今回は医療保険を準備するときの注意点についてファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんとマネーライターの清水京武さんが解説します。(今回の収録は2020年7月に行われました)
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高額になった場合は、高額療養制度で一定額以上は還付される
深野康彦さん:皆さんこんにちは。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦です。清水京武さん:こんにちは。マネーライターの清水です。今回は医療保障について取り上げたいと思います。 最近、死亡保障よりも医療保障を過剰に厚くしている方が目立つような気もするのですが……。それで貯蓄ができないという家計も珍しくないような気がしますが、先生はどうお感じですか?
深野さん:おっしゃる通り、入院したらこの人はどれだけたくさんのお金をもらえるのか?と思うようなケースもたまにありますよね。医療保険は確かに必要な部分はあるかもしれませんが、まず医療費はいわれるほどかからないということをもう一度認識しなくてはいけません。 確かにがんになってかかるというケースもありますが。我々は通常健康保険に入っていますよね、国保だろうが、社保だろうが。保険が適用される治療であれば、3割負担で済むわけです。
もちろん高齢者の場合は2割、後期高齢者は1割とか、いろいろあります。 それ以外に高額になった場合は、高額療養費制度ということで、一定額以上は還付されます。あるいは大企業にお勤めの方で企業の組合健保の場合、私が見て一番安かったのは、月の医療費が2万円だったかな。大病してもです。健康保険やそれから派生する高額療養費制度や、大企業であれば組合健保でかなり守られているということを、まず認識していただきたいです。意外と知らない人も多いじゃないですか。
清水さん:それも踏まえて、そういうことがある上で医療保険や医療保障はどう考えたらいいのかという基本的なところは、どうなるのでしょうか?
深野さん:実は医療費には、かかる医療費とかける医療費の2種類があるんです。かかる医療費は先ほど言ったように、窓口で我々が払う3割負担のお金等です。その部分は誰もが平等です。かける医療費というのは、本人がどういう診療行為を求めるか、ということです。 例えば私がよく例に挙げるのは、胃がんになったケースです。胃がんは最近早期発見で、ほとんど治るじゃないですか。仮に胃がんになったとすると、私は例えばかかりつけ医から紹介された病院で執刀してもらっても構いません。
仕事柄、場合によっては個室に入らなくてはいけないこともあるかもしれませんが、それがなければ私は別に一般病棟でよいと思っています。 そうすると基本的には保険内診療で済むので、高額療養費+αくらいが上限です。これに対して、例えば胃がんでも早期発見でもやはりがんは怖いと。世の中には胃がんの名医がいて、そういう人に執刀してほしいという場合です。名医が近くにいるとは限りませんよね。
その人がいる病院にまず行かなくてはいけません。そして入院をした場合も、私は個室がよいとか、食べ物は病院食でもよいし、グレードが高いものもあります。そういう保険外の名医を求めるようなものをかける医療費ということです。このかける医療費を皆さんがどう思うか、考えていただきたいです。 それを求めれば、ある程度の医療保険に入らなくてはとてもじゃないけれど回りませんよね。
でもそういうかける医療費がないのであれば、先ほど言ったように高額療養費+α程度で大丈夫なんです。だからまず家族が大病した場合の医療行為をどのように考えているか、という話をしてもらいたいです。 うちは普通のもので大丈夫というなら、医療保険は最低限でよいかもしれません。金融資産で賄えるのであれば医療保険はいらない場合もあります。うちは何かあったら怖いからと思うなら、医療保険に入らなくてはいけないでしょう。そういうかたちでよいと思います。
清水さん:もちろん高額な医療費が発生するケースも0ではないですが、多くは保険内診療で医療費がかかっても一定ラインで守られているということをまず理解した上で、自分はどういう医療行為を受けたいのか、家族はどういう医療行為を望んでいるかを考えてみると。そうすると保険の必要な額や規模が見えてくるということですね。
深野さん:もう一つ考えなくてはいけないのは、自分が健康に対してどう思っているかです。暴飲暴食であまり健康に留意されない人は、やはり保険のお世話になる可能性が高いじゃないですか。それなら入っておかなくてはいけないかもしれません。 逆に自分は健康に留意していると。一般的には年を重ねるほど、健康には気を遣いますよね。そういう人は最低限のものでも別にいいわけです。そのあたりを考えてもらいたいです。年を重ねて健康でいようと思って運動しようとか、体に良い物を食べようと考える人は、そちらにお金をかけて高い医療保険にも入っているというのは、お金の使い方が矛盾しますよね。 どちらにお金を使えばいいのかは、一人一人の考え方ですから、良いほうに使ってもらいたいです。ただし先ほど言ったように、健康の留意に使うのであれば、高額な医療保険は要らないということです。
清水さん:先生から見て必要最小限ということだと、入院の日額給付が目安になると思いますが、1日5000円が目安になりますか?
深野さん:その程度だと思います。あるいはもっと安くするなら、医療共済でもいいと思います。先ほど言ったように保険というものは、自分が保有する金融資産でカバーできなくて経済的損失があった場合に、カバーするものです。 例えば社会人なりたての人は自宅から通っているなら良いですが、数年間は金融資産もないという場合は、やはり医療保険に入っておいたほうがいいと思います。特に一人暮らしをされている方は。なぜかというと、我々が貯蓄ができるまで病気は待ってくれないですよね。 保険の良いところは、即効性があることです。医療保険に加入して、例えば今日から保障が得られたら、明日不運にも交通事故に遭ってしまっても、条件を満たしていれば給付金は出ますよね。即効性は保険の良さなんです。医療保険を考える時は、金融資産との見合いを含めてどうするかしっかりと考えていただきたいです。 あとは金融資産がある程度できて、それで賄うと割り切るのならやめてしまってもいいです。もし高額なものが必要であれば、かける医療費をどう考えるかということです。
清水さん:とかくかければいいと考えがちですが、いろいろなことを総合的に考えるということですね。考えてみれば、国民健康保険や社会保険は国の医療保険に入っているようなものですよね。それに1本入っていると思えば、また見方も変わってくると思います。ただかけるだけではなくて、今のようなポイントを押さえながらもう一度医療保障を考えてほしいと思います。
深野さん:もう一つ言いたいのは、年を取るほど病気になるとよく言いますよね。確かにその通りだろうけれど、逆に言うと年を取っている人ほどすごく気を遣っているでしょう? そして一般的には年を重ねている人はそれなりに金融資産を持っているじゃないですか。それで払えばいいのですよ。そのあたりも考えてもらいたいと思います。
清水さん:最後に深野先生の本音が出たところで……(笑)。今回もありがとうございました。
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