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定年退職後の不安のひとつに健康への懸念があるかと思います。若い時に比べ医療費はかさむでしょうし、介護費用も必要になるかもしれません。今回は定年退職後の医療・介護費用の目安について考えてみたいと思います。
医療費の自己負担割合は1~3割
厚生労働省の統計によると直近の国民全体の医療費は42兆円を超えています。中でも65歳以上の方の1人当たり医療費は約74万円であり、65歳未満の方の約18万円と比べると非常に高額な医療費がかかることが分かります。ただしこの金額全てを自己負担するわけではなく、通常であれば何らかの健康保険に加入しているため、6歳未満(義務教育就学前)は2割、6歳以上70歳未満であれば3割、70歳~74歳は2割(現役並み所得者は3割)、75歳以上は1割(現役並み所得者は3割)の自己負担で済んでいます。 ●資料:厚生労働省『令和2(2020)年度 国民医療費の概況』
医療費の自己負担には上限があります
自己負担が1~3割で済むとはいえ、手術や入院をした場合などは負担額が大きくなります。そのため、ひと月に一定額以上の自己負担が生じた場合には、上限額を超えた分が戻ってくる制度があり「高額療養費制度」と呼ばれています。上限額は、年齢と所得によって決められています。例として70歳未満で年収約370万~約770万円の所得区分(ウ)にあたる方の負担上限額の計算式および、その方が実際に医療費が100万円かかった場合の自己負担額を示してみます。
●資料:『高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)』
この方の場合、医療費自体は100万円かかっていますが、70歳未満ですので3割である30万円が本来の窓口での自己負担額です。しかしながら「高額療養費制度」による支給が受けられるため、最終的な自己負担額は8万7430円で済むことになります。
介護保険の自己負担額は要介護度別で異なります
介護保険で在宅サービスを利用する場合、自己負担は原則1割です(一定以上の所得がある場合は2割もしくは3割)。また、介護の状態に応じて1カ月あたりの支給限度額が決められており、そのうちの1~3割を自己負担するわけです。つまりは、介護の状態により1カ月あたりの自己負担額は変わることになります。なお支給限度額を超えて受けたサービスについては、全額自己負担であることも知っておきましょう。●資料:『厚生労働省 介護保険の解説 サービスにかかる利用料』
施設サービスを利用する場合はさらに負担が増えます
施設サービスを利用する場合は、原則1割の自己負担に加えて居住費と食費の負担が必要となります。介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の場合で考えると、個室なのか多床室(相部屋)か、また本人の所得段階(1~4段階)によっても負担額が変わり、低所得である1~3段階の方には負担額が軽減される制度があります(本人が低所得に該当しても配偶者が住民税課税者である場合や預貯金が一定額を超える場合には軽減制度はありません)。 ●資料:『厚生労働省 第143回社会保障審議会介護給付費分科会資料 参考資料2』厚生労働省の資料によると、介護老人福祉施設の1カ月の自己負担目安は、ユニット型個室利用だと約4万9000円(1段階)~約12万8000円(4段階)、多床室利用だと約2万4000円(1段階)~約9万2000円(4段階)となっています。
介護保険の自己負担額にも上限があります
介護保険にも医療費の「高額療養費制度」と同じように、月ごとの自己負担上限額を定めた「高額介護サービス費」制度があります。具体的には、在宅や施設で介護サービスを利用した際の自己負担1割(一定以上の所得がある場合は2割もしくは3割)の合計額の上限が対象者によって決められており、それを超えた自己負担額は払い戻される制度です。上限額は、所得の低い方や生活保護を受給している方は1万5000円、年収が1160万円を超える方の場合は14万100円と、年収等によって違います。 ●資料:『厚生労働省 高額介護サービス費の負担限度額が変わりますリーフレット』
医療保険と介護保険を合わせた自己負担額にも上限があります
医療費、介護費それぞれに負担の上限額があることは前述したとおりですが、両方を合算した年額が高額になった場合でも、一定額が返ってくる「高額介護合算療養費制度」と呼ばれる制度があります。この制度により、例えば年収約370万円~約770万円の場合、年の医療費+介護費の負担額は67万円で収まることが分かるかと思います。 ●資料:『内閣府 高額介護合算療養費制度概要』まとめ
いかがでしたでしょうか。定年退職後は現役時に比べ収入も少なくなる一方で、健康問題は大きな悩みになってきます。しかしながら上述したような制度を知り、医療費や介護費のおおよその目安が計算できれば、漠然とした不安は解消できるのではないでしょうか。また老後資金の不足が見込まれる場合は、現役時代から何らかの手を打たれることをおすすめいたします。【関連記事をチェック】
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