マネジメント

働き方改革関連法案…残業規制等の重要ポイント解説

政府は「働き方改革」を進めるにあたり、労働基準法の改正を検討しています。実際に改正されれば、働く人すべてに影響がありますが、特にメンバーの管理責任のあるマネジャーへの影響は甚大です。いざ改正されてから働き方を変えるのは大変!なので、今から先読みしてチームの働き方を変えていきましょう。労働基準法改正について検討されている内容について、特に重要なポイント3つに焦点を当てて解説します。

大塚 万紀子

執筆者:大塚 万紀子

マネジメントガイド

 「働き方改革」はついに法改正にまで波及

働き方改革と労働基準法改正

働き方改革と労働基準法改正

2017年に大きな話題になった「働き方改革」。政府は、この「働き方改革」を進めるにあたり、労働基準法の改正を行うことを検討しています。

では、具体的にどのような改正が検討されているのでしょうか。また、それらを踏まえて、現場としてはどのようにマネジメントを変えていくとよいのでしょうか。特に重要なポイント3つに焦点を当ててみましょう。

改正案のポイント1 「残業時間の上限が規制」されます

これまで、労働時間の上限は実質的に“無制限”でした。今回の改正で、たとえ三六協定を締結していたとしても、残業の上限を99時間未満+2~6か月平均で80時間以内におさめる、というルールに変更になります。

【マネジメントとして求められる対応】

チームメンバーの労働時間を毎月管理することはもちろんですが、抜けがちなのは「2か月、3か月、4か月、5か月、6か月どこをとっても平均80時間以内におさめねばならない」という視点です。
残業時間の規制が変わる

残業時間の規制が変わる

たとえば、ある部下が繁忙期の10月に「90時間/月」の残業が発生するとします。

すると「前月の9月」と「翌月の11月」は残業を60時間程度におさめなければ「平均80時間以内」というルールに反します。

つまり、マネジャーは1か月の労働時間だけでなく、その前後の月の働き方も意識する必要があるのです。

「でも、10月は予定どおりとしても、11月に突発的な対応が入ってしまうこともあるよね……」と思いますよね。そんなときでもきちんと平均時間をルール内におさめるためには以下のことが必要です。

・年間で残業時間の目安の計画を立てておく
・各月の残業時間の目標をあらかじめ少なめに設定する
・少ない残業時間でも仕事が進むよう、仕事の仕組みを変える

改正案のポイント2 「年5日間の有給休暇取得が義務付け」られます

日本の有給休暇取得率は48.7%(厚生労働省・平成28年就労条件総合調査)。この数字は海外と比べても非常に低く、韓国などを下回って世界最下位だという調査もあります。政府は今回の改正で、年5日の取得を義務付けることで取得率の向上をはかります。

マネジメントとして求められる対応

「年5日は多すぎる!」とマネジメント上の難しさを感じている場合には、以下の対策をしましょう。
・年度のはじめに、年5日以上の有給休暇を計画する仕組みを作る
・「有給休暇取得奨励日」を作る(年末年始やお盆休みを事実上少し長めに設定する)
・マネジャーはメンバーの計画を見て、仕事の優先順位や担当割り振りを決める
「日数が多い」「休みにくい」のは、あらかじめ計画に入っていなかったから、という裏側の心理があるため、計画に入れることが解決策になります。

一方、「チームメンバーが休みたがらない」という場合はどうしたらよいでしょうか。こうした発言の裏には「休んでもやることがない」「あまり休むと評価されない」といった心理が隠れています。こうした場合は、以下のことを行います。
・メンバーとの面談で、成長のために「会社以外で」学ぶこと・挑戦することがないかを探る
・仕事で成果を出し続けるために、身体を定期的に休めることの重要性を伝える
・社外でのインプットが評価される(有給休暇を取得しないことが評価に響く)ことを伝える
また、「仕事に追われて休めない」「休み中に仕事を任せられる人がいない」と言うメンバーもいるでしょう。こうした場合には、
・仕事が属人化している可能性が高いので、仕事内容と進め方を一緒に整理する
・一つひとつの仕事に「今かけている時間」と「本来かけるべき時間」のギャップを把握し、効率化を進める
・一つの業務を複数人で担当するよう、チームの組み方を工夫する
といった組織的な取り組みが必要です。

改正案のポイント3 「労働時間の適正管理が義務付け」られます

「そもそも労働時間を管理してこなかった」という企業や「フレックス制や裁量労働制だから、労働時間管理は必要ない」といった誤解をしている企業も多くあります。

今回の法改正の範囲には、裁量労働制の対象者や管理職であるマネジャー自身も入ります。

また、「勤務間インターバル」といって、前日退社した時間から一定程度の時間が経過しないと業務を開始させてはならない、つまり前日の仕事と当日の仕事との間に休憩時間を挟まなければならない、という制度の導入も検討されています。

インターバル制はヨーロッパでは既に実施されているもので、このルール適用の前提として労働時間の適正管理が必要になる、というわけです。

【マネジメントとして求められる対応】

タイムカードやICカードなど、会社として労働時間を管理する仕組みがあるでしょうか? そしてメンバーはきちんとその仕組みを使っているでしょうか? マネジャーはそれをきちんとチェックする必要があります。

・毎週水曜日の午前中にメンバーの出勤時刻を確認する、などの予定をつくる
・改正ポイント1を踏まえ、5日と末日に労働時間の予定を部署内で共有する
などするとよいでしょう。

これらの改正ポイントは、いきなり環境を整えたり変化したりするのが難しい分野でもあります。

実際の改正案はまだ議論の途上にありますが、こうしたポイントについて早めにチームや部署で議論し、みなさんの職場にあった仕組み・働く環境を整えていきましょう!


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