実際の中学受験で番狂わせは至難の業?
マンガの中の夢のような逆転合格劇は、残念ながらフィクション
私が以前勤めていた大手塾でもこんなことがありました。3段階あるクラス編成で一番下のクラスに属していたA君が暁星中に合格したのです。最下位クラスの担当は「優秀な生徒をクラスアップさせずに自分のクラスで抱え込んだのだろう」と非難されましたが、実際には担当が徹底した個人指導により見事合格を勝ち取らせたのです。
だからといって偏差値で20も上の学校に合格させるのは、至難の業でしょう。しかしそうした稀有な例は存在することであり、決して絵空事として切り捨ててよいものではありません。
ではどうすればそのような逆転合格は可能なのでしょうか。そこには二つの隠された“からくり”が存在するのです。それを見抜き作戦をきっちり練れば、逆転合格は不可能なことではありません。
作戦1.模試の偏差値のからくりを見抜く
ひとつ目は「模試」に関するからくりです。皆さんは「偏差値」というものが子どもの学力を知る絶対的な指標だと思っていませんか。それはある意味正しいのですが、一方で模試には弱点もあります。つまり出題の範囲や出題される内容により、偏差値が大きく変動するということです。例えば、自分で書いたりするほど小説好きな生徒がいたとしましょう。小説文の読み取りは得意ですが、論説文になるとからきしダメです。模試の構成は小説文と論説文が1題ずつ出題されるため、この生徒は半分くらいしか得点できないことになり、偏差値もだいたい真ん中の50くらいになります。
実際にはあり得ませんが、こうした生徒が、小説文のみの模試を受けたらどうでしょう。偏差値は一気に上がることになります。つまり模試というのは出題の範囲により大きく変動する可能性があり、その生徒の実力を正確に表しているとは言い切れない部分があるのです。
子どもの特性に合った出題傾向の学校を的確に選べば、逆転合格も不可能ではない
A君は算数が不得意で、国語も論説文がからきしダメでした。そのため模試の成績はいつも総合評価で偏差値50以下、最下位クラスに甘んじていたのです。クラス担当はそのことを見抜き、A君の特性を最大限生かせるであろう暁星中を受験させ、見事合格へと導いたのです。模試の成績だけに捉われている人には決して取れない作戦でしょう。
作戦2.思い切って1月の塾の授業を捨てる
もう一つのからくりは、塾の1月の授業内容にあります。1月には全ての単元を終えているため、塾の授業はどうしても「総合演習」とか「実践演習」というかたちになります。「実践演習」といえば聞こえはいいですが、要は「最大公約数的」な内容で、個々の志望校の入試傾向に即したものではありません。しかし塾に通っている生徒や保護者は、当然のように1月末まで塾に通いますよね。もし本気で逆転合格を狙うのであれば、1月は馬鹿正直に塾などに通わず、塾は冬期講習できっぱりやめて一カ月間みっちりと「志望校対策」を行うべきでしょう。最大公約数的授業を受けていては、逆転合格など望むべくもありません。最大公約数的授業はあくまでも「みんなになんとなくあてはまる授業」なのです。ピンポイントであなたのお子さんの弱点を補強してくれるものでは決してありません。
中には1月にきめ細かな指導をしてくれるところもあります。例えば私の塾では1月の授業は全て解体し、朝から教室を開いて生徒個人個人の志望校に合わせた過去問演習をさせたり、弱点補強をしています。しかし大手の受験塾などではなかなか難しいことでしょう。ですから「1月の最後まで塾に通わなければ」「1月の塾の授業に全て出席しなければ」という固定観念を捨て去る、逆転合格を達成するにはそのくらい思い切った作戦が必要なのです。
マンガの中の夢のような逆転合格劇は、残念ながらフィクションです。しかし作戦を練りさえすればそれを現実のものとできます。あきらめず、ぜひ最後まであがいてみてください。
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