労務管理/雇用側の労務知識

雇用契約書とは? 入社前に確認したい内容はココ!

雇用契約書は働くときに必ず締結します。給与額だけで署名するのではなく、他にも重要なポイントがいっぱい。働き始めてから困らないよう、しっかり内容を理解したうえで署名しましょう。入社前に確認すべきチェックポイントを解説します。

小西 道代

執筆者:小西 道代

労務管理ガイド

雇用契約書とは? 内容をしっかり理解しよう!

雇用契約書を入社前にしっかり確認

雇用契約書を入社前にしっかり確認


会社に採用されたとき、最初に出てくる書類が「雇用契約書」です。

小さな文字でびっしりと書いてありますが、署名した以上は「契約」としての効力が発生してしまいます。働き始めてから「聞いていなかった!」とならないよう、署名する前に、しっかりと内容を理解しておきましょう。

「雇用契約書」「労働契約書」「労働条件通知書」の確認すべき場所

労働基準法では、会社(使用者)が労働者に対して「労働条件を書面で通知」することを定めています。会社は、給与額や就業時間などの労働条件を書面に記載して労働者に渡しさえすれば、法律上の義務を果たしたことになります。

つまり、双方が署名・捺印をする「契約書」の形態までは法律では求められていません。しかし、あとになって「聞いた」「聞いていない」のトラブルが発生しないよう、「契約書」とする会社が多いのです。

この書面の名称は「雇用契約書」「労働契約書」「労働条件通知書」など企業によって異なりますが、内容と確認すべきポイントは同じです。
 

「雇用契約書」に記載する内容は、法律で決まっている

労働基準法では、労働者に通知すべき項目が定められています。

給与額・給与の締め・支払日、就業時間、休憩、休日、休暇などで、、会社で働くにあたって最低限確認しておかなければいけない約束ごとが網羅されています。

会社と労働者が署名・押印する「契約書」である以上、記載された内容は、双方が厳守しなければなりません。働く上での権利と義務を理解しておけば無用なトラブルに巻き込まれないだけでなく、働き方を自主的に選択することができます。
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雇用契約書のチェックポイント

 

チェックポイント1:雇用期間

雇用契約の期間で「期間の定めなし」と記載されていれば、自己都合で自ら退職するか、会社から解雇を申し渡されない限り、働き続けることができます。

その場合は、「試用期間」という文字がないかを確認してみてください。正社員などの雇用形態では、労働者の適性や能力を確認するための「お試し期間」として、「試用期間」を定めていることがあります。2~3ヶ月程度の期間が一般的ですが、「試用期間」に限り給与を低く設定している例あります。「試用期間」限定の待遇がないかも確認しておきましょう。

注意が必要なのは、「期間の定めなし」として募集しておきながら、「試用期間」と称する有期雇用契約を締結する場合です。有期雇用契約とは、3ヶ月や1年の期間を限定した雇用契約です。雇用契約の期間を「平成〇年〇月〇日~〇月〇日」と限定することで、契約期間終了をもって退職となることがあります。

口頭で「ここは試用期間です」と説明があったとしても、期間を限定した雇用契約書に署名をしてしまうと、契約期間の終了と同時にその職場で働けなくなる可能性があります。事前に雇用期間の説明なしにそのような契約書が出されたら、職業安定法違反です。会社に説明を求めても納得できなければ、ハローワークへ相談しましょう。
 

有有期雇用契約のときは、契約更新の可能性を確認

最初から有期雇用契約として求人し、採用される場合には、
  • 契約期間が終了した後に契約更新があるかどうかの「更新の有無」
  • 更新するときの判断基準である「更新の基準」
を雇用契約書に記載しなければなりません。

「更新の有無」欄に「更新しない」と記載されていれば、署名した雇用契約書の契約期間が終了したときに退職となります。「更新することがある」「更新あり得る」などの記載が一般的ですが、そのときは、人事の担当者に「実際にはどれぐらいの方が更新されていますか?」と聞いてみましょう。
 

チェックポイント2:勤務場所・仕事の内容

「就業の場所及び従事すべき業務」欄には、入社後、最初の配属先と仕事の内容が記載されています。その下に「業務の都合により、就業場所及び業務内容の変更を命じることがある」との一文があるときは、注意が必要です。

正社員であれば、全国転勤や配置換えなどが頻繁に行われ、労働者は断ることができないのが一般的です。しかし、短時間勤務のアルバイトやパートタイマーの場合は、職場・職種を限定して雇用されることが多く、この一文が入っていたとしても、実際に変更される例は少ないようです。

「実際に変更となった方はいますか?」
「変更がある場合は、事前に教えてもらえますか?」
と聞いて、実態を確認しておくと安心です。
 

チェックポイント3:勤務時間等・休日

就業時間に「会社カレンダーによる」「シフト制」等とある場合、出勤日・時間はいつ決まるのでしょうか?

「9時から18時」「土日休み」等、勤務体系が固定された職場は分かりやすいのですが、店舗勤務や24時間を3交代で勤務する職場の場合、「会社カレンダーによる」「シフト制」とだけ記載されていることがあります。

このようなときは、「シフト表はいつ発表されますか?」「早番、遅番などの勤務パターンはありますか?」と確認しましょう。1ヶ月分のシフト表が前日に発表されたり、いったん発表されたシフト表が頻繁に変更されることもあります。
 

フレックスタイム等の「変形労働時間制」……残業代の計算方法

会社は「1日8時間、1週40時間」を超えて働かせたとき、割増手当を支払わなければなりません。この原則の例外となるのが「変形労働時間制」です。

雇用契約書には、「フレックスタイム制」「1ヶ月単位の変形労働時間制」「1年単位の変形労働時間制」などの文言が入ります。割増手当の計算方法や休日の設定等が原則と変わりますので、理解できるまで、しっかりと説明してもらいましょう。

雇用契約書に記載がないのに、「うちは変形労働時間制だからね」と口頭で言われることがありますが、雇用契約書に記載せずに変形労働時間制を適用することは違法です。

「変形労働時間制」の文言がない雇用契約書であれば、割増手当の計算は原則通りとなります。また、アルバイトやパートタイマー等で1日の労働時間を8時間未満で契約しているときは、変形労働時間制を正しく適用することができません。この場合も、割増手当の計算方法は原則通りとなります。
 

チェックポイント4:所定外労働・休暇・賃金

基本給とは別の手当として、「定額残業手当」「固定残業手当」「みなし残業代」等の文言があれば、要注意です。名称は会社によって様々ですが、これは一定時間分の時間外労働割増手当(残業代)が含まれた手当のことです。

「基本給には時間外手当を含む」「〇〇手当は割増賃金相当分」との文言があって、具体的な時間数が記載されていないときは「含まれているのは何時間分ですか?」と聞いてみましょう。

時間外労働をした場合でも、その時間数までの割増手当は基本給に含まれることになります。20~45時間分の残業代を含むとした設定が一般的ですが、設定時間が長くなればなるほど、時間外労働が多い職場といえます。「1ヶ月の残業時間は平均して何時間ぐらいですか?」と確認しておきましょう。

「休暇」欄には、年次有給休暇に関することが記載されています。入社日から6ヶ月後に10日が付与されますが、「アルバイトに有給休暇はない」と誤解していませんか? 働く時間が短くても、働く日数が少なくても、週または年間の労働日数に応じた日数が付与されます。
 

チェックポイント5:退職に関する事項

定年の年齢や自己都合退職のときの手続きが記載されています。有期雇用契約の場合は、契約更新がされない以上、雇用契約期間が満了することで退職となります。

解雇に関する事項もここに記載されますが、会社が労働者を解雇するには、「どんな場合に解雇となるのか」を就業規則に定め、その内容に該当したときに限り、解雇できます。そのため、この欄には「就業規則第〇条~〇条による」との記載が一般的です。

雇用契約書の裏面などに「就業規則抜粋」として、ずら~っと解雇事由を記載している事例もありますが、こうした場合は服務規律に厳しい会社と言えるかもしれません。

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