地頭がいいとは“生まれつき頭がいい”ということ?

地頭がいい子ども

「生まれつき頭が良い」「地頭がいい」ということはあるのでしょうか?

「地頭がいい子」と聞くと、どんな子を想像しますか?「1を聞けば、10理解する子」や「それほど努力をしなくても、よい結果を出すもともと頭の良い子」などを想像するのではないでしょうか。

では、「もともと頭がよい」ということはあり得るのでしょうか?

ロンドン大学などの研究チームが、英国の約2,800家族の12歳の双生児を調べたところ、生まれ持った遺伝子が、読み書きや計算などの能力に確かに影響を与えていることが分かっています。子どもの持つ遺伝子が、その子が読み書きや数学をよりたやすく学習できるかどうかに関わっているというのです(*1)。

それでも同時に「遺伝子」と「環境」とが複雑に相互作用し合うことで、子どもの成長が形成されていることが、より明らかになったとも報告されています(*1)。つまり、たとえ生まれつき何らかの分野に強い遺伝子を持っていたとしても、環境に恵まれなければ、力を発揮することは難しくなります。逆に、人目をひくような強みを持っていないように見えたとしても、環境を整えることで、その子は持てる力を存分に発揮することができるというわけです。

ですから、一見、生まれつきのようにみえる「地頭のよさ」も、結局は、遺伝子と環境が複雑に絡み合うことで成り立っており、後天的にその子なりに高めていくことができるといえるでしょう。
 

“頭のよさ”は多様

ここで覚えておきたいのは、頭のよさというと、読み書きや計算などの数値に表しやすい「認知能力」に焦点があたりがちということです。それでも頭のよさとは、本来は多様です。

そして、社会で活躍したり、人生の満足感を満たすために必要とされるのは、「認知能力」よりも、例えば、やり抜く力、自制心、コミュニケーション力、共感力などの、数値には表れにくい「非認知能力」であると、昨今の研究で明らかにされています(*2)。

確かに、IQやテストの点数に表れやすい「頭のよさ」を持っていたとしても、例えば、すぐに途中で投げ出してしまったり、周りの人々を傷つける言動を続けるならば、社会に出て、何らかの成果を出し、活躍することは難しい場合が多いでしょう。逆に、粘り強さ、発想力、創造力、周りへの気遣いなど数値では表しにくい「頭のよさ」によって、社会的に成功している人々は多くいるはずです。皆さんの周りでも、そうではありませんか?
地頭がいい子ども

親として子どもの地頭を育むために何ができるでしょうか?

ですから、親としてできるのは、認知能力と非認知能力といった、より広い意味で頭のよさをとらえること。そして、既に決まっており変えられない遺伝子よりも、改善することのできる目の前の環境にフォーカスすることではないでしょうか。

では、子どもが持てる力を最大限に発揮できるよう、どのようなサポートができるでしょう?
 

地頭を育むポイント1: 子どもが興味関心を掘り下げ展開していくサポートを

子ども自身が興味関心を持ち、好奇心全開で前のめりに物事に取り組む時ほど、その子は「どうしてだろう?」と自発的に考え、様々な可能性を試し、答えを導き出すために工夫を凝らします。こうした繰り返しの中で、地頭もますます磨かれていきます。

このように子どもが興味を掘り下げ展開するときこそ、親はサポートをしてあげましょう。その子が何に興味を持つかは分かりませんから、まずは、できる範囲で多様な体験を提供し、その子を観察してみましょう。初めから目をランランとさせ飛びつく子もいれば、気がのらなさそうにみえても続ける内にふつふつと興味がわいてくる子もいるでしょう。片っ端から色々なことを試してみたい子もいれば、じっくりと一つのことに向き合いたい子もいるはずです。

物事への興味関心の持ち方は、子どもによって様々ですが、できる範囲での機会やリソースを提供し、子どもの興味を飛び石のようにして前へと進む中で、その子は、考える力・集中力・分析力・問題解決力・自己効力感など地頭のよさに関わる様々な能力を培うでしょう。

また、そばにいる大人が体現することも大切です。周りの物事へ好奇心をもち、「なんでだろうね」と不思議がり、「こういうことかな?」と仮説をたて、「へ~、そうなんだ!」と感動する姿を示してあげましょう。すると、子どももより自然にこうした姿勢を身につけていきます。

 

地頭を育むポイント2:成長型マインドセットを培うサポートを

スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドウェック氏によると、能力は生まれつき決まっているととらえる「固定型マインドセット」を持つ子より、能力は鍛えるほど伸びていくととらえる「成長型マインドセット」を持つ子の方が、より能力を伸ばしていくと分かっています(*3)。

確かに、持って生まれた能力で全てが決まってしまうと信じる子と、自分なりに頑張るなら、よりよくできると信じられる子の間には、物事への取り組み方に大きな違いがでるでしょう。「能力は、鍛えることで伸びていく」と伝え、周りではなくその子の過去と比べることでその子がいかに成長してきたかを示し、励まし続けてあげましょう。また、普段の生活で、次の2つのことも心がけていきたいです。

■1. 結果より過程にフォーカスする
例えば、テストでいい点をとったとしても、「100点なんてすごい! あなたは本当に頭がいいね!」よりも、「毎晩、観たいユーチューブを我慢して勉強したものね。よく頑張ったね、嬉しいね!」と声をかけてあげましょう。

どれほど頑張ったとしても、いつも満点をとったり、いい結果を出せるとは限りません。それでも、その子にはどうしようもない“結果”によって頭のよさが決まってしまうと子どもが感じるならば、長い目で見て、その子が改善のために頑張る気持ちも萎えてしまいます。子ども自身がコントロールできると実感する「過程」にフォーカスし、その子ができる最善を励ましてあげましょう。
子どもの地頭

子どもの”成長型マインドセット”を育みましょう


■2. 失敗はより良くなるための糧ととらえる
子どもが何かに失敗したり、うまくいかない時に、親がどう対応するかが、子どもが伸びるかどうかに大きく影響を与えると分かっています。「うまくいかないのはこの子に能力がないから」ととらえる親よりも、「どうしたらよりうまくできるだろう?」ととらえ、改善のために行動を起こす親の子は、より伸びていくといいます(*4)。

うまくいかないときは、子ども本人こそが「自分には能力がないからだ」と落ち込んだり、自分の可能性を疑うものです。そんな時こそ、子どもの残念な気持ちに共感しつつ、「他にどんな方法があるかな?」と話し合い、具体的な行動を起こすサポートをしてあげましょう。そうした繰り返しにより、失敗は能力がないとされる機会ではなく、自らが成長できるチャンスだと実感できるようになるでしょう。
 

状況が変化し続ける先行きが不透明な現代に、「自分の能力は既に決まっている」と諦めることで困難を抱えるのは、子ども本人です。是非、子どもたち一人一人が、「自分なりに頑張ることで成長できる」と信じ、自分らしく生涯学び続けられるサポートをしていきたいですね。
 
【参考資料】
(*1)Oliver S. P. Davis,他 “ The correlation between reading and mathematics ability at age twelve has a substantial genetic component.” Nature Communications, 2014; 5 DOI: 10.1038/ncomms5204
(*2)James J. Heckman,他 'The Rate of Return to the High/Scope Perry Preschool Program' 2009
(*3)Carol S. Dweck “Mindset: The New Psychology of Success” 2007 Ballantine Books
(*4)K. Haimovitz, C. S. Dweck. What Predicts Childrens Fixed and Growth Intelligence Mind-Sets? Not Their Parents Views of Intelligence but Their Parents Views of Failure. Psychological Science, 2016; DOI: 10.1177/0956797616639727

【関連記事】

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。