コロナ禍で一気に脚光を浴びるようになったテレワーク。ICT(情報通信技術)を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方のことを指しますが、総務省の公式サイトによると、「テレワーク」には「雇用型」と「自営型」があり、「雇用型」はさらに「在宅勤務」「モバイルワーク」「施設利用型勤務」の主に3形態があると分類されています。

ここでは、特にこれからテレワークを導入・推進(適用範囲を拡大)していきたいと考えている中堅中小企業向けに、「在宅勤務」を推進する際に最低限、必要となるITツールや環境について、簡潔に解説していきたいと思います。

なお、テレワークの前提となる対象業務の設定(テレワーク可能な業務の洗い出しや整理)は、部署ごとに実施するほうが効率的ですが、いざ導入する段階においては、把握しておくべきこと、やるべきことに部署・部門による違いはほとんどありません。

既に導入済みの企業も少なくないかと思いますが、今からでも利用すべき便利なツールや、見落としがちなセキュリティ対策もありますので、ぜひ改めて確認してみてください。

テレワーク導入時のポイントは?

テレワーク導入時のポイントは?
 

テレワークで押さえておきたい3つのポイント

テレワークの一般的な導入ステップは、実は総務省からも「テレワーク導入手順書」として公開されています。

情報システム担当者のためのテレワーク導入手順書(総務省)

上記PDF資料は70ページありますので、これを読みこなすのはちょっとハードルが高いかもしれませんが、この導入手順書も踏まえて簡単に言ってしまうと、テレワークを導入・推進する際に最低限、押さえておきたいポイントは、以下の3つです。

1.業務環境の確保
2.各種ツール類の導入・利用
・オンラインミーティングサービスの利用
・コミュニケーション・情報共有ツールの導入
・オンラインストレージの活用
・勤怠管理ツールの検討
3.セキュリティ対策の実施
 

ポイント1. 業務環境の確保

まずは業務環境の確保、環境整備です。必要になるのは、パソコンとインターネット回線。社内外でノートパソコンを利用している場合は、それを自宅でも利用してもらいます(セキュリティ対策については後述)。

リース・レンタル契約でデスクトップパソコンを利用している場合は、これを機に、ノートパソコンへの切り替えを検討してみてもいいと思います。なお、その際、専門性の高いソフトウエアの利用が必要な場合は、ライセンス等の追加購入について予め検討が必要になります。

また、営業など、外回りや出張が多い部署であればノートパソコン1台で十分対応できると思いますが、制作部門など細かい作業を要する部署には、ノートパソコンに加えて接続用のモニターも用意すると、作業効率が格段に上がります。
細かい作業が多い場合にはモニターがあると便利

細かい作業が多い場合にはモニターがあると便利
 

社内に購入済みのデスクトップパソコンしかない場合は、必要な台数分、ノートパソコンの追加リース・レンタルを検討します。このケースでも、ソフトウエアのライセンスについては確認しておきましょう。

ちなみに、パソコンはよほどスペックの高い高額なものでない限り消耗品になるため、買い替え時の手間まで考えると、一般的に購入よりもリース・レンタルのほうが経済的・効率的。タイミングを見つつ、デスクトップからリース契約のノートパソコン+モニターへの切り替えを検討するのも手です。

インターネット回線も、自宅や社宅等でインターネット回線が使える場合はそのまま利用することが多いのですが、スマートフォンの世帯保有率がパソコンを上回っている今、自宅にインターネット回線がない家庭も珍しくありません。

その場合は、モバイルWi-Fiやテザリング可能なスマートフォンを貸与することになります。テレワーク導入時にメール以外の連絡手段として活用できるだけでなく、セキュリティやプライバシー保護の面でも、個人のスマートフォンを使うより安全なため、実際に多いのはスマートフォン貸与のほうです。

気になるコスト面も、必要な社員を絞って個別に配付するより、全員に一括で貸与することによって、社員間の通話料金をゼロにする契約も選択できますし、端末のリース・レンタルなどを活用するなどして負担を抑えることも可能です。

なお、IT部門を擁する大企業であれば、遠隔でデスクトップを操作する「リモートデスクトップ」や、テレワークで働く社員に割り当てた仮想デスクトップを操作する「仮想デスクトップ」を検討する余地もあると思います。中堅中小企業ではあまり現実的ではないと思いますので、ここでの説明は省きます。

パソコンとインターネット回線の準備が整ったら、本格的なテレワークに入る前にソフトウエアや業務上のデータ等が問題なく社外から使えるか、業務が可能かを、ひと通りチェックします。もしできない業務があれば、例えば週に1日は出社日を設ける等、代替案も検討しましょう。
 

ポイント2. 各種ツール類の導入・利用

・オンラインミーティングサービスの利用

Web会議を実施するためのツール・サービスは、テレワーク必須のアイテムです。よく使われているのは下記の3つ。

Zoomhttps://zoom.us/
Microsoft Teamshttps://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/microsoft-teams/group-chat-software
Google Meet(旧称 Hangouts Meet)https://apps.google.com/intl/ja/meet/

いずれも充実した無料プランがあり、最大使用人数や利用時間によっては有料プランへのアップグレードを検討します。

どのサービスを使うかは、どれも簡単に始められますので、それぞれ試してみて使い勝手を確認していただくのが一番です。例えばGmailを使っている場合はGoogle Meet、Officeを使っている場合はMicrosoft Teamsと、親和性を考えて選択してもいいでしょう。

ほか、オンラインミーティング時にはWebカメラとヘッドセット(マイク+イヤホン)の用意が必要になります。音声だけでもオンラインミーティングに参加できますが、コミュニケーション上、それぞれの顔が見えるよう、Webカメラの利用をお勧めします。

・コミュニケーション・情報共有ツールの導入

テレワークでは、ちょっと声をかければ話ができるオフィス環境とは異なり、リアルタイムでのコミュニケーションが取りにくくなります。メールだと埋もれてしまったり、リアルタイムでのレスポンスが期待できなかったり、小さなことは聞きにくい雰囲気があったりしますので、チャット(文字入力での会話)ツールやタスク管理ツールといった情報共有ツールを活用して、ミスコミュニケーションが起こらないように工夫しましょう。

チャットツールでは、個人間でのやり取りや、部署・チーム内などで複数人でのやり取りができるグループを作成して利用します。業務上の質問、連絡事項から雑談レベルまで、使い方に決まりや制限はありませんが、いまや社内の連絡はすべてチャット、メールは社外とのやり取りのみ、としている企業も増えています。

よく使われているチャットツールは、こちらも3つほど。

Slackhttps://slack.com/intl/ja-jp/
チャットワーク(Chatwork)https://go.chatwork.com/ja/
LINE WORKShttps://line.worksmobile.com/jp/

データとして会話内容が残りますので、後から見直せるところも便利。

個人やチームの業務状況を把握するためのタスク管理ツールとしては、

Backloghttps://backlog.com/ja/
Trellohttps://trello.com/
jootohttps://www.jooto.com/

等があり、全体スケジュールや個人の進捗を共有するために利用します。特にプロジェクト単位で動いている業務のタスク・進捗確認に威力を発揮しますが、同時に個人の備忘録的にも使えます。

チャットツール・タスク管理ツールも、基本的には同じような機能が実装されていますので、こちらも無料版でより目的や自社の業務フローに適うサービスを見つけていきましょう。

・オンラインストレージの活用

テレワークが普及しはじめる以前から、業務上のデータを社内サーバではなく、オンラインストレージに保存し、どこからでもアクセスできる環境へと移行が進んでいます。その背景には、コスト面での優位性、運用管理のしやすさ、利便性などの理由がありますが、テレワークの導入にあたっては、業務効率を維持するために、いつでもどこからでもデータにアクセスできる環境がマスト。

オンラインストレージで有名なのは下記の3つあたりでしょうか。

Google ドライブhttps://www.google.co.jp/drive/
Dropboxhttps://www.dropbox.com/ja/
OneDrivehttps://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/onedrive/online-cloud-storage

いずれもセキュリティは堅牢。Microsoft 365(旧称Office 365)を使っていれば、親和性からOneDriveが一押しですが、特にそうした前提条件がない場合は、各社が力を入れているビジネスプランの容量やサービスを比較検討して、自社に合ったものを選びましょう。

・勤怠管理ツール

テレワークを導入する場合は、就業規則にテレワーク勤務に関する規定を盛り込む必要があります。直接的に就業規定に規定を加えなくとも、「テレワーク勤務規程」等、個別規程を定めれば問題ありませんが、規定追加と同時に、勤怠管理方法・ツールも、テレワーク用の就業規則に合ったものを考えておかなければなりません。

とはいえ、そもそも今は、タイムカード等よりも勤怠管理ソフトやクラウド型勤怠管理システムを使うところが増えています。勤怠管理ソフトを導入済みで、新規でリース・レンタルするノートパソコンを利用する場合などは、ライセンスを確認しておきましょう。

新たに勤怠管理ツールを導入する場合は、なかなか途中で変更しにくいこともあり、休暇や勤務形態の管理が容易、給与明細が出せる、健康管理ツールとして使えるなど、自社に必要な機能を過不足なく満たしているか、長期的なコスト試算、データ集計のしやすさといった使い勝手を考慮のうえ、ソフトウエア・サービスを比較検討します。

ジョブカンhttps://jobcan.ne.jp/
タッチオンタイムhttps://www.kintaisystem.com/
マネーフォワード クラウド勤怠https://biz.moneyforward.com/attendance

このあたりが、企業規模(使用人数)に関係なく使用でき、無料トライアルもできるため、取り入れやすいかと思います。なお、従業員数が50名以下の企業であれば、エクセル等でフォーマットを用意して運用を進め、より細かい管理が必要になったら勤怠管理ツールの導入を検討する形で十分です。

テレワークの課題のひとつとも言われる人事評価も、勤怠管理ツールでカバーできる部分があります。結果や成果をいかに数字で表すかといったことは、導入の次のステップになりますが、例えば、同じような作業でも、誰が何にどれだけの時間を費やしているのか、そのスピードや作業量を数字で客観的に俯瞰できるようになったメリットは大きいと言う企業もあります。

なお、就業ルール変更や勤怠管理ツール導入は全社員に関わるため、新システムやツールを導入する際は、全社的に教育や研修を実施するのが望ましいでしょう。
 

ポイント3. セキュリティ対策の実施

テレワーク導入時に忘れられがちなのが、セキュリティ対策。自宅にノートパソコンを持ち帰って仕事をする場合、情報漏洩にはより厳重な注意が求められます。

ログイン時にパスワードを設定することはもちろん、一定時間操作がなかった場合は自動ログオフさせたり、USB等を使ってのデータ移動を禁止したりするなど、パソコン操作上の設定とルール設定、両面からの対策が必要です。

また、ある程度の企業規模であれば、少し専門的な知識が必要になりますが、SSO(シングルサインオン)といったシステムごとのパスワード入力や管理の手間を省きながらセキュリティを強化できる仕組みを導入したり、VPN(バーチャルプライベートネットワーク)を使い、ネットワーク回線をより安全に利用する方法を検討したりしてもいいでしょう。
 

助成金の活用も視野に

最後に、テレワークは政府が推進する「働き方改革」のひとつに位置付けられており、国や自治体による助成金交付・相談受付・コンサルティング支援など、テレワーク導入に関する助成・補助は探せば結構あります。

厚生労働省による助成金は交付申請期限が終了していますが、随時公的サポートをまとめて紹介しているサイトもあります。

テレワークに関する助成、補助について(一般社団法人 日本テレワーク協会)

テレワークは難しいものではありませんが、軌道に乗るまでには課題も出てくるでしょう。確実に浸透・成功させるためにも、こうした制度を利用するのもひとつの方法です。必要に応じて活用していきましょう。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。