メンタルヘルス

うつ病、統合失調症などの心の病気、初期症状で見られる「話し方」の変化

【医師が解説】うつ病や統合失調症、躁状態など、心の病気や不調を抱えているとき、話し方が変化することは珍しくありません。話すスピードが異常に速い、返答が遅い、表情がないといった、心の病気の初期症状や心の不調時によくみられるしゃべり方や会話の際の異変の特徴についてわかりやすく解説します。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

しゃべり方がいつもと違う? 話し方と心の病気の初期症状・病気の状態

会話

心の不調や心の病気の前兆は、会話の際の違和感や問題にしばしば現れます

話し方が悪く、伝えたいことがうまく伝わらないといったことは、日常でもよくあることです。

しかし心の病気の初期症状として、話し方に異変が出てくることがあります。心の病気は、本人にしかその精神症状や精神体験がわからないため、話を聞かないことには、どんな問題を抱えているのか分かりません。精神症状を知るために、話の内容が重要なことはもちろんですが、「どのように話をするか」の「話し方」で、抱えている症状が見えることもあります。

今回は心の病気の基礎知識として、心の病気や心の不調がある場合の話し方や会話の特徴について、解説します。

<目次>  

話すスピードが異常に速くなった場合、論理的思考の低下や躁状態の可能性も

会話をする際、話す内容以上に話し方には気が向くものです。声の大きさ、小ささ、話し方の速さなどは人それぞれですが、普段と違う場合には注意が必要です。

例えば、話し方が速いというレベルではなく、あたかも機関銃のように次から次へと言葉が出てくるような場合です。普段からそのような話し方の人であれば、それも個性として済むことですが、その人の普段をよく知る人から見て、人が変わったかのような違和感を感じる場合は、精神医学的に問題性を考える必要があります。

話すスピードが上がるということは、見方を変えれば、話したいことが次から次へと頭に浮かんできている状態でもあります。頭の回転が通常よりもかなり上がっている状態ともいえるでしょう。頭の回転が速いのは結構なことですが、重要なのはそれらの話の内容が論理的につながっているかどうかです。もし話がわき道へ逸れ続けるような場合、論理的な思考能力の低下の可能性も考えるべきでしょう。あるいは一つのことに注意を向け続けるのが困難になっているのかもしれません。

話したいことが次から次へと頭に浮かぶような時は、一般に気分がハイになっていることが多いものです。何かしら大きな良い出来事があった後などは饒舌になる人が多いと思います。しかしそのような背景もない場合は、躁(そう)状態に近くなっている可能性も考えたいです。
 

返答があまりに遅すぎる場合、統合失調症など認知機能の問題も

相手との会話中、問いかけをすると返答が遅すぎるような場合も、注意が必要です。うっかり違うことを考えてしまったり、ぼんやりしたりすることは誰にでもあるものですが、精神医学的に問題になる場合もあります。

まずは、こちらの問いかけを相手がしっかり理解できていたのか確認する必要があります。認知機能の低下から、問いかけを理解できなくなっていたら問題です。とはいえ、これが認知症の症状だとは、あらかじめその可能性を意識していないと周りの人もなかなか気付きづらいかもしれません。

例えば統合失調症の場合も、その経過のある時点で、認知能力がかなり低下することがあります。そうした問題が現れるかどうか、現われた場合の深刻さにはかなりの個人差があります。統合失調症は10~20代の年齢での初発が多い疾患ですので、もしそうした問題が起こっても、周りの方はまさか認知機能の低下が起こっているとは思いにくいものです。しばしば、本人が周りに興味を失っているため、自分の問いかけにも答えない……といった誤解をしてしまいます。
 

会話中の表情や声の調子がいつもと違う場合、うつ病などの心の病気も

会話をする際は話の内容だけでなく、表情や声の調子からも内面がよく分かるものです。精神医学の用語では、声の調子や表情は「アフェクト(affect: 感情)」と呼ばれ、感情の内容やレベルが外面に現れたものと見ます。

真剣な話をしているとき、面白い話をしているとき、悲しい話をしているときで、表情や声の調子は自然に変わるでしょう。もちろん、感情が表情に出やすい人もいれば、ポーカーフェイスの人もいますが、いつもと違うアフェクトには、周りも違和感を覚えるものです。何の話をしていても声が単調で、まるで表情がないといった時は、アフェクトに問題がある時です。

多くの場合は一時的な問題ですが、アフェクトの問題が継続するような場合、そして以前の様子とは明らかに違うような時は、精神医学的に注意が必要な時です。

まずは、自分自身でその状態をコントロールできるのか、できなくなっているのかが問題です。

実際にアフェクトの問題が起こると、周りの人は「もっとにこやかに話せばいいのに」といった印象を持ちがちです。実際、その通りのこともあるでしょうが、場合によっては本人にはどうすることもできない問題になっていることがあります。特に脳内の何らかの問題が原因になっている場合、精神科的な対処が望ましいこともあります。周りの方は無用の誤解をしないためにも、そして事態を改善していくためにも、このことをぜひ知っておいていただきたいです。

以上、今回は会話を通じて分かる心の不調や心の病気に関わり得る問題を詳しく解説しました。一般にこうした問題がもし起きていれば、相手には分かりやすいものですが、自分ではなかなか気付きにくいものであることにもどうかご注意ください。
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