都市部において建築物の用途を制限する用途地域の規定ですが、新たに「田園住居地域」が加わることになりました。1992年の法改正でそれまでの8種類から12種類に増えて以来、25年ぶりの改正です。

これからは用途地域が13種類になるわけですが、この「田園住居地域」とはいったいどのようなものなのか、主なポイントをまとめておくことにしましょう。


都市内の農地を保全することが新たな課題に

これまで市街化区域内にある農地は原則的に「宅地化すべきもの」として取り扱われてきましたが、まちづくりにおいて公園、広場、緑地、農地などオープンスペースの重要性が認識されるようになり、都市農地は「都市にあるべきもの」とする考えに変わってきました。

都市内の農地

都市農地は「宅地化すべきもの」から「都市にあるべきもの」に位置付けが変わってきた

そこで「都市緑地法等の一部を改正する法律案」が2017年2月10日に閣議決定され、その後の国会で成立しています。

改正の目的は「都市における緑地の保全および緑化ならびに都市公園の適切な管理を一層推進するとともに、都市内の農地の計画的な保全を図ることにより、良好な都市環境の形成に資すること」とされています。

さらに、都市緑地法の改正には「緑地の定義に農地が含まれることを明確化する」といった内容も含まれています。

「都市緑地法等の一部を改正する法律」は、上の目的に関連する都市緑地法、都市公園法、生産緑地法、都市計画法建築基準法のそれぞれ一部を改正する法律を総称したものですが、このなかで都市計画法および建築基準法の改正に関わる部分が「田園住居地域」の創設です。

都市緑地法、都市公園法、生産緑地法の改正法は2017年6月15日に施行(一部を除く)されていますが、「田園住居地域」に関する規定は2018年4月1日に施行されることになりました。

今回の改正は1種類の追加のみであり、すべての都市計画区域で取り入れられるわけではありませんが、指定する場合でも都市計画の変更を伴うため、実際の指定は改正法が施行されてから数年かけて実施されることになるでしょう。

ちなみに、用途地域が12種類に細分化された前回の改正(1993年6月25日施行)は規定全般の見直しだったため、切り替えまでに3年の猶予期間が設けられていました。


低層住居専用地域の規定をベースに、農業用施設の立地を許容

田園住居地域は「農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護する用途地域」とされています。

そのため、田園住居地域の規制内容は、現行の第1種低層住居専用地域または第2種低層住居専用地域をベースにしつつ、農業用施設の立地を限定的に認めようとするものです。現状で農地が多く混在する低層住宅地がその対象として考えられるでしょう。

「田園」ときいて郊外や山間部などの田園地帯をイメージするかもしれませんが、そのようなものではなく、あくまでも都市部で指定されるものです。

【田園住居地域の創設目的など】
  • 農地と調和した低層住宅に係る良好な住居環境の保護
  • 建築規制(低層住居専用地域をベースに農業用施設の立地を限定的に許容)
  • 農地の開発規制(許可制、一定の小規模な開発は可能)

田園住居地域における用途規制では、低層住居専用地域に建築可能なものに加え、一定の農業用施設(農業の利便増進に必要な店舗・飲食店など、農産物の生産・集荷・処理・貯蔵に供するもの、農産物の生産資材の貯蔵に供するもの)が認められます。

これらの農業用施設は従来の低層住居専用地域の規定で原則的に認められなかったものです。店舗・飲食店などは500平方メートル以内(かつ2階以下)に制限されますが、田園住居地域の指定が進むことにより農産物直売所、農家レストランなどの開業が増えるかもしれません。

【田園住居地域内に建築することができる店舗、飲食店など】
  1. 田園住居地域およびその周辺の地域で生産された農産物の販売を主たる目的とする店舗
  2. 1の農産物を材料とする料理の提供を主たる目的とする飲食店
  3. 1の農産物を原材料として自家販売のために食品製造業を営むパン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋その他これらに類するもの(作業場の床面積が50平方メートル以内、原動機を使用する場合は出力の合計が0.75キロワット以下)

また、建蔽率は30~60%、容積率は50~200%の間で都市計画によって定められるほか、高さ制限として10メートルまたは12メートルが適用されます。低層住居専用地域と同様の形態規制がされることで、今後はマンションに囲まれて農地が日陰になる事態は避けられるでしょう。

田植えを体験する子どもたち

都市農地が子どもたちの体験学習に使われることもある



田園住居地域の規定は用途地域のなかで変則的な位置付けに!?

農業用施設以外の部分でみれば、第2種低層住居専用地域とほぼ同じ用途規制内容となる田園住居地域ですが、法律の規定のうえでは準住居地域と近隣商業地域の間におかれています。

  1. 第1種低層住居専用地域
  2. 第2種低層住居専用地域
  3. 第1種中高層住居専用地域
  4. 第2種中高層住居専用地域
  5. 第1種住居地域
  6. 第2種住居地域
  7. 準住居地域
  8. 田園住居地域
  9. 近隣商業地域
  10. 商業地域
  11. 準工業地域
  12. 工業地域
  13. 工業専用地域

用途地域についてはこれまで「第1種低層住居専用地域から商業地域に向かって次第に制限がゆるくなる」といった解説もされていましたが、田園住居地域が加わることで少し変則的になる点にも注意しておきましょう。


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