ドイツ・バウハウス創立100周年! 世界遺産と名建築をめぐる旅に出よう
皆さんは「バウハウス」を知っていますか? 名前は聞いたことがあっても詳しくは知らない、という人も多いと思いますが、じつは私たちの身の回りにあるデザインの多くがバウハウスの影響を受けているんです。バウハウスとは1919年にドイツ・ワイマールに誕生した芸術学校。ナチスの台頭により閉校に追い込まれるまでの14年間という短い活動期間にもかかわらず、世界の建築・デザインに大きな影響を与え、1996年にバウハウス関連遺跡群が世界遺産に登録されました。
2019年はバウハウス創立100周年。ワイマールとデッサウで新しい博物館がオープンし、ドイツ各地で様々な記念イベントが目白押しです。この機会にバウハウスを知って、その軌跡をめぐる旅に出かけてみてはいかがでしょうか。
ここでは、バウハウスとは何か? その歴史や理念をわかりやすく簡単にまとめました。拠点となったワイマール、デッサウ、ベルリンの名建築や観光スポットも紹介していますので、参考にしていただけたら嬉しいです。
■バウハウス100周年特設サイト
www.bauhaus100.de
<目次>
- バウハウスとは何か?
- バウハウスの歴史とは? 誕生から閉校まで
- バウハウスの理念と教育
- バウハウスのデザイン
- バウハウスのプロダクト
- ドイツ・バウハウスの町1 ワイマール
- ドイツ・バウハウスの町2 デッサウ
- ドイツ・バウハウスの町3 ベルリン
バウハウスとは何か?
バウハウスとは1919年にドイツ・ワイマールに創立された、建築、絵画、工芸、写真など様々な芸術の総合的な教育を行う学校「バウハウス」のこと。既成概念にとらわれない実験的な教育を行い、20世紀以降の芸術・建築史に大きな影響を与えました。今ではその流れをくむものをバウハウスデザイン、バウハウス建築と呼ぶなど、理念そのものが広い意味で使われています。バウハウスの歴史とは? 誕生から閉校まで
バウハウスは当時の社会的背景に影響を受けて誕生し、時代に翻弄されその幕を閉じました。歴史を簡単にふりかえってみましょう。■1907年
産業革命以降の粗悪品の大量生産に異議を唱えるイギリスのアーツ・アンド・クラフツ運動の影響を受け「ドイツ工作連盟」が誕生。芸術と産業の融合をかかげ、機械化を推進しながらも産業製品の品質向上を目指します。
■1919年
「ワイマール大公工芸学校」と「ワイマール美術学校」が合併し「バウハウス」が誕生。ドイツ工作連盟のメンバーだった建築家ヴァルター・グロピウスが初代校長を務めました。
■1925年
デッサウに移転。1928年にハンネス・マイヤーが校長となり、次いで1930年にミース・ファン・デル・ローエが校長に就任。
■1932年
ベルリンに移転。
■1933年
ナチスの弾圧により閉校。
バウハウスが存在していたのは1919年~1933年のわずか14年間。その後アメリカへ亡命した講師陣によってその理念は受け継がれ、日本や世界各地へ広がり現代建築・デザインの基礎となりました。
バウハウスの理念と教育
「すべての造形活動の最終目的は建築である」「芸術家と職人の間に本質的な違いはない」というグロピウスの理念にもとづき、建築につながるあらゆる芸術の可能性を追求。芸術が一部の人間の道楽ではなく、すべての人が豊かな生活を送るための必需品となるよう、「芸術と技術の融合」を掲げて建築や商品、舞台など様々な形で具現化していきました。バウハウスとはドイツ語で「建築の家」という意味で、芸術家と職人が協力して教会を建てるための組合「バウヒュッテン」に由来します。この考えを取り入れ、建築、絵画、写真、家具ほかあらゆる学科を1つ屋根の下にまとめ、予備課程と各工房での専門課程により総合的な教育を実施。先生はマイスターと呼ばれ、パウル・クレー、ワリシー・カンディンスキー、オスカー・シュレンマーなど第一線で活躍する芸術家たちが教壇に立ちました。
バウハウスのデザイン
「形は機能に従う」という理念のもと、バウハウスでは見た目の美しさだけでなく機能性を追求したシンプルなデザインを追求。コンクリートやガラス、金属などの新素材を積極的に取り入れた建築をはじめ、家具や生活雑貨、写真、フォント、グラフィックなど様々な分野で作品を生み出しました。装飾が良しとされていた時代に、斬新なアイデアと活動でモダンデザインの基礎を築いたのです。
バウハウスのプロダクト
バウハウスのデザインは100年経った今見ても新鮮で、多くの人に愛されています。ドイツブランド「ブラウン BRAUN」や、「ユンハウス JUNGHANS」の時計、万年筆ラミーサファリが人気の「ラミー LAMY」、「ロイヒトトゥルム LEUCHTTURM1917」のノートなど、バウハウス精神を受け継ぐプロダクトは日本でも大人気。私たちのまわりの建物やふだん使っている日用品も、じつはバウハウスの影響を受けているかもしれませんね。ドイツ・バウハウスの町1 ワイマール
かつてゲーテやシラーが活躍し「古典主義の都」として世界遺産にも登録されているワイマール。1919年、ドイツ初の民主主義憲法「ワイマール憲法」が制定されたこの町でバウハウスが誕生しました。バウハウスの校舎は、ドイツ工作連盟のメンバーでバウハウスの前身となる工芸学校の運営者だったアンリ・ヴァン・デ・ヴェルデの設計。1996年にバウハウス大学として生まれ変わり、現在は建築・土木工学・アート&デザイン・メディアの4分野で世界中の学生が学んでいます。校内は見学自由で、階段や壁画などいたるところでバウハウスのデザインを見ることができます。
■Bauhaus-Universität Weimar
住所:Geschwister-Scholl-Str.6 Weimar 2019年4月、バウハウス100周年を迎えバウハウス博物館がオープン。ナチス時代の建築の隣に戒めの意味も込めて建てられた建物は、コンクリートのキューブ型でミニマルなデザイン。1万3000点もの膨大な所蔵品のなかから、絵画や家具、食器など初期の貴重な作品が多数展示されています。
■Bauhaus-Museum-Weimar
住所:Stéphane-Hessel-Platz1 Weimar
営業時間:月10:00~14:30 火~日10:00~18:00
料金:11ユーロ
ドイツ・バウハウスの町2 デッサウ
1924年に移転し1933年ベルリンに移るまでの間、バウハウスの拠点となり最盛期を迎えたのがデッサウ。建築史に名を轟かす数々の名建築が残る、バウハウスの聖地ともいえる町です。なかでも近代建築の傑作として有名なのが、初代校長グロピウス設計の校舎。開放的なガラスのカーテンウォールや講堂、食堂などすみずみまでバウハウスの機能美が感じられ、100年前とは思えないモダンなデザインに感嘆してしまいます。なんと、かつて学生寮だった建物に宿泊することもできるんですよ!
■Bauhaus Dessau
住所:Gropiusallee 38 06846 Dessau-Roßlau
営業時間:10:00~17:00
料金:(デッサウ・バウハウス全施設同料金)シングルチケット8.5ユーロ、共通チケット15ユーロ、ガイドツアー7ユーロ、デッサウ校舎は日本語オーディオガイドあり 5ユーロ 校舎近くの木立の中に並ぶ真っ白いミニマムな建物は、教員住宅「マイスターハウス」。設計者のグロピウスほか、カンディンスキーやパウル・クレーなどバウハウスの先生たちが暮らしました。
■Meisterhäuser
住所:Ebertallee 59-71 06846 Dessau-Roßlau
営業時間:10:00~17:00 2019年9月にオープンしたバウハウス博物館は、4万9千点もの貴重なコレクションを所蔵。1階はカフェやイベントが楽しめるオープンスペースとなっていて、町の新しいランドマークとなっています。
■Bauhaus Museum Dessau
住所:Mies-van-der-Rohe-Platz1 06844 Dessau-Roßlau
営業時間:10:00~17:00
このほかにも、エルベ川沿いのレストラン「コルンハウス Kornhaus」や近代集合住宅の原型となったテルテン集合住宅など、デッサウは世界遺産の宝庫。各施設を巡回するバウハウスバスでまわるのがおすすめです。
※デッサウのバウハウス財団に所属する建築物の撮影・掲載は有料・許可制なのでご注意ください。
ドイツ・バウハウスの町3 ベルリン
1933年、バウハウスはベルリンに移転し、翌年にはナチスの圧力により閉校してしまいました。ですがベルリンには、ぜひ見ておきたいモダニズム建築がたくさん。ミース・ファン・デル・ローエ設計のナショナルギャラリーやシャウロン設計のフィルハーモニー、コルビジェによるユニテ・ダビダシオンのほか、2008年に「ベルリンのモダニズム集合住宅群」として世界遺産に登録されたブルーノ・タウらが手掛けた6か所の集合団地は、建築ファンなら必見です。世界最大のバウハウス関連資料を収集する「バウハウス資料館 Bauhaus-Archiv」は、グロピウス設計の建物の隣に新館を増築中のため現在閉鎖していますが、別の場所に臨時のギャラリーがオープン。併設のショップはセンスのいいグッズが充実していてお土産にもおすすめです。
■Bauhaus-Archiv
(臨時ギャラリー)
住所:Knesebeckstr. 1 Berlin
営業時間:月~土10:00~18:00
入場無料
建築やデザインというと専門的でわかりにくいイメージがあるかもしれませんが、じつはもっと身近なもので、知れば知るほど興味深いバウハウス。ぜひその軌跡をめぐってスピリットを肌で感じてみてください!
取材協力:ドイツ観光局
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