35歳を過ぎると、妊娠率は低下し始める
女性の年齢が上がれば妊娠率が下がることは多くの方がご存じですが、「厳密なリミット」については把握されていますか?
女性の年齢が上がれば妊娠率が下がることは、多くの人が「なんとなく」は認識していらっしゃると思われますが、まだまだ「厳密なリミット」については正確に把握されていないケースがあります。また、女性だけではなく、男性側の年齢も妊娠率に影響があり、やはり男性も年齢が上がれば同一年齢の女性で比較した場合の妊娠率は低下します。ただ、女性に比べて男性の方が「厳密なリミット」がなく、男性側の年齢が50歳を過ぎていても自然妊娠が成立する場合はあります。
女性の場合は、自然妊娠でも不妊治療を行った場合でも、妊娠率の低下のタイミングはあまり変わらず、35歳を過ぎると下がり始め、37歳を過ぎると低下の割合が加速し、40歳を過ぎると急激に下がり、46~47歳で「ゼロ」に近づきます。ただし、「何歳まで妊娠が可能か」については個人差が大きく、当院で経験した自然妊娠の最高年齢は47歳です。非常にレアケースではありますが、「何歳だから妊娠が不可能」と断定することは困難といえるでしょう。
あくまで「統計学的」に見ると、たとえ不妊治療を行っても妊娠率も生産率(児が生きて産まれる率)も「ほぼゼロ」になるタイミングはあります。統計学的なグラフを見ると、だいたい45~46歳で生産率がゼロに近づきますので、いくら生殖補助医療(不妊治療)の技術が向上しても、加齢に伴う妊娠の「リミット」はそれほど引き上げることはできないのです。もちろん、卵子提供を視野に入れれば、「リミット」はもっと引き上げられるかもしれません。ここでお話ししているのは、あくまで「自分の卵子で」妊娠する場合の確率です。
不妊治療費の助成を受けられるのは42歳まで
現在、不妊治療の治療費に対して助成制度がありますが、助成を受けられる年齢が42歳と定められています。これは、各統計データから割り出した、「この年齢までなら不妊治療を行えば出産できる可能性がまだある」と考えられる年齢です。おそらくは、不妊治療による妊娠率が10%程度あること、不妊治療のニーズが40代の方が高くなることを考慮して42歳という年齢に定めてあるのだと推察されます。この年齢は、43歳以上の人が不妊治療をする意味がないということを示すものではありません。あくまで、「公的なお金を使って妊娠をサポートすることに意味があると『統計的に』判断した年齢」です。
「リミット」を把握したうえでライフプランの構築を
妊娠には年齢的なリミットがあることを把握したうえで、自分らしいライフプランを考えておくことが大事です
そもそも、なぜ妊娠に「タイムリミット」が必要なのか考えてみたことがあるでしょうか? もしかしたら、なぜ「命のタイムリミット」があるのかを考えることにつながるかもしれません。ご自身にとっての「妊娠のタイムリミット」にどのような意味があるのか、一度考えてみてはいかがでしょうか。
【参考情報】
- 妊娠適齢年令(日本産婦人科医会)
- ARTデータブック(2018年)日本産科婦人科学会)
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