アドバイス1 一人で悩まずに、ご主人と一緒に今後のお金の使い方を相談して
ゆうこさん。つらいですね、苦しいですね、悲しいですね。今回、マネープランクリニックに相談してくれて、ありがとうございます。よくご応募くださいました。もう、大丈夫ですよ。安心してください。お金の苦しみから、ゆうこさんを解放しましょうね。ここからのアドバイスは、ぜひ、ご主人と一緒に読んでください。ご主人が節約に協力してくれるとはいえ一人で悩まれていること、ご主人はご存知ですか? ご夫婦で築いてきた資産を、今後どのように使っていくのかは、二人で考えていってほしいと思います。
現在、7000万円を超える金融資産をお持ちです。これだけの資産を残すことができたのは、ご夫婦で助け合って暮らしてきたからこそです。無駄遣いもせず、ぜいたくもせず、堅実な生活を送られてきたのでしょう。その大事な資産が目減りしていくことに、悲しみが伴うのは、これまでのご苦労に思いを馳せてしまうからなのかもしれませんね。
でも、お金を貯めるのは、何か目的があって使う必要があるから、みなさん一生懸命お金を貯められるわけです。ゆうこさんの場合は、お金を使う必要な時が、まさに「今」と「これから」なのです。お金を使うことに罪悪感のようなものをお持ちのようですが、自分たちで貯めてきたお金を、自分たちのために使うのは、罪でもなんでもありません。どうか、資産を取り崩すことを悪いことだと思わないでください。
ご主人と一緒に、これからのお金との付き合い方を変えられるよう、専門医にもご相談しつつ、生活の質を高めていってください。専門医にもできれば、ご主人と一緒に行かれるといいですね。
アドバイス2 節約の必要はなし。今の生活+月5万円でも資産は一生ゼロにならない
とはいえ、もっと節約しなければ、という思いを簡単に断ち切るのは難しいのかもしれません。でも、ゆうこさんは、これ以上節約する必要がないどころか、もう少しお金を使っても大丈夫なのです。仮に、今現在の支出に加えて、毎月5万円多く使ったとします。年間で60万円です。ご主人が65歳になるまでの3年間で、貯蓄からの取り崩しは180万円です。現在、7732万円ありますから、3年後に残るのは、約7550万円。
その後、ご主人が65歳からは毎月12万円の赤字になるとおっしゃっていますが、毎月15万円の赤字であっても年間で180万円です。実際には、65歳からご主人の年金15万円とご主人がアルバイトなどで月5万円程度の収入を得て、年間で210万円程度の収入があれば、支出は現在の25万円に5万円を追加し30万円としても年間で360万円。差し引き150万円ぐらいの不足となります。年間150万円を貯蓄から取り崩して70歳までに900万円が資産から減っても、まだ6650万円も残っています。
ご主人が70歳からは年金のみの暮らしになるとすれば、年間で210万円程度不足することになりますが、これで資産がゼロになるのは、何年後だと思いますか? 31年後です。ご主人が101歳、ゆうこさんが95歳です。
現在は、ご主人の単身赴任にかかる費用がかかっていますが、65歳からはそれもなくなり、実際の支出は少なくなるわけですから、資産の減り具合は、これよりももっと緩やかになるでしょう。つまり、現状の生活費にあと5万円上乗せして使っても、ご夫婦二人で一生困らないだけの金融資産がある、ということです。また、試算に加えていない家という資産もあることを忘れてはなりません。遠い将来のことですが、相続が発生し相続人がいなければ家という資産は国庫に納めることになるのです。国庫に納めるくらいなら、最終的には家という資産も自分たちのために活用できるはずです。
アドバイス3 年金の不足分を資産から取り崩すのは当たり前のこと。ご主人との老後を楽しんで
ゆうこさん。安心してください。経済的に困ることは、まったくありません。だから、過剰な節約で体を壊したり、ケガをしたり、睡眠時間を減らしたりしないでください。お金のことで体調を崩すなんて本末転倒です。食費をあと1万円どころか、2万円でも3万円でも増やして、好きなものを召し上がってください。気分転換に外食をされてもいいのではないですか? 食物アレルギー対応をしているレストランも増えていますよ。最後に、経済的なことではなく、ゆうこさんとご主人の心のゆとりのために、アドバイスできるとしたら、ゆうこさんがご主人の単身赴任先に行かれ、一緒にお住まいになるか、場合によっては、ご主人はすぐに退職して、ゆうこさんと一緒に暮らすということもお考えになってみてください。経済的には問題ありませんが、退職される場合は、ご主人は少しだけでもアルバイトなどされるといいと思います。
まだまだ長く続く人生です。お二人でこれからどう過ごされるのか、どんな楽しみを見つけていくのか、ゆっくりお話をされてみてください。年金生活になれば、だれもが基本生活費の不足分を貯蓄から取り崩し、さらに、旅行や趣味などのためにお金を使っているのです。このまま、お金が減ることだけに心を奪われてしまう生活は、あまりにも切ないです。使い切れず残ったお金は、最終的に、国庫に没収されてしまうのですよ。
どうか、お金を憎まず、上手に付き合って、心穏やかで健康的な生活を送られるようになることを、心から願っています。
相談者「ゆうこ」さんから寄せられた感想
感謝の気持ちでいっぱいです。実は、最悪、年金生活で毎月15万円の赤字になるのではと内心思っておりまして、その不安を見事に見抜き、論理的に解消していただけたのには驚くとともに先生の慧眼に感服して頭が下がる思いです。何度も繰り返しアドバイスを読ませていただき、心温まるお言葉に涙が出ました。確かに主人とは、単身赴任で激務ということもあり、コミュニケーションが不足していたと思います。今後はいただいたアドバイスとお言葉を胸に、心身の健康に気を付けて二人で人生を過ごしてまいります。この出会いに感謝いたします。最後に月並みではありますが、深野先生、All About様の益々の御健康と御発展をお祈りいたします。ありがとうございました。★「お金の悩みを解決!!マネープランクリニック」の過去記事はコチラへ
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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/伊藤加奈子
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