お金の悩みを解決!マネープランクリニック/50代以上の家庭のお金悩み相談

55歳、貯金1500万円。夫は5年前に他界。今後が不安で仕方ありません……(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、5年前にご主人を亡くされた55歳のパートで働く主婦の方。収入は将来的に安定せず、ただただ不安が募るばかりとか。ファイナンシャル・プランナー の深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 住宅コストが下がれば老後資金は用意できる

まずは今後のキャッシュフロー、資金の流れを試算してみましょう。今後の収入については、いつまで継続するか不確定なものが多く、明確な試算はできませんが、ご主人が加入していた収入保障保険からの保険金(年金)が5年後の2024年10月に終了するのは確かです。また、その時期に副業で得られる収入、お子さん2人からの生活費も途絶えたとします。したがって、それ以降、けろたまさんが60歳以降は、遺族年金とパート収入だけとなります。
 
その間、生活費も変わらないとすると、毎月21万7000円。対して、収入から貯蓄に回っている金額は、これついては後で触れますが、毎月23万円とします。5年間で1380万円。今ある貯蓄が1500万円(利息は考慮せず)ですから、計2880万円となります。そして、これがけろたまさんの老後資金となるわけです。
 
60歳以降の生活費ですが、そのポイントはけろたまさんも指摘されているとおり、住宅コスト=家賃となります。現在、家賃が家計支出の50%を超えています。できる限り早く、この負担を解消したい。もし、お子さんが2人とも独立していれば、一人暮らしとなりますから、もっと家賃の低い住宅に引っ越すことが可能です。逆にいえば、家賃負担の大きさによって、今後のマネープランは大きく変わるといっていいでしょう。
 
もしも60歳以降も現在の住宅に住み続けるとすると、収入は遺族厚生年金と中高齢寡婦加算(65歳以降は老齢基礎年金)、これにパート代が現在と同額とすると、月15万7000円。一方、家計支出では、家賃を現在より4万円下げることができれば、月17万7000円。結果、毎月の赤字は2万円ですから、65歳までの5年間で120万円。同額を老後資金から捻出しても、まだ2760万円残る計算になります。
 
けろたまさんは健康であれば75歳まで働きたいとのこと。長寿化にともない、定年後も長く働くことはもはや当たり前の時代ですし、資金的にはもっとも有効な老後対策でもあります。ただし、働けなくなることも想定しておく必要はあるでしょう。仮に、働くのは65歳までとすれば、それ以降の収入は年金(遺族厚生年金+老齢基礎年金。現在とほぼ同額)だけとなります。
 
生活費は、デンタルローンの返済も完済し、通信費も現在の半分以下になっているはず。それでも、毎月の赤字は4万円ほどに増えますが、手持資金をすべて取り崩すのに57年かかります。つまり、計算上は122歳までは資金がもつということ。もちろん、途中、まとまった支出(自身の病気や介護の費用、海外旅行、家電などの大きな買い物)もあるでしょうが、それを考慮しても、老後資金で大きく困ることはないと考えられます。
 

アドバイス2 収入のあるうちに高い貯蓄率を目指す

先に貯蓄を「毎月23万円」としました。データによると現在「10万~20万円」。収入46万円に生活費21万7000円ですから、差し引けば24万3000円の黒字です。そうなると、貯蓄20万円としても、まだ4万3000円の行方が不明です。使途不明金なのか、見過ごされているのか。どちらにしても、このうち3万円は貯蓄に回し、きっちり毎月23万円貯めていくことを目標にしてください。
 
現在、おそらくもっとも高収入の時期だといえますが、年金と保険金以外は不確定要素が多いのも事実。したがって、高いうちにできるだけ貯蓄しておく。今後の貯蓄は老後資金と直結するだけに、ぜひ実践してほしいと思います。
 
家計で気になるのは保険。医療保険は継続でいいですが、収入保障保険はお子さんが20代ですから、もはや必要性を感じません。遅くとも、次女の方の大学卒業に合わせて解約しましょう。
 
また、現在貯蓄としてある1500万円については、無理に投資をする必要はまったくありませんし、より利息の高い、元本保証の商品に預けるという発想も正しいと思います。それでも、何か老後対策をしたいと考えるなら、長生きリスクに備える長寿生存保険、いわゆる「トンチン年金保険」の加入を検討してもいいでしょう。
 

アドバイス3 「トンチン年金保険」も選択肢のひとつ

トンチン年金保険とは、一生涯年金を受け取れる終身保険の一種。個人年金保険でも終身で受け取れるタイプはありますが、保険料が割高なのがネック。対して、この保険は死亡保障(年金開始前に死亡した人への保障)等を抑えることで、保険料も抑えています。ただし、その結果、ある程度長生きしないと損となってしまうデメリットも。あくまで長生きリスクへの対策、将来の安心感を得ると考えられるなら、加入を検討する価値は十分にあります。
 
最後に。長女の方は生活費を入れ、次女の方も学生ながら自身のスマホ代を渡されています。立派です。しかし、次女の方は奨学金の金額を引き下げる、あるいは大学授業料の無償化の申請もされるようですが、現状のままだと最終的に450万円もの借入になってしまいます。社会に出たと同時に背負う額としては、かなりの大きさです。先に試算したように資金が順調に貯まっていけば、老後は余裕があります。そうなった場合、例えば4、5年後に半分の200万円程度、代わりに奨学金の返済をされてもいいと思います。
 
ともあれ、収入も不安定な中、不安が膨らむのは仕方がありません。でも、落ち着いて試算をすれば、必要以上に不安になる必要がないということが理解できるかと思います。お子さんたちと協力し合いながら、ぜひ頑張ってください。
 

相談者「けろたま」さんから寄せられた感想

主人が亡くなってから、自分ひとりの力で生きていけるかが、不安で不安で仕方ない日々を送ってきました。おかげさまで娘たちも無事に成人しましたが、それでも不安が募るばかりで駆け込み寺のような思いでこちらに応募しました。深野先生のアドバイスはいつも拝見させていただいていますが、的確で無駄な不安を払拭してくれます。今回いただいたアドバイスも自分の家計をもう一度見直す良い機会になりました。また老後についても必要以上に不安になることない、という心強いお言葉をいただき安心しました。これからも気を抜かずに節約と健康を心がけていつまでも元気に働けるよう頑張りたいと思います。またライフプランで行き詰まりましたら是非ご相談させてください。この度はご多忙ななか、深野先生、編集部の皆さま、本当にありがとうございました。
 

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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など


取材・文/清水京武


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