「歌舞伎を観に行ってみたい!」と思ったら、即行動!
毎月1日から3日の間には初日が明く
日本人たるもの一度くらいは歌舞伎を見に行かなくっちゃ! そんな気持ちになったら、即行動!
歌舞伎座の場合、月初め(1日~3日)に幕が開き、25,26日頃に千穐楽を迎えます。その間、休演日はなし。お休みする月もなし。月末月初のほんの数日を除けば、いつでも歌舞伎をやっているのです。これ意外ですよね。意外でもありますし、歌舞伎俳優たちのすごさがそれだけでもわかろうというもの。だって、ほんの数日で次の月のお芝居が始まるのですから。
注:現在国内の歌舞伎は、歌舞伎座のほか国立劇場、新橋演舞場、明治座、地方劇場など、さまざまな劇場で上演をされています。本稿では歌舞伎座で上演される歌舞伎をメインにお伝えいたします。
今回は、歌舞伎初心者の方にとってよくある疑問にお答えしつつ、チケット購入から観劇までの流れをご紹介します。
<目次>
1.「見取り」と「通し」って何? どっちを選べばいいの?
一体、どれを見ればよいのやら。さっぱりわからないことでしょう。まずは、歌舞伎公式サイト「歌舞伎美人」で公演情報をチェックしてみましょう。歌舞伎は、昼の部と夜の部に分かれ上演されます。(3部制の月もあります)
歌舞伎の演目の出し方には「見取り」と「通し」があります。それを知らずに、ぼーっと見始めると、休憩でご飯を食べた後、どうして全然別の話になっちゃったの?さっきの話はどうなったんだろう?と混乱したまま終わることにもなりかねないので、そこを説明しておきますね。
もともとの歌舞伎の演目は、1日中、いや何日もかかって上演されるような長々しいお話が多いので、「ここぞ!」という名場面のところのみをチョイスしたものを、3つほど合わせて上演するのが「見取り」です。歌舞伎座の場合はほとんどこの方式です。
市川猿之助さんがルフィを演じて話題となった「ワンピース」のように一つのお話が上演されるのが「通し」です。
「通し」では、一つのストーリーを上演するので(それでも長すぎてカットする場合もあります)、ややこしい背景や複雑なストーリーの流れがすっきりわかるという利点があります。半面、好みのストーリーではないと、次第に瞼が重くなってくることも……。
「見取り」では、時代物、舞踊、世話物(江戸時代の現代劇)と、多種多様の演目の見どころをピックアップして見られるので、初心者にはこちらがおすすめかも。
「見取り」は、「1枚のチケットでバラエティに富んだ様々な演目が見られるもの」ということを、押さえておきましょう。
2.演目選び、初心者にとってわかりやすいのは「世話物」
何を面白いと感じるかは人それぞれですが、最初は世話物がわかりやすいのではないでしょうか。世話物とは江戸時代の現代劇。ストーリーもわかりやすくセリフも聞きとりやすい。夜の部昼の部どちらに行くか悩んだら、大変乱暴な言い方ではありますが、チラシの作者のところを見て「河竹黙阿弥」の名があるほうを選んでみてください。
「河竹黙阿弥」は幕末から明治にかけて活躍した歌舞伎狂言の作者です。300近い作品を世に出しました。
みなさんも、その名前は知らなくても
「知らざぁ、言ってきかせやしょう」(白波五人男・弁天小僧菊之助)
「こいつぁ春から縁起がいいわぇ」(三人吉三・お嬢吉三)
などの名調子は聞いたことがあるのではないでしょうか。五七調の軽やかなセリフ、小悪党や弱者に心を寄せるストーリーなど、今なお多くの人に愛される作品をたくさん生み出しました。
歌舞伎座では、今年だけでも1月(大津絵道成寺)2月(四千両小判梅葉)5月(魚屋宗五郎)6月(御所五郎蔵)7月(加賀鳶)9月(幡隋長兵衛)11月(雪暮夜入谷畦道)12月(土蜘蛛)と、黙阿弥作品が登場しない月のほうが少ないほど。しかも初心者にはわかりやすいものが多いので、おすすめなのです。
もちろん、黙阿弥作品以外にもジャンルは多彩。おどろおどろしいホラー、美しい舞踊、コメディータッチ。いくつか見るうちに、自分の好きな傾向と合致するものが見つかると思います。また、好きな役者もできるかもしれません。そうなればしめたもの。どんどん好きなものにはまっていってください。
3.話題の襲名披露もチェック!
さらに、観劇する上でおすすめできるのは話題性のある演目。たとえば、襲名披露や初お目見えなどの演目は、その後長く話題にのぼるので歌舞伎デビューにはおすすめです。2018年1月2月には白鳳、幸四郎、染五郎の三代同時襲名というビッグイベントがあります。話題性は抜群ですよ。これから役者として大きく成長していくであろう若者(新・染五郎)の襲名披露は見ておいて損はありません。4.チケットは電話での購入がおすすめ
チケットは、ネットで買うか電話をして買うか、直接歌舞伎座下木挽町広場で買うか選べます。ネットで買うのは、真夜中でもOKなので便利ですが、初心者ですとどの席がいいのかわかりづらいのがデメリットです。電話は、発売日当日ですと通じにくいこともありますし、かける時間が限られますが「初心者なのでわかりませんが」といえば、よく見える席を丁寧に教えてくれますよ。
ネットや電話で購入したチケットは、郵送してもらうか発券機で受け取りか選ぶことができます。
チケット購入に使ったクレジットカードの持参を忘れないように!
チケットweb松竹
5.どの席を買えばいいの?
歌舞伎というとチケット代が高いという印象があるかと思います。確かに一番高い席は20000円の桟敷席。でも、「一幕見」といって短い一幕だけ見る席なら1000円前後で観ることができますし、そのほか4000円~20000円まで、お財布に合わせて席は選ぶことができます。そして一概に安いところはよくないというわけでもありません。ガイドが行くのはたいてい3階席。もちろん1等席よりもよく見えずよく聞こえず、オペラグラス必携ではあります。けれども1等席より、舞台全体の絵本のような美しさは堪能できます。3階A席は6000円。3階B席は4000円。決してコスパは悪くないと思います。一幕見は1000円前後、こちらで試してみるのもいいですね。(ただし一幕見は前売りはなく、当日券のみ)
全体が見える3階席
6.ストーリーの予習は必要?
さて、チケットは買いましたね。あとは芝居当日を待つばかり。「まずは、先入観なしで歌舞伎を観て」という人もいます。けれどもガイドは、できればどんなお話なのか、あらすじ程度は把握してから観たほうがより楽しめると思います。先ほども書いたように、長いお話の中の一部分を見せられたりするわけですから、背景やあらすじをわかっていないと何が何だかさっぱりわからないまま終わってしまうことになりかねないからです。
7.何を着て行くか? 持って行くべきものは?
1等席、桟敷席で、穴のあいたジーパンなどをはいていたらさすがに目立ってしまうかもしれません。けれども気負いすぎて慣れない着物を着たりすると、歌舞伎そのものを楽しめなくなってしまいます。長時間の観劇になるので、着ていて疲れない服装であること。その時その席によって空調の具合も違い、暑かったり寒かったりしますので、調整のしやすい服装がベターです。もちろん着物が慣れているなら、ぜひ着物で! そうでなければゆったりめのワンピースにストールなど、その時々で調整できる服装にしましょう。
ヘアースタイルで気を付けたいのは、トップでお団子にするアレンジ。後ろのお客様にとって、舞台が見えづらくなってしまいます。
冬は特にコートにマフラーと荷物が多くなってしまうので、ロッカーを借りるか、大きめのエコバッグを持参するのがおすすめです。コートなどをエコバッグに入れて、席の下にぐっと押し込みますと邪魔になりません。
あれば、オペラグラス。そのほか眠気防止のミント系タブレット。飲み物。そうそう、チケットも忘れずに!
エコバッグ、ストール、オペラグラス、飲み物、ミント系タブレット、そしてチケットを忘れずに!
8.食事は何を、どこで食べるのがおすすめ?
さて当日。歌舞伎座にはいったら、席に着く前にトイレに行き、幕間時間を確認しておきましょう。歌舞伎座では通常の劇場と違って座席での飲食可能。とはいえ、それは幕間でのこと。上演中は飲み物はOKですが、食べるのはNGです。
お弁当は館内で買えますし、食事処も充実していますが、初めてのときは開場前にお弁当を調達しておきましょう。中に入ったらのんびりお土産を見たり、あらすじを読んだり、劇場の雰囲気を楽しむのがおすすめ。近くでは歌舞伎座地下の木挽町広場でもお弁当は買えます。そのほかの食べ物情報は、こちらの記事を読んでいただければと思います。
歌舞伎観劇・賢いランチ術はこれ!
お弁当は、芝居見物の楽しみの一つ!
9.幕間の過ごし方は?
幕間とは、演目と演目の間の休憩時間。30分と10分ほどの時間があるのでその時に食事をしたり、お土産を探したりすることができます。席のある階だけではなく、ぜひ違う階も行ってみてください。1階にはお土産屋さん。2階のロビーは、美術館かと思うほど日本画が並んでいるので一見の価値があります。3階はというと、食べ物屋、土産屋が軒を連ね、「味見をしてみて」という呼子の声がにぎやかでこれまた楽しい雰囲気です。人気の「めでたい焼き」も3階で購入できます。
幕間でのトイレは早めに済ませましょう。最後にトイレに飛び込み、混んでいるために時間に間に合わず、お芝居が始まってから席に着くのはとてもみっともないことです。
10.「イヤホンガイド」は借りるべきか?
ぜひおすすめしたいのはイヤホンガイド。館内のイヤホンガイド貸出所で借りることができます。情景に合わせて、あらすじ、背景、衣裳、俳優についてタイミングよく専門家がそっと耳元で解説してくれるようなもの。なぜあれほどタイミングよく解説してくれるのかという理由についてはこちらの記事を読んでくださいね。初めての歌舞伎で、借りる?借りない?イヤホンガイド
イヤホンガイドで専門家の解説を聞こう
さて、これだけ準備しておけばまず安心。「チョン!」という柝が聞こえたら、いよいよ幕が開きますよ! さ~歌舞伎の世界にGO!
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