住宅コストの負担が重く、改善策が見当たりません

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、5年前にご主人を亡くされた55歳のパートで働く主婦の方。収入は将来的に安定せず、ただただ不安が募るばかりとか。ファイナンシャル・プランナー の深野康彦さんがアドバイスします。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください(相談は無料です)

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家賃の負担が大きく、今後の家計が心配です

家賃の負担が大きく、今後の家計が心配です


■相談者
けろたまさん(仮名)
女性/パート・アルバイト/55歳
関西/賃貸住宅
 
■家族構成
長女 (28歳/社会人) 、次女(20歳/大学生)
 
■相談内容 
主人が5年前に亡くなってから暮らしが一変しました。亡くなった主人はいずれ実家に帰るし、賃貸の方が気楽だからという理由で家の購入に関心を示してくれませんでした。でも主人が亡くなった今、無理をしてでも家を買っておけばローンが団信でなくなっていたかもしれないと思うと悔やむ気持ちはありますが、「たられば」の話をしたところでどうしようもありません。

一番の経済的な重圧はやはり「家賃」です。現在の家よりもう少し家賃の安いところに引っ越したいとは思っているのですが……。今の家は駅近で人通りが多いところにあるので、仕事やバイトで毎日帰宅時間が遅い娘たちの帰りを心配することもないのですが、駅から離れた今より家賃の安い物件に引っ越すのは防犯面での不安があり、なかなか引っ越しに踏み切れないでいます。

私自身は身体さえ大丈夫なら75歳まで働くつもりでいます。2024年の10月までは収入保障保険が毎月おりますが、それ以降の暮らしが不安でたまりません。今は出来るだけ貯金するように心がけていますが、子ども達が巣立ってからの暮らしがとにかく不安です。現在、パートの他に副業として不動産管理の手伝いをしているのですが、それも知り合いのツテのため、いつ仕事がなくなるかわからないため、パート代だけの収入になってしまうのでそちらのほうも不安です。投資は怖いので全て定期預金より金利の高い銀行の普通預金に預けています。そのうち主人の死亡保険金があり長女のボーナス月にはお金を家に入れてくれます。また、現在60回払いのデンタルローンを毎月1万円返済中です。金利は歯科医院負担の無金利ローンだったので、このまま払い続けていこうと思っています。

■家計収支データ
相談者「けろたま」さんの家計収支データ

相談者「けろたま」さんの家計収支データ


 
■家計収支データ補足
(1)食費について
家族での外食はほぼしない。近所のスーパーの半額商品をまとめて買ってからメニューを決める節約をしているため。仕事の際はお弁当を作って持っていっています。
 
(2)仕事について
現在パート勤務の合間に、不動産管理の手伝いを副業で行っているため、現在はこれ以上仕事を増やすことは困難。

(3)奨学金について
次女の貸与予定総額450万円ほどになる。現在毎月9万4000円の奨学金を貸与。少し多めに借りているため来年度から減額予定。また、来年度からの大学授業料無償化の申請をする。長女も奨学金あり。
 
(4)家賃の安い賃貸に引っ越さない理由
・子どもたちの帰宅が遅く、2人とも遠くまで通勤通学、これ以上離れた場所には引っ越せない。
・公団などの住宅は駅から離れていて帰り道が暗いところばかりなので防犯面が不安。
・現在のマンションは更新料もないばかりか、近所の家賃相場より安い。
 
(5) 加入保険について
・本人/医療保険(入院5000円、がん診断給付金30万円、先進医療特約)=保険料5337円
・本人/収入保障保険(年金額・月10万円、62歳まで)=保険料2770円
 
(6)年金について
・遺族厚生年金 57万8900円
・老齢基礎年金 58万1431円
・老齢厚生年金 5万9815円(64歳から同額の特別支給)
・中高齢寡婦加算額 58万5100円
 
■FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1 住宅コストが下がれば老後資金は用意できる
アドバイス2 収入のあるうちに高い貯蓄率を目指す
アドバイス3 「トンチン年金保険」も選択肢のひとつ
 

アドバイス1 住宅コストが下がれば老後資金は用意できる

まずは今後のキャッシュフロー、資金の流れを試算してみましょう。
今後の収入については、いつまで継続するか不確定なものが多く、明確な試算はできませんが、ご主人が加入していた収入保障保険からの保険金(年金)が5年後の2024年10月に終了するのは確かですから、その時期に副業で得られる収入、お子さん2人からの生活費も途絶えたとします。したがって、それ以降、けろたまさんが60歳以降は、遺族年金とパート収入だけとなります。
 
その間、生活費も変わらないとすると、毎月21万7000円。対して、収入から貯蓄に回っている金額は、これついては後で触れますが、毎月23万円とします。5年間で1380万円。今ある貯蓄が1500万円(利息は考慮せず)ですから、計2880万円となります。そして、これがけろたまさんの老後資金となるわけです。
 
60歳以降の生活費ですが、そのポイントはけろたまさんも指摘されているとおり、住宅コスト=家賃となります。現在、家賃が家計支出の50%を超えています。できる限り早く、この負担を解消したい。もし、お子さんが2人とも独立していれば、一人暮らしとなりますから、もっと家賃の低い住宅に引っ越すことが可能です。逆に言えば、家賃負担の大きさによって、今後のマネープランは大きく変わると言っていいでしょう。
 
もしも60歳以降も現在の住宅に住み続けるとすると、収入は遺族厚生年金と中高齢寡婦加算(65歳以降は老齢基礎年金)、これにパート代が現在と同額とすると、月15万7000円。一方、家計支出では、家賃を現在より4万円下げることができれば、月17万7000円。結果、毎月の赤字は2万円ですから、65歳までの5年間で120万円。同額を老後資金から捻出しても、まだ2760万円残る計算になります。
 
けろたまさんは健康であれば75歳まで働きたいとのこと。長寿化にともない、定年後も長く働くことはもはや当たり前の時代ですし、資金的にはもっとも有効な老後対策でもあります。ただし、働けなくなることも想定しておく必要はあるでしょう。仮に、働くのは65歳までとすれば、それ以降の収入は年金(遺族厚生年金+老齢基礎年金。現在とほぼ同額)だけとなります。
 
生活費は、デンタルローンの返済も完済し、通信費も現在の半分以下になっているはず。それでも、毎月の赤字は4万円ほどに増えますが、手持資金をすべて取り崩すのに57年かかります。つまり、計算上は122歳までは資金がもつということ。もちろん、途中、まとまった支出(自身の病気や介護の費用、海外旅行、家電などの大きな買い物)もあるでしょうが、それを考慮しても、老後資金で大きく困ることはないと考えられます。
 

アドバイス2 収入のあるうちに高い貯蓄率を目指す

先に貯蓄を「毎月23万円」としました。データによると現在「10万~20万円」。収入46万円に生活費21万7000円ですから、差し引けば24万3000円の黒字です。そうなると、貯蓄20万円としても、まだ4万3000円の行方が不明です。使途不明金なのか、見過ごされているのか。どちらにしても、このうち3万円は貯蓄に回し、きっちり毎月23万円貯めていくことを目標にしてください。
 
現在、おそらくもっとも高収入の時期だと言えますが、年金と保険金以外は不確定要素が多いのも事実。したがって、高いうちにできるだけ貯蓄しておく。今後の貯蓄は老後資金と直結するだけに、ぜひ実践してほしいと思います。
 
家計で気になるのは保険。医療保険は継続でいいですが、収入保障保険はお子さんが20代ですから、もはや必要性を感じません。遅くとも、次女の方の大学卒業に合わせて解約しましょう。
 
また、現在貯蓄としてある1500万円については、無理に投資をする必要はまったくありませんし、より利息の高い、元本保証の商品に預けるという発想も正しいと思います。それでも、何か老後対策をしたいと考えるなら、長生きリスクに備える長寿生存保険、いわゆる「トンチン年金保険」の加入を検討してもいいでしょう。
 

アドバイス3 「トンチン年金保険」も選択肢のひとつ

トンチン年金保険とは、一生涯年金を受け取れる終身保険の一種。個人年金保険でも終身で受け取れるタイプはありますが、保険料が割高なのがネック。対して、この保険は死亡保障(年金開始前に死亡した人への保障)等を抑えることで、保険料も抑えています。ただし、その結果、ある程度長生きしないと損となってしまうデメリットも。あくまで長生きリスクへの対策、将来の安心感を得ると考えられるなら、加入を検討する価値は十分にあります。
 
最後に。長女の方は生活費を入れ、次女の方も学生ながら自身のスマホ代を渡されています。立派です。しかし、次女の方は奨学金の金額を引き下げる、あるいは大学授業料の無償化の申請もされるようですが、現状のままだと最終的に450万円もの借入になってしまいます。社会に出たと同時に背負う額としては、かなりの大きさです。先に試算したように資金が順調に貯まっていけば、老後は余裕があります。そうなった場合、例えば4、5年後に半分の200万円程度、代わりに奨学金の返済をされてもいいと思います。
 
ともあれ、収入も不安定な中、不安が膨らむのは仕方がありません。でも、落ち着いて試算をすれば、必要以上に不安になる必要がないということが理解できるかと思います。お子さんたちと協力し合いながら、ぜひ頑張ってください。
 

相談者「けろたま」さんから寄せられた感想

主人が亡くなってから、自分ひとりの力で生きていけるかが不安で不安で仕方ない日々を送ってきました。おかげさまで娘たちも無事に成人しましたが、それでも不安が募るばかりで駆け込み寺のような思いでこちらに応募しました。深野先生のアドバイスはいつも拝見させていただいていますが、的確で無駄な不安を払拭してくれます。今回いただいたアドバイスも自分の家計をもう一度見直す良い機会になりました。また老後についても必要以上に不安になることない、という心強いお言葉をいただき安心しました。これからも気を抜かずに節約と健康を心がけていつまでも元気に働けるよう頑張りたいと思います。またライフプランで行き詰まりましたら是非ご相談させてください。この度はご多忙ななか、深野先生、編集部の皆さま、本当にありがとうございました。
 

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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など


取材・文/清水京武


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