ストレス

コロナでイベント中止…メンタルを壊さない心理学的対処法

【公認心理師が解説】新型コロナウイルスの影響で、お花見、旅行、コンサートから、入学式、結婚式、東京五輪まで、多くのイベントや行事が影響を受けています。日常的なストレスケアにも大切な様々な楽しみを失ってしまったら…。落胆から「自粛疲れ」や「コロナうつ」に陥らないために、心理学的に有効なメンタルの立て直し方をご紹介します。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

楽しみにしていた予定やイベントが軒並み中止……メンタルへの影響も

旅行をキャンセルした女性

せっかくの旅行も諦めることに……。やむを得ないとは言え、楽しみにしていた予定を白紙に戻すのはショックなものです


新型コロナウイルス感染拡大の影響で、様々な大型イベントや行事が影響を受けています。この春もセンバツ中止、夏の東京五輪の延期決定に始まり、お花見の自粛、卒業式や入学式の中止・縮小などの措置が全国各地で取られました。楽しみにしていた旅行やコンサートなどの予定がなくなった方も少なくないでしょう。時間をかけて準備を進めてきた結婚式の中止に落ち込んでいる方もいるかもしれません。

趣味やレジャーはただの気晴らしと思われるかもしれませんが、日常生活のストレスを手軽にリフレッシュするのに有効な手段でもあります。それぞれが大切に思っていたイベントが立て続けに中止・延期になっていく中で、「毎日に楽しみが見いだせない」「気持ちが沈んで心まで引きこもりになってしまいそう」「自粛続きでつらい」といった声が聞かれます。
 

気持ちの落ち込みから悪化していく「自粛疲れ」と「コロナうつ」

期待していたことが叶わなくなってしまうと、人はその楽しみを持つ前以上に落胆してしまいます。そもそも人間は、何かしらの夢や目標を心に描き、その幸せを味わう自分を想像できるからこそ、平凡な日常を頑張れるものです。コロナ自粛が強く求められている今のように、楽しみにしていた予定が突然がなくなり、ただただ健康管理と収入のことを心配しながら生活する毎日では、悲観的な気持ちになってしまう人が増えるのは無理もないことでしょう。こうした中で心配されているのが「自粛疲れ」と、いわゆる「コロナうつ」です。
 
「自粛疲れ」は、様々な楽しみの自粛を長期間求められることで、気持ちが上手くリフレッシュできず、精神的な疲れを溜めてしまうことです。不要不急な外出自粛や、「3密(密閉、密集、密接)」と呼ばれる空間への出入り自粛が強く求められる中、冒頭で挙げたような大きなイベントの他、日常的な手軽なリフレッシュ法である外出や食事会などもできなくなり、日々の疲れをリセットしにくくなります。
 
そして、「コロナうつ」は正式な病名ではありませんが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う様々な不安をもとに起こっている抑うつ状態やうつ病のことを俗に表現した言葉です。「コロナにかかったらどうしよう」という心配、「もう感染しているのではないか」という不安。外に出るとスーパーのレジに並ぶだけでも感染不安にとらわれ、ドアノブや手すりを触るのにも躊躇してしまう。家にいると1日中ウイルス問題の報道から目を離せず、絶望的な気持ちになる。また、様々な業種が営業の自粛や縮小などを行う中で、「今の職を失ったら」「このまま貯金が尽きたら……」といった経済的な悩みもあるでしょう。これらの不安の連鎖が止まらず、憂欝な気分が抑えきれずに抑うつ状態になってしまう……。こうした状態がいわゆる「コロナうつ」と呼ばれるものです。
 
今回政府から「緊急事態宣言」が出されたことにより、より厳格な自粛要請や衛生管理、健康管理が求められ、こうした状態に陥る方はますます増えていくことが予想されます。
 

落ち込みから回復する方法は? 「予言の自己成就」活用が有効

現在のような非常事態の中でも、私たちは厭世的な気分に陥らず、気持ちを確かに持って生活していかなければなりません。それを可能にするために、カウンセラーの立場からおすすめしたいキーワードをお伝えします。それが「予言の自己成就」というものです。
 
「予言の自己成就」は心理学用語で、「未来はこうなる」と自分で予言すると、無意識のうちにその通りの現実を歩むことになる、という心理効果を指します。ネガティブなことを予言すれば無自覚のうちにネガティブな現実を歩み、ポジティブなことを予言すれば無自覚のうちにポジティブな現実を歩んでいくということです。
 
したがって、ふと口につく言葉でもネガティブな表現はなるべく使わないようにすることが大切です。「もう終わりだ」「どんどん悪くなる」「どうせ何も変わらない」といった言葉ばかり使っていると、自分の行動もその方向に導かれたものになってしまいます。
 
厳しい状況のときこそ、できるだけポジティブな表現を使うことが大切なのです。「また旅行に行ける」「収束したら〇〇で食事会をしよう」「〇〇できる日が必ずくる。それまでみんなで乗り越えよう。今できることを考えていこう」と考えて口に出すこと。このような言葉を使っていると、非常事態の中でも何らかの希望やアイデアを見いだしやすくなり、自分の行動も建設的な方向に向かわせることができます。
 
言葉の影響力は、多くの人が思っている以上に大きいものです。非常事態の中では、世の中に飛び交う言葉はネガティブなものであふれます。しかし、私たち自身が使う言葉はできるだけポジティブで、未来志向なものを使っていくようにしましょう。予言の自己成就については、「「自己成就予言」という心理効果」でも詳しく解説しています。
 

いつかは終わるコロナ自粛……今できることを前向きに!

私たちは今、歴史的な非常事態に直面しています。日常の楽しみが減るのは残念なことですが、最優先すべきはお互いの命を守ることです。そして私たちは近い将来、この非常事態から必ず解放されます。未来を悲観せず、現状に過剰な不安を抱え込まず、今やるべきこと、できることに前向きに取り組んでいきましょう。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます