国の表向きな姿勢と現実
「働き方改革」の一環として、国は「労働者のキャリア形成を支援する」などとして、副業を後押しする姿勢を打ち出しています。また、これまでの企業に示す就業規則のひな型では、原則として副業を認めていませんでしたが、2018年1月の改正によって、原則容認というように180度転換し、副業を促すガイドラインも作られました。しかし、実際のところは、従来の大企業に就「社」さえできれば安泰といった終身雇用制度を否定し、自分のスキルは自分で磨き、「複」業できるほど複数の企業から声がかかるか否かは、自己責任といった色合いが濃くなったともいえます。
これは、従来の義務教育がいわゆる「右向け右」的な「優秀=従順」な労働者を育成し、実際は就職ではなく、就「社」であったという終身雇用制度や年齢給といったシステムが機能しなくなったことが背景にあるといえます。
二極化が激しくなる
従来は、就「社」さえできれば、適正に応じて、様々な部署の職が与えられ、我慢できる忍耐があれば、将来の収入に対する不安は少なかったともいえます。しかし、今後は、特殊技能がある人にとっては自己の経験や知識を活かし、「複」業することで、仮に、本業の労働時間が減ったことにより、賞与がカットされたり残業手当がなかったりしたとしても、総所得金額としては、増えているということになるでしょう。一方、副業解禁になったものの、AI(人工知能)に仕事がおびやかされ、特殊技能による「複」業ができず、ただただ、いわゆる「時間の切り売り」をするような一時的なバイトによって、生計を維持しなければならない人々があふれるということが問題となります。
副業解禁によって、今まで以上に先行きが不透明な状況で、どのように住宅ローンを組んでいくべきなのでしょうか。
キーワードは、細く「一応は」長く
「細く」というのは、月々の返済を極力抑えるということです。つまり、賃貸住宅であれば、仮に収入が減った場合でも、たとえば、住まいの所在地を駅から遠くする、あるいは、築年数が古いものにするなどといったような対策で、賃料を減らすことは容易にできます。一方、所有物件については、住宅ローンの返済が苦しくなったというような場合でも、すぐに住み替えるというのは、難しいというのが実際のところです。したがって、あらかじめ返済を抑えておくというのが、ポイントとなります。
次に、「一応は長く」とは、どういうことでしょうか。
もちろん、総返済額だけを考えれば、返済期間についても極力短くするということが重要といえます。しかし、一度短い期間で設定しておいて、後から長く延ばすといったいわゆるリスケについては、金融機関に応じてもらえないといったリスクもあります。
そのため、繰り上げ返済することを前提として、まずは、長期で借りておいて、返済後、計画的に繰り上げ返済することで、結果的に、返済期間を短くすることが理想です。やはり、先行き不透明な時代では、高額の住宅ローン、長期の住宅ローンを避けるということが、重要なポイントとなります。
オプションとしての対策
最悪の最悪に備えて、万一、リストラなどにあった場合のリスク回避として、失業保障付き住宅ローンも特約料とのバランスに注意しながら、選択肢に加えてみましょう。たとえば、楽天銀行の失業保障付き住宅ローンでは、リストラなどで失業した場合、再就職まで最長6カ月間の返済が保障されます。そして、この保障を受けるためには、借入金額100万円当たり800円(年間)の特約料となるため、3,000万円の借入の場合であれば、800円×30=24,000円(年間)となることも、参考にしていただければと思います。
まとめ
これからは、一人ひとりが、経営者マインドを持って、会社に所属するにしても、会社に所属しない働き方を選択するにしても、学び続け、自己のスキルを磨くことによって、自己の商品価値を高めていかなければならない時代に突入することになります。そのような意味においても、住宅購入を検討することによって、働き方や生き方について、考えてみてもよいのではないでしょうか 。
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