アドバイス1 「老後は本人の資金から」が基本
祖父母のお二人を思われていることに大変感心いたしました。しかも、現在すでにご実家に9万円を入れ、水道光熱費も負担している。なかなかできることではありません。ただし今後、本多さんがすべてを背負うことはないと思います。「兄弟は経済的にアテにできない」とのことですが、高齢者の面倒や介護は経済的負担だけでなく、時間・手間も費やさないといけません。ご家族の年齢を考えれば、これからどんどんその負担は増えるはず。他のご兄弟との関係性や状況はわかりませんが、経済的負担が無理なのであれば、それ以外の部分で負担し合えるよう、少なくとも話し合いはすべきではないでしょうか。
もうひとつ。介護費用がかかるようになった場合、まず公的介護保険の適用範囲内(介護サービスに発生する費用の1割が自己負担)での介護をひとつの目安と考え、かかるコストも祖父母の公的年金や預貯金から捻出する。つまり、介護費用は受ける人のお金で。具体的な介護方法は、担当するケースワーカーと相談して決めていくわけですが、マネープラン的にはこれが基本的な考えとなります。家族なら出してあげたい気持ちもわかりますが、止むを得ないケース(資金がほとんどない、どうしても高額な介護サービスが必要など)を除き、かかるコストは自身の資金から捻出してもらう。これを原則としてください。
アドバイス2 何を選択するかは祖父母の資産内容で決まる
さて、本多さんのご相談ですが、今後の働き方をどうするか……。相談文にあるように、ご自身で選択肢を3つ用意してくれましたが、もっとも非現実的なのが(1)です。家族のサポートだけを考えれば、もっとも有効でしょうが、大幅な収入減となり公的年金の受給額もダウンしてしまいます。現在、投資に回している資金も加えれば、年間150万円近く資産を増やしている。それがほぼゼロになります。それどころか、月7万~8万円の収入であれば、今ある貯蓄を取り崩すことになります。現在の金融資産は評価額も含めて2760万円。これが増えることなく、老後に向けてどんどん減っていく状況は避けなくてはなりません。もし(1)を選択したいなら、今の仕事を10年、43歳まで続けたい。それで資産が1500万円ほど増えますから、その後であれば、資金的には可能だと思います。しかし、それでは祖父母とも100歳近い年齢ですから、「家族のそばにいる」という希望は果たせないかもしれません。もちろん、本多さんが考えているように「実家に入れている9万円を免除」できるなら、月12万~13万円の収入を得られることで、条件を満たします。しかし、それが可能かどうかはまだ不確定です。
そのためにも、できれば早いうちに、祖父母の資産内容は把握しておきたい。年金の受給額がいくらで、金融資産はどの程度保有されているのか。また、基本的な生活費も知った上で、必要な経済的支援を本多さん自身がしっかり試算しておくことが必要だと考えます。
アドバイス3 現実的には正社員の転職を目指すという選択肢
その結果、やはりある程度は資金援助が必要となれば、(1)の選択はおススメしません。そして、もっとも現実的で資金的リスクの少ない選択肢が(2)となります。この場合も、条件としては、貯蓄の取り崩しをできればしないで、収入の範囲内で生活していくということ。したがって、得られる収入にもよりますが、実家に入れている月9万円も多少減額は必要となるでしょう。また、祖父母のお二人にある程度の経済的余裕があるなら、選択肢として(3)を選ぶこともできると思います。しかし、少なくとも勉強する4年間は無収入か、せいぜい学生のアルバイト程度の収入しか得られません。したがって、本多さんが言うように、一時的に実家への経済的支援は停止するか、大幅に減額してもらう必要があります。それに耐えられるだけの資産が祖父母にあるかどうか、ということです。
また、どれを選択するにしても、今以上の収入は望めないとするなら、今後は金融資産を「増やす」よりは「守る」、あるいは「減る速度を極力抑える」ことが重要になってきます。要は、あまりリスクは取れないということです。ところが、今の金融資産のバランスを見ると、個人向け国債を元本保証の商品としても、貯蓄と投資の比率は1対3。これを少なくとも逆転させ、貯蓄「3」に対し投資「1」の配分にはしたいところ。今後、利益の出ている投資商品から徐々に売却し、貯蓄の比率を高めべきでしょう。
相談者「本多静六」さんから寄せられた感想
アドバイスいただけて誠に感激しております。ありがとうございました。また、アドバイスいただけたのも尊敬する深野康彦先生で大変感謝しております。いつもほかの方々へのアドバイスを、楽しく拝見させて頂いておりました。今回の為になるアドバイス、誠にありがとうございました。自分の人生、決断は全て私が決めなければいけないことではありますが、環境を変えることへの不安や迷いなどから、今回アドバイスを頂くというかたちで深野先生にお手間を取らせてしまいました。頂いた助言の通り、まずは家族の状況の把握に努め私と家族皆が最善に過ごせるよう生きたいと思います。ありがとうございました。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武
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