくるのです。
 

贅沢の定義とは

贅沢は人によって違う

贅沢は人によって違う

中野さん:我慢をすることは贅沢をしないことのように考えられますが、実はちょっと違います。そもそも贅沢の定義は人によって異なりますよね。僕は喫茶店に行った時に、いつもは400円のコーヒーだけれど、時々600円のクリームソーダを飲むと「贅沢してるな、オレ」と思うんです。贅沢は高価な物を買うことだけではなくて、日常のふとした瞬間の小さな出来事の中にもあるんですよね。

だからお金がないから贅沢ができないということではなくて、何が贅沢なのかを考えてみるといいと思います。ただその贅沢をするために借金までしてしまうのは、適切ではないです。それは身の丈を超えてしまっているのだから、あくまで身の丈にあった贅沢が前提です。贅沢の中にも諦めるべきものがあって、その線引きをすることがお金との付き合いでは必要ですよね。

――次回は「お金はどうすれば稼げるようになる?」について聞いていきます。

教えてくれたのは……
セゾン投信株式会社 代表取締役会長CEO 中野 晴啓(なかの はるひろ)
セゾン投信株式会社 代表取締役会長CEO 中野 晴啓

セゾン投信の中野晴啓会長



1987年クレディセゾン入社。セゾングループの金融子会社にて資産運用業務に従事した後、投資顧問事業を立ち上げ運用責任者としてグループ資金運用のほか、海外契約資産などの運用アドバイスを手がける。その後、クレディセゾンインベストメント事業部長を経て、2006年セゾン投信株式会社を設立。2020年6月より現職。現在2本の長期投資型ファンドを運用、販売しており、顧客数は約15万人、預かり資産は4000億円を超える。一般社団法人投資信託協会理事。公益財団法人セゾン文化財団理事。著書に『預金バカ』(講談社+α新書)、『つみたてNISAはこの8本から選びなさい』(ダイヤモンド社)など。

 

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