E3で発表されなかったこと
ニンテンドー3DSやPSVitaはどうなっていくのでしょうか?
というのは、携帯型ゲーム専用機についてです。そう、PlayStation4(以下PS4)、ニンテンドースイッチ、Xbox Oneなど、据え置きゲーム機のコンテンツについては大いに盛り上がったのですが、携帯ゲーム機関連コンテンツはあまり情報がありませんでした。
なんで携帯ゲーム機の情報が無いのか。携帯ゲーム機市場というものがなくなりつつある…というか、より正確なニュアンスで言うのであれば、溶けだしつつあるからです。溶けだしつつあるとはどういうことか、お話してみたいと思います。
SIEは携帯ゲーム機から撤退?
E3を前に、収束の情報が流れていたPSVita
基本的に、ゲーム機の生産終了などの告知というのは、後継機の発表前に行われません。後継機が発表され、2つのハードが同時期に売られる期間があり、そして前世代機がフェードアウトしていくというのが、多くあるパターンです。そうしなければ、生産終了するというニュースが、ユーザーのもつゲームハードへの興味を大きく失わせてしまうからです。
逆に言うと、E3発表前からこういったニュースが流れ、E3でも後継機が発表されないということは、SIEが携帯型ゲーム専用機から撤退する、という選択を色濃く表現しているように感じられます。SIEはPS4が世界的に好調であり、据え置きゲーム機市場にリソースを集中していく形になっていく模様です。
ニンテンドー3DSの後継機は発表されず
3DSが発売されてから、もうずいぶん経つのです
プラットフォームホルダーである任天堂は、E3の発表の大半をニンテンドースイッチに集中させ、ニンテンドー3DSの話題はほとんど出てきませんでした。任天堂が発信した最も大きな発表は、2018年12月8日に発売される「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」に関するものです。大乱闘スマッシュブラザーズシリーズの前作は、Wii Uとニンテンドー3DSの2機種同時展開でしたが、今回はニンテンドースイッチのみという形を選んでいます。
ニンテンドー3DSに関しては、任天堂はニンテンドースイッチと並行して今後も販売を続けていくとしていますが、実際の扱いはかなり小さくなっています。そして繰り返しになりますが、後継機の発表はないのです。
ニンテンドースイッチにポケモン投入
ポケットモンスター Let's GO! ピカチュウ・Let's GO! イーブイは、ポケモンGOで捕まえたポケモンを送れるようです
1つは、2台目セットの登場です。2018年5月23日、任天堂は自身が展開するWeb上の店舗である「マイニンテンドーストア」にて「Nintendo Switch 2台目用セット」の販売を開始しました。すでにニンテンドースイッチを購入した人むけの製品で、本来は本体に付属しているドックやJoy-Conグリップ、ACアダプター、HDMIケーブルなどが入っていない代わりに、価格も通常税込み32,378円のところを26,978円で販売する、というものです。
もう1つは、株式会社ポケモンが2018年5月30日に発表したポケットモンスターシリーズ最新作「ポケットモンスター Let’s GO! ピカチュウ・Let’s GO! イーブイ」でしょう。1998年にゲームボーイ用タイトルとして発売した「ポケットモンスター ピカチュウ」をベースとし、Joy-Conを振ることでボールを投げるなど、遊び方を一新。スマートフォンアプリ「ポケモンGOとの連動」も発表されています。さらに、2019年には「ポケットモンスター X・Y」や、「ポケットモンスター サン・ムーン」の流れの中にある本編新作もニンテンドースイッチに投入することが明言されています。
溶けていく携帯ゲーム機市場
外でゲームを遊ぶだけの為の機械は無くなって、別の形に置き換わっていくのかもしれません(イラスト 橋本モチチ)
SIEのPSVitaは終焉を迎え、ニンテンドー3DSの市場はニンテンドースイッチに吸収され、どうやらコンシューマーゲームハード市場は、PS4とXbox Oneのハイエンド市場と、ニンテンドースイッチという据え置きゲーム機と携帯ゲーム機の融合型に分かれていく様相を呈している、というのが現状のようです。
さて、携帯ゲーム機市場のこれまでと今後についてお話してきましたが、ここで最後にもう1つ、別の視点も入れておきたいと思います。日本ではXbox Oneがほとんど売れていないことから、あまり注目されないのですが、2018年のE3で、マイクロソフト(以下)MSは非常に興味深い発表を行っていました。それは、ストリーミングゲームについての発表です。
ストリーミングゲームサービス、あるいはクラウドゲーミングなどとも呼ばれますが、ゲームのプログラミング処理をユーザーが持つゲーム機やPCなどで行わず、プレイヤーの操作した情報をネットワーク上のサーバーに送信して処理を行い、その結果として映像を表現しプレイヤー側のモニターに表示する手法で、これがうまくいけばプレイヤー側の端末の性能が低くてもパワフルなゲームが遊べるようになると言います。このサービスはSIEがいち早く挑戦し、PlayStationNowというサービスを実現していますが、通信状態によってゲームが安定しなかったり、ラインナップに大型タイトルが少なかったりといった問題もあり、メインストリームにはなっていません。ここに、マイクロソフトが参入してくる、というわけです。
PSNowは現状、PCかPS4でしか遊べませんが、マイクロソフトはXbox OneやPCだけでなく、スマートフォンなどの端末でも遊べるようにすることを目指しているようです。まだ具体的なサービスは全く見えてきていないものの、マイクロソフトが目指すように、スマートフォンでも遊べるようなストリーミングゲームサービスが実現すれば、それがゲーム業界のスタンダードとなる日がもし来たら、据え置きゲーム機市場とか、携帯ゲーム機市場という概念自体が意味をなさなくなるかもしれません。携帯型ゲーム専用機の市場は、新しい形のゲームハード、サービスへと溶け出していく、そのように言えるのかもしれません。
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