「働きがい改革」とは?

「働きがい」とは何だろうか。それは、やりがいのある仕事、快適な職場環境、納得できる報酬、同僚との信頼関係、チームワーク、技術や商品開発への挑戦、顧客満足の達成、目標到達による好業績、そして仕事を通した社会への貢献など、さまざまな要素がブレンドされて生まれる「仕事が生む達成感」である。

そして働きがいを得るためには、自ら主体性を発揮する必要もある。会社や他者から与えられるものではないことに注意が必要だ。

具体的には、日々の継続的な努力、コミュニケーションを通した相互理解や協力、経験や実績に裏打ちされた確かな業務能力と判断力、志や社会への貢献意欲など、人間が持ち合わせるさまざまな能力と献身的な努力がもたらす「仕事へのご褒美」でないだろうか。

このように「働きがい」とは社員一人ひとりが個々に感じる個人的な感慨であるがゆえに、会社が社員の働きがいに踏み込んで、その改善に取り組むことは容易なことではない。

その難易度が高い取り組みに、組織をあげて挑戦している例がある。世の中は今、コロナ禍の影響で業績不振に悩む企業が多いが、その会社は2020年10~12月期の売上収益と営業利益の両方が四半期として過去最高を更新し、2020年の通期業績予想を上方修正した。

これは、高い技術力で新しい市場を創出した成長著しい中小企業の話ではない。個性のあるカリスマ経営者が創業したベンチャー企業の話でもない。連結売上が4兆円に迫り、社員12万人を抱える老舗の大手企業の挑戦の話である。
 

「働き方改革」ではなく「働きがい改革」に挑戦する

その会社は愛知県刈谷市に本社を置き、自動車部品で国内売上2位のメーカーである。トヨタ自動車をはじめ、国内外の主要な自動車メーカーを顧客に持つアイシン精機(2021年4月に主力子会社と経営統合し、社名は「アイシン」となる)という会社だ。

全国規模の人気企業ランキングの上位で名前を見ることはないが、知る人ぞ知る名門企業である。ちなみに、愛知県を代表する国立大学の名古屋大学で学ぶ就活生に限定した人気企業ランキングでは、同社は上位にランクインしており、地元で愛される企業として紹介されている(出典:大学通信/主要国立大「就職先企業・団体」ランキング2020)。
「アイシン精機」の公式ホームページ

「アイシン精機」の公式ホームページ

同社の主力製品は、自動車のトランスミッション(変速機)やエンジン部品だ。グループ傘下の子会社は約220社あり、世界トップクラスの自動車部品メガサプライヤ―として知られている。主力製品であるオートマチックトランスミッションは世界シェア1位、カーナビゲーションシステムは世界シェア2位を誇り、先駆的な技術開発力を持つことで定評のある会社である。

これほどの大手企業が、なぜ今、社員の「働きがい改革」に真剣に取り組んでいるのだろうか。

まず注目したいのは、同社が取り組むのは会社の諸制度や職場環境を社員が働きやすくなるように改善する「働き方改革」に取り組みを限定していないことである。「働き方」を改革するだけではなくて、「働くこと」の本質的な意味を追求し、「働きがいを改革する」という特別な言葉を使って取り組みの個性を際立たせているのだ。

同社の伊勢清貴社長自らが先頭に立ち、「働きがい改革委員長」として改革を推し進めているだけに取り組みの本気度が違う。

ちなみに働きがいのある会社のランキングもある。どのような指標で働きがいを測っているのが気になったため、ここで紹介しておきたい。

就職・転職のための情報プラットフォームを提供する「OpenWork(vorkers.com)」は2014年以来、社員と元社員による職場環境に関する評価を集計した「働きがいのある会社ランキング」を毎年発表している。同調査は、社員(1年以上在籍)と元社員(退職して1年以内)による口コミの投稿を以下の8つの項目への評価点と自由記述で構成する会社評価レポートを集計している。

8つの評価項目とは「待遇面の満足度」「社員の士気」「風通しの良さ」「社員の相互尊重」「20代成長環境」「人材の長期育成」「法令順守意識」「人事評価の適正感」などである。諸制度や職場環境、待遇などを総合的に網羅しているだけでなく、若手社員の働きやすさや成長機会、コンプライアンスやガバナンスなどにも配慮している。

・参考情報:働きがいのある企業ランキング(OpenWork)

各種ハラスメントが途切れることなく日々ニュースになる時代にあって、ここで指標として取り上げられている各項目はハードルの高い要求のようであるが、全ての会社で真剣に自社の状況を検証してほしい内容である。

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