メンタルヘルス

疲れが取れない時の病院受診の目安・普通の疲れと病気の疲れの違い

【医師が解説】疲れが取れないときは病院に行くべき? 日常的な疲労感は多くの人が覚えるものですが、しっかり休んでも疲れが取れない場合、体の病気の他、うつ病などの心の病が原因のこともあります。疲労感が強い場合に考えられる疾患と病院を受診すべき目安について解説します。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

寝ても寝ても疲れが取れない…疲労感が続く原因は?

取れない疲れ

しっかり休んでも疲れが取れない……。不健康な生活習慣だけでなく、何らかの病気が原因のこともあります

日常的に疲労感があるという方は、働きすぎの方が多いといわれる現代において、少なくないかもしれません。今一番したいことを聞かれて、とにかく一日中何もせず、思い切り寝て過ごしたいと答えるような場合、仕事量が多く、日常的なプレッシャーも非常に高い状態に置かれているのかもしれません。そして実際に一日中ゆっくりしても、やはり身体が重く気持ちが浮かないような疲れを感じる場合は、ご自身ですぐに対策するのは難しいかもしれません。

今回は私たちが日常的に感じる疲労感と、寝ても取れないような深刻な疲労の原因について、心身の病気との関連も含め、対策を考慮すべき目安などを解説したいと思います。

<目次>  

休んでも疲れが取れない原因となる悪習慣…睡眠・食生活・激務など

体が重い、力が入らない、頭がすっきりしない、眠気が強いなど、疲労の感じ方はさまざまですが、いずれも何らかの負荷により、心身の機能が低下している状態といえます。普通ならしっかり睡眠を取り、休日などに体を休ませれば、疲労感はすっきりと取れて健康な状態に戻るはずです。しかし、場合によっては時間を作って休んでも、疲れが取れないことがあるかもしれません。

そうした場合、まずはその原因を考える必要があります。
  • 睡眠の質の低下……寝つきが悪い、眠りが浅いなど
  • 食生活の問題……食事の量や栄養バランスに問題がある
  • 身体への負荷の高さ……業務などで身体を酷使している
  • 生活習慣の乱れ……運動不足、飲酒量の増加などがある
  • 活動時間の変化……昼夜逆転生活など時差ボケのような状況
こうした問題の他にも、何らかの治療薬を服用中の場合、強い眠気や疲労感が現れることもあります。まずは思い当たることがないかをセルフチェックし、自分でできる部分は上手く改善していくようにしましょう。
 

疲労感が現れる病気はさまざま…貧血・風邪・糖尿病など

そして、もし疲労感が強く改善が見られない場合には、その疲れが何かしらの疾患によるものではないか、注意する必要があります。

疲労感はごくありがちな風邪症状でも現れますが、貧血などの慢性的な疾患が原因かもしれませんし、あるいは風邪以外の何かしらの感染症、甲状腺機能低下や糖尿病など内分泌系の問題が関わっている可能性もあります。疲労自体が一般的な身体症状である以上、さまざまな疾患の一症状として現われる可能性があるのです。

これらの疾患に特徴的な症状が同時に現れていれば、身体の問題に気付きやすいのですが、疾患の初期段階では、疲労感以外は自覚症状がないことも多く、現実的にその時点で病院を受診することは難しいかもしれません。

身体の問題を見逃さないためには、一般的な方法ではありますが、健康診断などを定期的に受けて、結果にしっかり目を通すことも大切です。

たとえば健康診断の結果で貧血傾向があると判明していても、結果をもらった時点で息切れや立ちくらみといった貧血の自覚症状が出ていなければ、具体的に対策をする気持ちにはならないかもしれません。しかし、できればこのような結果はしっかりと生かし、なるべく早めに病院を受診するなどしましょう。適切な処置を受ければ、日常的な疲労感などの問題が大きく改善する可能性があります。
 

強い疲労感は、うつ病・冬季うつ病などの心の病気が原因のことも

そして、疲れは日常的に感じるものですが、心の病気で現れやすい症状でもあります。例えば、うつ病の場合でも、通常より疲れやすくなる「易疲労感(いひろうかん)」は現れやすい症状の一つです。

うつ病にはいくつかのタイプがありますが、秋から冬限定で疲労感が強まる場合、「冬季うつ病」の可能性も考えるべきでしょう。冬季うつ病も、ぐったりとした疲れが現れやすいです。

冬季うつ病は冬の日照時間の短さと明らかに関連しています。地理的条件から冬季の日照時間が極端に短くなる北欧の国々では、冬季うつ病の発症率が10%近くにまで上がります。この実態もふまえて、フィンランドなどではミルクなど一部の食品に、冬季に不足しやすいビタミンDの補充を義務付けるなど、国を挙げて対策を行っています。

日本の冬季うつ病の深刻さは、これらの北欧の国々に比べれば軽微といえますが、それでも冬は春夏と比べ、明らかに気持ちが浮かず、活動量が落ちると自覚されている方は少なくないかもしれません。冬季うつ病の基本的な対策法は、晴れた日は外に出て日光にあたることです。もし季節的にこの時期にかぎり疲れやすくなる方は、こういった簡単な対策法がかなり効果的なこともあります。
 

不整脈・頭痛・腹痛や能率低下など、異常や異変が出たらすぐに病院へ

また、当然のことですが、もし疲れやすさだけでない何らかの異常が身体に現れている場合、早急に病院受診を考えることをおすすめします。たとえば、不整脈を自覚したり、頭痛や腹痛などの症状がひどくなっている場合、あるいは痔と自己判断してしまっている血便などの症状がある場合もそうです。

また、特にそれらの身体的な異常がない場合でも、仕事の能率が明らかに低下していたり、公私ともに集中できずに普段ないような失敗が増えてきたりと、日常生活に何らかの支障が出ている時も、対処をしっかり考えたいところです。疲労感の特定は難しいものですが、まずは内科、あるいは症状に応じて精神科、心療内科などを受診し、適切に診察を受けられることが大事です。

そして、日常的にできることとして、まずは生活習慣があまりに不健康になっていないか、同時に自分のストレスレベルについても客観的に評価したいところです。自分では全く大丈夫だと思っていても、傍目から見ると仕事や課題を抱え込みすぎている場合もありますし、知らず知らずに無理を重ねていることは少なくないものです。疲労感は仕方がないものと放置せず、心と身体からの危険信号かもしれないということは、どうか念頭に置かれるようにしてください。

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