定年後も安泰な公務員?現役時代の資産形成に関心が薄い人も
先日、公務員の友人と食事をしました。確定拠出年金の制度が見直されて1年。以前は確定拠出年金に加入できなかった公務員も、昨年1月からはiDeCoに加入できるようになりました。当然、関心があるだろうと思い、「iDeCo、加入した?」と質問してみたところ、返ってきた答えは、
「ん?なにそれ?」
公務員も大勢いますから、私の友人1人がiDeCoについて知らなかったからといって、他の人も知らないとは限りません。ただ、あまりにも関心がなさそうだったので、逆に興味が出てきて、さらに聞いてみました。
「老後のお金の心配はないの?」
そうしたら、まったく心配していないとのこと。
「そんなに貯蓄できたの?」
追い打ちをかけるように、突っ込んでしまいました。
「う~ん、子供が3人いるから教育費がかさむし、マンションも分譲を買ったし、老後のお金といっても、そんなに貯蓄できているわけではないよ」。
貯蓄できていないのに、なぜこうも余裕なのでしょう。彼は今52歳。定年まであと8年です。
「公務員の定年って、今は60歳だけど、2019年度から段階的に引き上げられて、俺が定年になる頃には65歳になっているでしょ。で、65歳になってからも希望すれば嘱託とかで働けるし。働いている限りは給料が入ってくるから、老後のお金は心配しなくてもいいんだよ」。
「なるほど。やっぱり公務員って恵まれているんだね」と納得してしまいそうになったのですが、ちょっと待て。それはあなたが働き続けられれば、という前提条件の話じゃないの?
いつまでも健康で働けるとは限らない
確かに、働き続けることができれば、収入は得られます。いずれ、公的年金の支給開始年齢は、有無を言わさず70歳に引き上げられるでしょう。健康に70歳まで働ける環境があれば、それはとても強いわけですが、問題は健康に支障を来して、働けなくなるケースも想定されることです。ちなみに生涯に費やす医療費のうち、半分は70歳未満で、残りの50%は70歳以降で消費するという統計が、厚生労働省から出されています。誰もが70歳以降の人生の方が短いわけですから、70歳未満までの医療費とほぼ同じということは、それだけ70歳以降は、誰もが病気がちになることを意味しています。
したがって、「65歳以降も働けるから、老後のお金は心配しなくても良い」というのは、間違った考え方なのです。健康に支障を来し、働けなくなったとしても、安心して生活できるだけのお金を作る必要があります。
公務員がiDeCoに加入した時の掛金上限額は、月額1万2000円です。52歳から積立を始め、年3%で運用できたとしても、60歳で積立期間が終了した時にできるお金は約130万円。正直、大した金額ではありませんが、それでもゼロよりはマシです。20代、30代の若い公務員の方なら、さらに大きく資産を増やせます。
「できれば70歳まで働きたい」というのは、誰しも思うことです。が、病気などでそれが叶わなくなるリスクもありますから、そのリスクを想定して、貯められるうちにできるだけ老後のお金を作っておくのが肝要です。