1997年は2871万円だったのに2018年は1788万円までダウン!
老後の暮らしを支えるお金として、多くの会社員が当てにしている退職金や企業年金。終身雇用を基本としてきた日本の企業で働く会社員にとって、現役時代はさまざまな苦労があっても退職時には一時金、その後も企業年金を受け取ることができるなど、リタイア後も会社を頼りにできることは、会社員を続けるモチベーションのひとつでもありました。ところが厚生労働省「就労条件総合調査」によると、退職金と企業年金を合わせた退職給付の額は1997年をピークに右肩下がり。2018年調査では1788万円となり、なんと1083万円もダウンしています。
退職給付額は企業規模や勤続年数によって大きな差がある
多くの人を対象にした調査データは全体の傾向を把握することはできますが、実際に自分のこととして参考にしたい場合はもう少し詳しいデータの方が有用です。「就労条件総合調査」では、退職給付額を左右する大きな要素である「企業規模」「勤続年数」についての調査結果も公表されています。それをグラフ化したのが下図です。会社員として働いていれば退職給付金はあるものと思いがちですが、このデータによると企業規模が30~99人と小さい場合、5社のうち1社強は退職給付制度がないという現実が見えてきます。それに対し企業規模が300人以上ならば9割以上があり、企業規模が300人以上か、それ未満かの間には大きな違いがあるようです。勤続年数も20~24年と35年以上では1000万円以上の差があり、退職給付額と勤続年数は比例し、その差は確実に年数を表していることがわかります。
これらのことから、減っているとはいえある程度まとまった退職給付金を受け取ることができるのは、300人以上の企業規模の会社に35年以上勤務した人。会社員といえども、退職給付金を老後資金のアテにできる人は限られているという現実が見えてきます。
退職給付制度の内容は、これから大きく変わっていく?
退職給付制度とひとくちにいっても、その中には退職一時金、確定給付企業年金、確定拠出年金といった複数の制度があり、企業によって内容が異なります。これまで終身雇用を基調としてきた日本企業では当たり前のように思われてきた退職給付制度ですが、これは法律で規定されたものではないため企業の判断で廃止しても違法ではありません。特に退職一時金が支払われるのは世界的にみると珍しいことのようですし、企業年金も日本銀行のマイナス金利政策など運用状況が厳しいため、確定給付型から確定拠出型へ移行するなど制度を見直す傾向にあります。
また企業年金は、支給期間が企業によって異なります。かつては厚生年金のように終身年金の企業もたくさんありましたが、現在は5年・10年・15年といった一定の支給期間のみという有期年金のケースがほとんど。途中で年金支給額が減って慌てることがないよう、退職時には正確に理解しておく必要があります。
退職給付制度の変化は、日本企業がグローバル化していることも理由のひとつ。海外でも活動する企業にとって、日本人だけに有利な雇用条件は許されなくなってきています。また退職金や企業年金は、将来、社員に支払う債務として扱われるためなるため企業にとって会計上の負担となります。もはや退職一時金や確定給付企業年金といった会社が準備してくれるお金を老後資金の当てにできる時代は、終わりを迎えようとしているのかもしれません。
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