体が冷える…つらい冷え性は漢方薬で治せる?
冷え性(冷え症)を訴えられる方は女性を中心に非常に多い
本記事では冷え性に有効な漢方薬と、漢方以外で心がけたい生活上の注意点を中心に解説していきます。
冷え性改善に効果的な主な漢方薬一覧
漢方では、冷え以外の症状や体質を見ながら、その人にあった漢方薬が処方されます。ここでは冷え症状に特によく用いられる「温経湯」「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」「人参湯」「八味地黄丸」の特徴、効果、注意点について解説します。■温経湯(うんけいとう)
温経湯は血の巡りを改善する当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)、牡丹皮(ぼたんぴ)、身体を温める作用がある呉茱萸(ごしゅゆ)、桂皮(けいひ)、生姜(しょうきょう)などから構成される漢方薬です。
冷えによって悪化する生理痛や生理不順にお困りの方にも適した漢方薬です。他にも身体に潤いを付けたり、消化器のはたらきを向上させて体力を底上げする作用もあります。
個人的にも好きな漢方薬なのですが欠点もあります。温経湯の核ともいえる呉茱萸には独特の苦みと辛みがあるのです。この為、不味くて服用しにくいと訴えられる方もいらっしゃいます。味にデリケートな方は少量から服用し始めても良いかもしれません。
バランスの良い漢方薬ですが、冷え以外に多方面に配慮されている処方なのでシャープな効果はやや期待しにくい点もデメリットかもしれません。なお、読み方は「おんけいとう」ではなく「うんけいとう」です。
■当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は発音しにくい漢方の筆頭です。その名前の通り、血行を良くする当帰や身体を温める呉茱萸や生姜を中心とした漢方薬です。前出の温経湯と生薬構成が似ている点もありますが、当帰四逆加呉茱萸生姜湯はより冷え対策に特化した漢方薬です。
手足に顕著な冷えがあり、冬になるとしもやけが出来てしまうような方に適した漢方薬です。冷えによって悪化する生理痛にも有効です。木通(もくつう)という水分代謝を改善する生薬も含んでいるので、少々のむくみにも対応できます。
なお、当帰四逆加呉茱萸生姜湯も上記の温経湯と同様に呉茱萸を含んでいるので服用しにくい漢方薬でもあります。その一方で体質に合っているためか、すんなりと問題なく服用できる方もいらっしゃいます。味覚は個人差も大きいのであまり先入観を持たずに服用するべきかもしれません。
■人参湯(にんじんとう)
人参湯は滋養強壮作用のある薬用人参(朝鮮人参)に身体を温める乾姜(かんきょう)、そこに白朮(びゃくじゅつ)と甘草(かんぞう)を加えた計4つの生薬から構成されるシンプルな漢方薬です。
人参湯は身体の冷えと一緒に食欲低下、胃のつかえ感、胃もたれ、腹痛、軟便といった消化器系のトラブルに有効です。消化器が弱いので食べても太れず、やせ型で冷え性の方に適した漢方薬です。甘みのある甘草を含んでいるので服用がしやすい漢方薬でもあります。
■八味地黄丸(はちみじおうがん)
八味地黄丸は腎虚(じんきょ)と呼ばれる生命エネルギーが不足した状態を改善する代表的な漢方薬です。主に初老以降で体力低下、腰の痛みや重だるさ、頻尿や夜間尿、抜け毛などの症状にくわえて冷えがある場合に用います。
八味地黄丸に含まれる附子(ぶし)や桂皮は身体を温めつつ、生命エネルギーを鼓舞します。八味地黄丸は今風の表現を借りれば「アンチエイジング薬」と言えるでしょう。上記の症状が全て揃わなくても、冷えにくわえて年齢による衰えを感じる場面に幅広く対応できます。
やや脱線しますが、歳による衰えがある一方で冷えはそれほど感じない場合は六味地黄丸(ろくみじおうがん)という漢方薬が適しています。六味地黄丸(ろくみじおうがん)は八味地黄丸から附子と桂皮を抜いたものです。
「女性向け」「初老向け」漢方薬は、男性や若い世代も服用可能?
ここまで4種類の漢方薬を紹介してきました。前半の温経湯と当帰四逆加呉茱萸生姜湯はしばしば女性に用いられる漢方薬です。女性は月経があり、男性と比べると血の力が弱くなりがちなためです。両漢方薬は身体を温めつつ、血を補う作用も持っているので女性向けといえます。一方で「男性禁止」というわけではありません。男性でも冷えにくわえて血の不足による症状、例えば疲労感、立ちくらみ、動悸や息切れ、目のクマ、顔色の青白さなどがあれば使用可能です。
最後に登場した八味地黄丸は「主に初老以降」と解説しましたが、働き盛りの方やより若い方が服用しても大丈夫です。当薬局では30~40代のお子様をご希望される方に八味地黄丸をお勧めすることがあります。これは八味地黄丸が持つ生命エネルギーを底上げする作用の中には生殖能力の向上も含まれるからです。
冷えの改善には生活習慣の見直しも重要
冷え性対策は漢方薬が得意とする分野です。その一方で「漢方薬だけを飲んでいれば大丈夫」というわけではありません。冷えは生活習慣の影響を受けやすい症状でもあるからです。まずは厚めの靴下、タイツ、腹巻、床が冷えるならスリッパなどでしっかりと防寒することが大切です。入浴時はシャワーを浴びるだけだと汚れは落ちますが、身体を温めるには力不足です。時間をかけて湯船までつかりましょう。
食べ物については冷えたお刺身、サラダ、清涼飲料などは避けましょう。生のままではなく煮たり焼いたりする方が好ましいです。それが難しい場合は温かいみそ汁やスープを付けるのが良いでしょう。
上記を意識しつつ漢方薬を服用して頂ければ、より温かく過ごすことができるでしょう。冷え性(冷え症)でお困りの方は是非、漢方薬の服用も検討して頂ければ幸いです。