転職エージェントは実力差が大きいので要注意
最後に、転職エージェントの行動特性とその実力差について業界の実態を紹介し、春転職に挑戦する求職者への注意を促したい。転職エージェントの転職支援が、行政による公的サービスではないこと、いわゆる競争の激しいビジネスであることは指摘したとおりだが、それに伴って、転職エージェントの仕事の現場は、スピード感にあふれており、成功と失敗の連続である。転職エージェントの多くは、目標の数字を達成できておらず、焦りを感じている転職エージェントも多い。
その背景には、転職エージェントの数が多すぎることがある。その結果、企業と転職エージェント間の契約は、転職エージェントにとって不利な成功報酬(採用が実現したら手数料を支払う)になっており、1つの採用の実現に30社の転職エージェントが競争しているような場合も珍しくない。
競争が激しいから転職支援のサービスが低下するというのは、求職者を顧客とみなした場合(無料でサービスを受ける顧客)には競争原理にあっていない現象だが、転職エージェントにとって求人企業も紹介手数料を支払ってくれる顧客であることから、求職者よりも求人企業への対応をより優先するという行動特性が、転職エージェントに生まれる場合がある。
求職者と求人企業のマッチングを実現するために、両者に対してバランスの取れた良質なサービスを提供できる転職エージェントもいるが、それは優秀な転職エージェントであり、全ての転職エージェントがそれをできているわけではない。
実際、転職エージェントのサービスに不満を感じる求職者は多いに違いない。サービスの良い転職エージェントに出会ってみれば、転職エージェントが転職の実現に大きな影響力を持つことがあることに納得できるはずだが、残念ながら、転職エージェントの実力格差は大きいため、多くの求職者を満足させることができていないのが実態である。
一方、「未公開の魅力的な求人案件」がたくさんあることは事実であり、採用プロセスに関する詳しい最新情報を得られれば、求職者が事前に準備できることが一気に増えて、明らかに転職活動で有利になる。
そして、質の高いキャリアアドバイスを得て、客観的に自分のキャリアの棚卸をし、今後のキャリアパスを見据えた決断をするためのコミュニケーションパートナーとして、頼りになる転職エージェントに転職支援をしてもらうことがかなえば、転職のリスクを大きく下げ、その転職が人生の転機になる可能性が高まる。
春転職は、一年の中で最もチャンスが多い時期である。慎重に粘り強く転職情報を収集し、力のある転職エージェントとの出会いを求めて、この春は転職活動に取り組んでみてはどうだろうか。
【おすすめ記事】
・ANAグループ外出向の衝撃! 30代・40代の転職市場価値は今後どうなるか
・コロナで求人は増えた? 減った? 転職事情のリアルを人材コンサルタントが解説!
・ソニー、三菱ケミカル、川崎重工……年功廃止の動きは今後も続くのか
・働き方より「働きがい」の時代へ? トヨタ系大手部品メーカーが挑戦する「働きがい改革」に注目
・日本通運が旅行業から撤退! 先が読めない時代に、失業や不本意な異動のリスクとどう向き合うか
・日本でも「通年採用」「ジョブ型雇用」が一気に進む!? ニューノーマル時代のキャリアと働き方