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『スイミー』の例文で学ぶ、読書感想文の基本の書き方

読書感想文の書き方の基本を、具体例を使って解説します。例文は『スイミー』の感想文で、同じ絵本でも、構成や感じ方、表現方法によって全く違う文章になることがわかります。タイトルや書き出しの工夫にもご注目ください。

高橋 真生

執筆者:高橋 真生

子育て・教育ガイド

『スイミー』の読書感想文を書こう

『スイミー』から学ぶ、読書感想文の書き方

『スイミー』から学ぶ、読書感想文の書き方

絵本『スイミー』を例に、読書感想文の書き方を考えてみましょう。「スイミー」は、国語の教科書にも収録され、親子それぞれの世代で知られる、黒い魚の物語。
『スイミー』で学ぶ読書感想文の書き方

『スイミー ちいさな かしこい さかなの はなし』

  とても美しい絵本ですが、授業では、赤い魚のきょうだいの中で、唯一真っ黒な魚のスイミーが、仲間や自分の居場所を見つける喜び、力を合わせることの大切さについて触れることが多いかもしれません。さて、どんな読書感想文ができあがるのでしょうか?
 
<目次>
  1. 序章
  2. 本論(なか)
  3. 結論(おわり)

※絵本と教科書とでは美しさが全く違いますので、ぜひ絵本をお読みください!
 

読書感想文には何を書くのか、基本をチェック

読書感想文は、本を読んで自分がどう思ったか、どう影響を受けたか、どう変わったかを書く作文です。はじめは「おもしろかった」「すごかった」しか言えなくても、さまざまな角度から読みを深めていくうちに、なぜ「おもしろい」と感じたかがわかってきます。

文章の新しい発見にドキドキしたり、自分でも意識していなかった感情や意見が引き出されて本人が驚いてしまったり……。本を読むことを通して自分が見えてくる、そんな体験をすることができますよ。

本の紹介文を書こうとするとあらすじばかりになってしまいがち。でも、本当に書きたいのは、あくまでも「自分のこと」なのです。
 

読書感想文の構成の全体像を理解しよう

読書感想文で書きやすいのは、「序論・本論・結論」(はじめ・なか・おわり)のシンプルな3部構成。なお、内容のかたまりを3つにするという意味で、3段落で書くわけではありません。

また、もちろん「起承転結」でもかまいませんが、「転」でつまずくことも多いかと思います。悩んでしまったときは、ぜひ「序論・本論・結論」をお試しください。
 

読書感想文には具体的に何を書くのか

■1.序論(はじめ)

序論、つまり書き出しは、書く内容も書き方もさまざまな工夫ができ、印象に残る部分です。内容の要約や、本との出会いを書くのが一般的です。
  • 内容の要約
「この本は、〇〇が〇〇をする話です」
「〇〇― これは、この本の主人公〇〇の言葉です」(心に残ったフレーズを引用する)
「〇〇が〇〇したのは、本当によいことだったのだろうか」(疑問形で印象を強くする)
  • 自分の話と本との出会い
「ぼくは〇〇が好きです(悩んでいます・がんばっています)。だから〇〇で見つけたこの〇〇という本を読んでみたいと思いました」(あくまで導入なので、簡潔にまとめる)
  • タイトルや表紙についての感想
「〇〇というのは何かなと気になりました」
「表紙の絵が〇〇で、読んでみたくなりました」
  • 登場人物への呼びかけ
「〇〇へ、〇〇ありがとう」

■2.本論(なか)

「書きたい部分のあらすじ(要約)」+「自分の体験や意見」で、自分の思いを表現する部分です。ノンフィクションなら、「始めて知ったことの要約」+「自分の体験や意見」などでもいいですね。戦争など、自分の体験との比較が難しい場合は、他の人の話を聞いてみるのもおすすめです。

■3.結論(おわり)

感想文をまとめる部分です。本を読んで自分がどう変わったか、これからの目標や希望などを書いてみましょう。

「自分もこうしたい」
「自分はこれからこう変わりたい」
「理想の社会は〇〇だから、自分はこうしたい」
 

スイミーの読書感想文を書く前の準備

『スイミー』で学ぶ読書感想文の書き方

読書感想文を書くことは、本のおもしろさを知るだけではなく、新しい自分を見つけることにもつながります

『スイミー』を読み、以下のようなメモを取っておきます。
  • 本を読もうと思った理由
  • 表紙やタイトルの印象
  • 好きな(嫌いな)登場人物とその理由
  • 登場人物に自分と似ている(違う)はあったか
  • 自分がスイミーだったらどうするか
  • 自分が赤い魚だったらどうするか
  • よく覚えている場面とその理由
  • すごいと思った(笑った・怒った・嫌だった)こと
  • よくわからなかったところ
※低学年や読書感想文を書くのが初めての場合は、親子でおしゃべりしながら取り組んでみてくださいね。
 

スイミーの読書感想文タイプA:「違い」に注目する

■ちがっていても、だいじょうぶ

 『スイミー』は、魚のスイミーが、なかまと力を合わせて、大きな魚をやっつけるお話です。
スイミーは、きょうだいの中で一人だけ真っ黒でした。わたしは、一人だけみんなとちがうスイミーが、自分のことをいやじゃなかったのかな、と思いました。どうどうとしていて、リーダーにもなったのだから、自しんがあって、黒いことはそんなに気にしていないのかもしれません。
 わたしは、友だちとくらべてちがっていることがあると、心ぱいになってしまいます。はんたいの意見もなかなか言えません。それに、人とちがうことをしている子を「へんだなあ。」と思ってしまうこともあります。(中略)
 わたしは『スイミー』を読んで、みんなと同じじゃなくてもいいのかもしれないと思いました。それからは、みんなとちがうことがあっても、ときどきは「まあ、いいかな。」と思います。だれかが一人だけちがうことをしても、あまり気にならなくなりました。わたしも、これからは、やりたいことには、一人でもせっきょくてきにちょうせんしたいです。でも、ゆう気が出ないときはスイミーを思い出そうと思います。よろしくね、スイミー。

■解説
【要約→ 強く感じたこと→ 自分の気持ちや変化】という構成です。

シンプルな要約+ 自分の体験と、オーソドックスな形であっても、気持ちをていねいに書くことで、印象に残る感想文になります。登場人物への呼びかけは、結論だけでなく、序論(書き出し)にも有効です。
 

読書感想文タイプB: スイミーの気持ちを考える

■スイミーはがんばりやさん

 ようち園ではじめて『スイミー』を読んでもらったとき、みんなは「スイミーは頭がいいね」とか「すごいね」とか言いました。
 でも、ぼくは、スイミーは大きな魚がこわくなかったのかなと思いました。自分のきょうだいが大きな魚に食べられてしまったのだから、ふ通はこわいはずです。ぼくだったら、見はりを立てて、大きな魚が来たらいっせいにかくれるようにすると思います。だから、ぼくは、スイミーのことがずっとふしぎでした。
 でも、少し前に、もしかしたらスイミーは、新しく出会った魚たちをまもろうとしたのかもしれないと思いました。
 なぜかというと、ぼくにも同じようなことがあったからです。妹と二人でおつかいに行ったとき、大きな犬がねていました。くさりにつながれているのですが、くさりが長すぎて、道にはみ出していました。顔も大きくて、ねていてもとても強そうでした。妹が、
「おにいちゃん、こわい」
と言いました。(中略)
 だから、大事なものをまもろうとしたら、ゆう気が出るんだということがわかりました。それに、だれかといっしょだと、いつもよりずっと力が出てきます。あとで絵本を見てみたら、スイミーの目がまるかったりとがったりしていて、スイミーもがんばったんだなと思いました。今、ぼくは、かしこいだけじゃなく、やさしくてがんばりやさんのスイミーがとてもすきです。

■解説
【わからなかったこと→ 自分の体験→ わかったこと】という構成です。

自分の体験と重ね合わせ、スイミーの気持ちをよく考えた感想文です。文中にもある通り、スイミーは、「すごい」と言われがちな主人公ですが、自分の体験と結びつけることでスイミーの内面に迫ることができました。本の内容と、自分の体験や考えとの比較は大切ですね。会話文にも、臨場感があります。
 

読書感想文タイプC: 赤い魚の立場になる

■もしぼくが赤い魚だったら

 ぼくは、スイミーが全ぜんすきじゃない。赤い魚の所に後から来たくせにいばっているし、一ぴきだけ泳ぐのがはやいし、色もちがう。スイミーだけ名前があるのもおかしい。
 ぼくは、決められたことをするのがにが手だ。学校ではいろいろなことが決まっていて、じゅぎょう中ずっとすわっているのも、整れつするのも、すごくたいへんだ。だから、ぼくが赤い魚で、スイミーが来て「持ち場をまもれ」と言ったら、本当にめいわくする。ぼくは、おもしろいものを見なくてもいいから、じっとしていたい。
 でも、ぼくもスイミーと同じだと思ったことがある。それは、家族がいなくなったらかなしいということだ。ぼくは一人でいるのがすきだけど、家族がいなくなってしまうのはいやだ。スイミーは、きょうだいたちと楽しくくらしていたのに、きゅうに一人ぼっちになってしまって、こわくて、さびしくて、とてもかなしかったのだ。
 そう考えたら、スイミーがかわいそうに思えてきた。もしかしたら、一人だけちがっているのも気にしていたかもしれない。ぼくがスイミーだったら、すばらしいものを見て元気になる前に、ないてばかりで死んでしまっただろう。スイミーは、がんばったのかもしれない。(中略)
 だから、スイミーが一生けんめい考えて行動したように、ぼくもそうしようと思う。それで、ぼくが赤い魚だったら、自分にかっこいい名前をつけて、スイミーにさそわれても「ぼくはかくれているよ」と言うと思う。

■解説
【登場人物について思ったこと(嫌だったこと)→ 自分の体験や自分のこと→ 自分の意見】という構成です。

素直な感想です。こちらは例文としてまとまった読みやすいものを提示していますが、実際子どもが最初に書いたものには、「何を言っているのかよくわからないのに、否定的な考え方だけが目立つ文章」も少なくありません。その場合は、書き手に話を聞いて、構成を整理したり、ことば遣いを直したりするだけで、率直なだけに読み応えのある感想文に仕上がることもあります。否定は禁物ですよ!
 

読書感想文タイプD: 続きを考える

■スイミー、たびに出る

 小さな赤い魚たちと力を合わせて大きな魚をおい出したスイミーは、しばらくの間、みんなで泳いだり、遊んだりすることを楽しみました。
 でも、ある日とつぜん、たびに出たくなりました。スイミーは思い出したのです。海にあった、すばらしいものたちのことを。にじ色のゼリーのようなくらげ、水中ブルドーザーみたいないせえび……。スイミーは、もっともっとたくさんのものを見たいと思ったのです。(後略)

■解説
【物語の続きを考えてみる】タイプの感想文です。続きを考える感想文は、小学校低学年までの、話したり書いたりするのが好きな子におすすめです。

このように、大きな魚とのことよりも、水中のきれいなものに興味を持つお子さんもいます。スイミーが元気を取り戻せたのは、この「すばらしいもの」のおかげですから、それでもかまいません。高学年以上の場合、海の不思議について思いうかべたり、自分の落ち込んだときに元気になる方法を考えてみるなど、登場人物や主なテーマにからめると、タイプA~C のようなシンプルな構成の文章になりやすいでしょう。
 

読書感想文タイプE: 別の視点の物語を書く

■『スイミー』おおきなさびしいさかなのはなし

 その魚はとつぜんやってきた。今までぼくたち大きな魚は、いつもえらそうにしていた。強いのをじまんするようにいばって泳いで、おなかいっぱい小さい魚を食べていた。なのに、ぼくたちよりも大きな魚がすがたをあらわしたのだ。
 大きな魚は、みんなあわててにげた。でも、ぼくはにげなかった。もともと岩の後ろにかくれていたからだ。ぼくは大きな魚だけど、大きな魚の中でも小さいから、うっかりねらわれないようにしている。
 それで、気づいた。大きな魚をおい出したのは、ぼくたちよりも大きな魚じゃなくて、小さな魚たちのあつまりだった。ぼくはびっくりした。大きな魚たちはいつも一ぴきでいてなかよくしない。どうしたら、あんなことができるのだろう。(後略)

■解説
【別の視点で物語を書いてみる】タイプの感想文です。簡単なようで、内容をしっかりと読み取り、自分の気持ちや考えを登場人物に託して語らせるという書き方なので、意外と難易度が高め。テーマから大きくずれると感想文にはなりづらいので、主人公にからめていくとうまくまとまります。

細部にこだわってしまうときや読みがなかなか深まらないときに、遊びで書いてみるのもおすすめ。理解がぐっと深まります。

※以上、読書感想文の例文は、一緒に絵本を読んだ子どもたちとのおしゃべりを元に、筆者が作成したものです。決して正解ではありませんし、転用はご遠慮いただくようお願い申し上げます

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