花粉症を引き起こすさまざまな要因
花粉症はアレルギー反応の一つ。くしゃみや鼻水などがつらくて運動不足におちいりがち
スギやヒノキなどの花粉が体内に侵入すると、花粉を異物とみなして何とか身体の外に出そうとする反応として、くしゃみ・鼻水などを始めとした様々な症状が起こります。アレルギー反応には個人差があり、人によって反応する人、しない人がいますが、現在では日本人の約4人に1人が花粉症であるという研究報告もあります※。
花粉症は花粉がアレルゲンとなって起こります。正常な免疫機能を保って症状を悪化させないためには、一般的なことですが、十分な睡眠をとり、規則正しい生活習慣を送ることが大切です。
身体の抵抗力をあげる運動の効果
運動すると身体が温まり、花粉症の症状をやわらげることが期待できる
■身体を温める効果
普段の生活で活動量が減ってしまうと、熱を産生する筋肉を使わなくなってしまうので体温が低下します。身体の抵抗力を高める働きをもつ免疫細胞は、平熱時に比べて低体温状態で過ごしているとその働きが低下し、花粉症などのアレルギー反応を引き起こしやすくなることが懸念されます。デスクワークや車を使った移動が多い等、あまり歩くことがない人ほどより身体を動かし、活動量を増やすようにすることが大切です。
■筋肉を使うことで基礎代謝を上げる効果
運動を行うと筋肉が伸び縮みを繰り返し、身体の中から熱を生み出して基礎代謝が高まります。基礎代謝量がアップすると血液循環がよくなって身体が温まることはもちろん、エネルギーを生み出す際に出る余分な水分を体外に排出する働きが高まります。鼻水や鼻づまりなどの症状をやわらげ、鼻やのどの粘膜を乾燥から守ることで花粉による刺激を軽減させることが期待できます。
■運動によるストレス解消効果
精神的なストレスは筋肉を緊張させて血流を悪くしてしまい、鼻やのどの粘膜を乾燥させます。粘膜が乾燥した状態では異物を排除することが難しく、粘膜内に花粉やウイルスが侵入しやすくなり、花粉症を引き起こしたり、インフルエンザなどの感染症にかかりやすくなったりします。運動をすると精神を安定させるセロトニンというホルモンが多く分泌されるため、身体を動かすと気分がスッキリし、ストレス解消に役立ちます。
■生活リズムを整える
睡眠不足を始めとする生活リズムの乱れは、身体の免疫力を低下させますが、日中に適度に身体を動かすことは、自然な入眠を促しやすくなります。規則正しい生活を送るためにも運動は生活の一部として取り入れることが大切です。
花粉症シーズンの運動のコツ……まずは簡単なものから
自律神経を整えるためのヨガやストレッチなど、室内でできるものから始めてみよう
■室内で出来るストレッチ・トレーニング・ラジオ体操
今まであまり運動習慣がないという方は比較的運動強度の低いものから少しずつ始めてみるようにしましょう。室内でできるストレッチはテレビを見ながら行うことがオススメ。ストレッチや呼吸法を意識したヨガなどは乱れた自律神経を整え、身体の柔軟性を高めることで身体全体の血流を改善させます。忙しい時間の合間にこまめに取り入れてみましょう。
またストレッチに慣れてきた人は、筋肉により大きな負荷がかかるトレーニングを行ってみましょう。室内の段差や階段などを使った踏み台昇降運動や、その場で行うスクワット、ぽっこりお腹解消を兼ねての腹筋運動など取り組みやすいものから始めてみるといいですね。筋肉を鍛えることは基礎代謝量のアップにつながります。翌日以降に筋肉痛が出る場合は2~3日間隔をあけて行うようにします。
運動不足解消のみならず、規則正しい生活リズムをつくるという点で優れているのがラジオ体操です。朝の時間にあわせて短い時間で全身運動を行うことができ、目覚めもスッキリした状態で一日を始めることができます。身体全体のストレッチとトレーニングを兼ねたエクササイズが盛り込まれているので、ラジオ体操を習慣にするだけでも日々の活動量は大きく変化すると思います。
■屋外で運動をするときは時間帯を考慮する
室内でできる運動のみならず、屋外でも積極的に身体を動かしたい場合は時間帯を考慮すると続けやすいと思います。特にスギ花粉は、午後からの乾燥した風とともに飛散しやすいため、花粉がまだ飛び回っていない早朝から午前中にかけて行うとよいでしょう。花粉の飛散量などを考慮し、風が強くない日を選んでウオーキングやジョギングなど、体力レベルにあったものを行うようにすると、運動効果によって身体が温まり、鼻づまりなどの症状軽減が期待できます。
寒いから、花粉がつらいからといって身体を動かさない状態が続いてしまうと、身体の免疫力は低下しやすく、さらに症状が悪化することにもなりかねません。運動効果を最大限に活かすためにも、ぜひ出来ることから身体を動かすようにしてみましょう。
<参考>
※ 馬場廣太郎ほか 鼻アレルギーの全国疫学調査2008(1998年との比較) ― 耳鼻咽喉科医およびその家族を対象として ― Prog. Med. 28:2001-2012,2008
・花粉症特集(厚生労働省)