定年退職といえば大きなイベント。区切りの良いタイミングということもあり、「退職金も受け取ったことだし、そろそろ資産運用を始めようかな」「そろそろ定年も近いし、資産運用のことも考えないとな」と、資産運用を始める方も多いようです。
 

失敗する人が多い!? 株式投資の落とし穴

特に、個人投資家に人気なのが株式投資です。おそらく、FXなどとは違って仕組みがシンプルで、とっつきやすいのでしょう。最近は、「人生100年時代」や「老後不安」といった煽りを受けて、株式投資を始めるケースもあるようです。
 
とはいえ、投資を学んでいきなり「安定収入が得られる」ほど、現実は甘くありません。経済学者のブラッド・バーバーとテランス・オーディーンらの研究(1)によると、個人投資家の多くは「投資が下手だ!」というデータが得られています。
 
分散投資資金管理の基本さえ抑えていれば、「大損」することは滅多にありません。とはいえ、この業界は怪しげな教材や投資先を薦めるビジネスも多いです。そのせいで、騙されて失敗する人や、間違った投資法で失敗する方も多いようです。手堅く、インデックス投資をやっていれば、話は別なのですが……。
 
中でも深刻なのが、退職直前ないし退職後に、「なけなしの財産を失ってしまった」というケースです。今回は、このような深刻な状況に陥っている方が取れる、ベストなリカバリー方法を解説します。
 
大きな損失を出してしまった場合、どうリカバリーする?

大きな損失を出してしまった場合のリカバリー方法とは

 

1.思考をリセットする

いきなり辛口な言い方をすると、「無くなると困る財産を株式投資に回している」という時点でリスクの取りすぎ、大間違いです。損をした方はまず、リスクを取りすぎることの危険をしっかりと理解しましょう。
 
また、難しいとは思いますが「損を取り戻すために投資をする」という考え方は捨て去りましょう。「取り返すことのできないお金を取り返せると錯覚してしまう」心理のことを、心理学用語でサンクコスト効果(埋没費用効果)と言います。
 
損をした人がまず陥る心理が、「損を認められない」「なんとかして取り返したい」という心理です。ですが、株式投資でお金を取り戻すには、リスクを取らなければなりません。再び失敗すれば、さらに傷口を深くえぐることになります。
 
だから、まずは思考をリセットし、失ったお金は取り返せないことを理解することが大切です。そのうえで、「今日から新たに投資を始めるとして、ベストな運用方法は何だろうか?」と考えるようにしましょう。
 

2.家族に打ち明ける

家族がいる場合は、損をしたことを家族に打ち明けましょう。悪いニュースほど、早く伝えるべきです。仮に家族が、あなたの口からではなく、その他のきっかけで、投資の損を知ったとしましょう。そのとき、家族はどう感じるでしょうか。おそらく、憤りを感じるはずです。
 
悪いニュースを家族に伝えるのは、気持ちが進まないものです。僕自身、株で損をしたときには、妻に損をしたことを伝えます。何度やっても、辛い気持ちはなくならないものです。
 
ですが、自分の口から事実を伝えなければ、家族からの信頼を全て失うことになるでしょう。お金を失うこと以上に、人間関係を失うことの方が問題です(2)。それだけは避けなければなりません。
 

3.不良債権(ボロ株)を処分する

次に行うべきは、不良債権(ボロ株)の処分です。株式市場に、魅力的な株はそう多くありません。逆に、割高でひどい株はたくさんあります。僕らが「良かれと思って買った株」も、とんだボロ株であることがよくあります。
 
僕がよく使うテクニックの1つに、「今日から株式投資を始めるとして、この株を今から買おうと思うか?」と自問自答するというものがあります。この質問をすることで、サンクコスト効果の影響を避けることができます。
 
この質問に対して「買いたくない」と感じた株は、売るべきです。仮にこのような株に投資をしていた場合は、できるだけ早く処分した方がよいでしょう。
 

4.魅力的な投資先を見つけ直す

株式投資で損をすると、「何に投資をすればよいのか、もうわからなくなりました」のように、何も信じられなくなってしまう方もいるようです。
 
そのような場合は、新たな投資先を見つけ直す作業が必要です。自分の腕に自信が持てるまでは、「インデックス型の投資信託」に積立投資をするのが無難でしょう。ここに投資するだけでも、並大抵のプロよりも良い成績を出せるはずです。
 

5.資産配分を再調整(リバランス)する

上記2点にも増して重要なのは、資産配分の再調整(リバランス)です。金融情報誌である「ファイナンシャル・アナリスツ・ジャーナル」に掲載された論文(3)によると、「(年金運用において)投資成績の8~9割は資産配分で決まった」ことが確認されました。
 
ここでの資産配分とは、資産のうち「株式」と「債券(現金)」への配分のことです。株式への比重が高まるほど、好景気に強くなります。一方、債券(現金)への比重が高まるほど、不景気に強くなります。
 
「株でなけなしのお金を失った!」という方は、株式への比重が高過ぎます。この配分を続けていると、文字通り一文無しになってしまうかもしれません。そうならないためにも、債券(現金)の比率を高めて、期待を裏切られた場合への準備もしておいた方がよいでしょう。
 

6.過去を清算しよう

大事なお金を失うと、「何としても取り戻したい!」と感じるもの。しかし、資産運用において、「損を取り戻したい」という気持ちは、大きなミスにつながります。
 
僕らにできることは、過去の損を認めること。そして、「今できるベストはなにか?」を突き詰めること。これだけです。
 
クヨクヨ後悔しても人生は前に進みません。真正面から事実を受け止め、未来に向けて一歩を踏み出しましょう。
 
 
【参考文献】
 
  1. ハンドブック:Brad M. Barber and Terrance Odean, 2013, "Handbook of the Economics of Finance", 2(B), pp. 1533-1570
  2. 動画:ロバート・ウォールディンガー, 2015, "人生を幸せにするのは何?最も長期に渡る幸福の研究から", TEDxBeaconStreet
  3. 論文:Gary P. Brinson, L. Randolph Hood, and Gilbert L. Beebower, 1986, "Determinants of Portfolio Performance", Financial Analysts Journal, 42(4), pp. 39-44

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