50代のあなたの貯金額はいくらありますか?
公的年金だけでは、老後の生活費を100%賄うのも難しい状況です。そこで、現役時代に資産の山をできるだけ高く築いておくことが大切になります。資産の山を築く一方、人生100年時代に備えるには老後の収入を厚くすることが重要になります。それも生きている間、受け取ることができる「終身年金」を厚くすることが鍵になるのです。老後のお金に困らないためには
総務省が公表している2021年「家計調査報告(貯蓄・負債編)」によれば、世帯主50~59歳の勤労世帯の貯蓄残高の平均は1846万円(負債総額は692万円)です。平均値なので多めの金額になっているため、平均を上回っている人は少ないかもしれませんね。
また、金融広報中央委員会が公表する2021年「家計の金融行動に関する世論調査」によれば、全年代の平均額は1563万円、中央値450万円(2人以上世帯)、金融資産を保有している世帯だけに限ると、平均額は2024万円、中央値は800万円になります。
何をもって及第点とするのかは難しいですが、老後のことを考えて、50代のうちに中央値800万円を保有しておきたいところです。半面、50代でも23.2%が貯金0円の世帯です。貯金0円世帯の人は、貯蓄を行うとともに、人的資本を大切にして生涯働けるようにしておくことが重要になるでしょう。
ただし、2021年も2020年に引き続き新型コロナウイルス感染症の影響がある中での調査であることから、一部データが例年の数値より逸脱している可能性があることは認識しておくべきでしょう。
退職までにどう資金を準備していくか
お隣の資産額と我が家を見比べて、一喜一憂する必要はありません。定年退職を迎えるまでではなく、亡くなるまでを俯瞰すれば(運用は生涯現役)、リカバリーする時間は十分あるからです。では、どうやって準備するかですが、現役時代の基本は、毎月の収支から資金を捻出して積み立て方式で行っていくことになります。iDeCo(個人型確定拠出年金)、つみたてNISAなど節税が得られる制度を活用するのがベースになるでしょう。ただし、iDeCo、つみたてNISAでは長生きのリスクに備える「終身年金」を確保することが難しいと言わざるを得ません。人生100年時代を見据えるのであれば、資産の山を高くすることも大切ですが、一方で生涯受け取ることができる終身年金を厚くしておくことが重要になるのです。
終身年金を厚くしたいのであれば、自営業者など第1号被保険者は「国民年金基金」で準備することを優先しましょう。掛金は全額所得控除が利用できるうえ、まず終身年金に入る(選択する)ことが義務づけられているからです。勤労者であれば、iDeCoに目が向きがちですが、終身年金を重視するなら民間生命保険会社の「トンチン年金」がよいでしょう。
トンチン年金は保険料を払っているときに亡くなると、返戻金は支払額を下回りますが、生きていればずっと年金を受け取ることができるのです。つまり、長生きすればするほど受け取り総額が多くなる年金保険なのです。
所得控除を考慮すれば、iDeCoがまず頭に浮かびますが、iDeCoは国民年金の被保険者であっても65歳までしか拠出することはできません。現在、手を挙げれば65歳まで働くことができることと照らし合わせると、収入を得ている期間とiDeCoの拠出期間がマッチしない可能性があります。
そこで50代後半の方は、拠出期間(積立期間)を考えると、つみたてNISAの方が使い勝手がよい面もあることでしょう。半面、50代前半であれば所得控除などを考えてiDeCoを利用されてもよいでしょう。拠出期間(積立期間)を俯瞰すれば、預金や生命保険などの元本確保型商品を選んでしまいそうですが、公的年金などはインフレに弱い制度です。インフレに備える観点から、投資信託を選んで運用をするべきです。
公的年金の任意加入という手もある
50代のかなりの人は公的年金に「未納」があるはずです。そんな馬鹿な!と思われるかもしれませんが、大学時代の公的年金加入期間分(20歳以上大学卒業まで)の年金保険料を、社会人になって追納を行った人はかなり少ないのです。さらに、今と違って、当時は大学生の公的年金への加入は任意だったうえ、加入の催促等はあっさりしていましたから、公的年金加入期間が短い人もいるはずです。再雇用をされた人は勤務先経由で厚生年金への加入が継続するので、支給される老齢年金額を増やすことができますが、60歳の定年退職で会社を辞めた人や起業した等の人は、国民年金に任意加入し、老齢基礎年金を満額受け取れるようにすべきです。
長生きに備えるには、資産の山を築くことも大事ですが、同時に終身年金をいかに厚くするかもとても重要なことなのです。
【参考文献】55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣(明日香出版社)
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