家計内容やお金の流れがわからず、老後が不安です

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、老後に不安を抱える57歳の奥様。世帯収入は高いものの、家計や貯蓄の管理をご主人が行っているため、不明点が多く、それがさらに不安を増長しているとのこと。ファイナンシャル・プランナーの平野泰嗣さんがアドバイスします。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください(相談は無料です)

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世帯収入は高いものの、家計や貯蓄の管理を夫が行っていて不安になる

世帯収入は高いものの、家計や貯蓄の管理を夫が行っていて不安になる




■相談者
るなさん(仮名)
女性/専業主婦/57歳
関西/持ち家・マンション
 
■家族構成
夫(会社員/57歳)
 
■相談内容
結婚26年、子どもには恵まれませんでした。26年の間に「それは、それは」いろいろなことがあり、なんとか二人で生きてきました。途中夫が突然仕事をやめたり、私が一人でカフェの経営をしたり、貯蓄をいっさい使い果たしたり、収入が不安定な時期もありました。

2010年頃から夫も精神的には落ち着いてくれて、少し安定的な生活に落ち着いた矢先に、私が難病に罹患していることがわかりました。家事など日々の生活は維持できているものの(将来的には未知数です)、就労することは難しい状況です(個人事業主だった時期や、扶養の範囲内で働いていた時期もあります)。

二人とも浪費傾向が強く、どんぶり勘定で生きてきたため、計画的に貯蓄するのが苦手です。夫が55歳になったときから給与は年俸制にかわりました。定年はもう目前、その後再雇用制度で今の職場に残れますが、年収がどのくらい下がるかは未知数です。今のところ職場には必要な人材とされているようなので、しばらくは今の年収を維持できそうですが、それもいつまでかは未知数です。すべてが不安です。
 
さすがに私もこれでは立ち行かなくなると思い、今の年収のうちに貯めれるだけ貯めておきたいところですが、夫が貯蓄をやりくりしており、私には決定権はありません。正直、毎月22万円ほどの金額が何に使われているのか知ることができません。
 
夫婦のコミュニケーションがとれているとは言い難いですが、夫も悪人ではありませんので、私がきちんと学び、根拠を示して、これから老後を迎えるにあたって意識を変えていけるように話すことができれば、考え方を変えてくれるだろうと思います。貯蓄に関しても、つみたてNISA3万3000円、企業型確定拠出年金2万7500円は毎月必ず貯まっていますが、去年から赤字になっているため貯蓄として意味がないように感じます。せめて、毎月貯蓄できている13万円についてだけでも効率的な貯め方ができないものかと考えており、アドバイスを受けたく思っています。

■家計収支データ
相談者「るな」さんの家計収支データ

相談者「るな」さんの家計収支データ


■家計収支データ補足
(1)住宅ローンとその他コストについて
・マンション購入時期:2018年(中古・購入時築6年)
・ローンの返済年数と終了年:17年(2034年完済)
・ローンの支払額:毎月14万9879円
・現在の金利:変動0.625%

管理費・修繕積立金(月額)2万円
駐車場代(マンション敷地内)1万5000円
固定資産税額(年額)14万4400円
 
(2)家計管理について
夫から毎月16万円が家計口座に振り込まれ、そこから食費・水道光熱費・日用品・ペット費・医療費・その他生活雑費・妻の被服費などの小遣いを捻出。
 
(3)夫の小遣い14万円と雑費8万円について
相談者コメント「たぶん、その中から普段の外食や、夫婦のレジャー費(4万~5万円)も支払われていると思います。また、夫はあまり細かい管理や節制は出来ないタイプですし、管理職なので職場の人との飲みにはかなり負担しているようです。接待も大変多くて、会社経費で落ちない飲食の出費は多いのではないかと思います。それから趣味のスポーツでの付き合いや出費が多いと思います。ともあれ、私にとっては家計のブラックボックス状態です」
 
(4)趣味娯楽費「7万円」について
妻に振り込まれる生活費16万円から捻出している。妻自身にかかる交際費や美容院、サプリメント、衣服などの購入。ペットの費用もここに含んでいる。
 
(5)加入保険について
[夫]
・がん保険(入院5000円、死亡保障なし)=保険料・年払い2万9350円
・医療保険(入院5000円)=保険料・年払い4万5210円
・個人年金保険(65歳から10年確定、年金額60万円)=保険料払込終了

[妻]
・がん保険(入院5000円、死亡保障なし)=保険料・年払い2万5490円
・医療保険(入院5000円、女性疾病特約)=保険料・年払い6万円
(※)がん保険と医療保険は友人が保険代理店を始めたときに義理で加入。
 
(6)妻の医療費
国指定の難病のため、医療費も国費負担となり、年収が今より下がると、患者の負担額も下がるとのこと。
 
(7)公的年金について
●夫=老齢基礎年金77万6029円 老齢厚生年金164万7279円 合計242万3308円
●妻=老齢基礎年金69万2314円 老齢厚生年金12万966円 合計81万3280円
 
(8)再雇用と退職金について
相談者コメント「現在のところ65歳までと聞いています。退職金は40歳のとき一度自己都合で退社しており、そのとき退職金をもらいました。が、いろいろあり、半年後に同じ会社に再就職して現在に至ります。次にいただく退職金はどのくらいなのか不明なのですが、一度夫が「1000万円いくかいかないかくらい」と話していたことを覚えていますので、多分900万円くらいではないかと。確定拠出年金はそれとは別になっています」
 
■FP平野泰嗣の3つのアドバイス
アドバイス1 セカンドライフへの準備は今からでも間に合う
アドバイス2 87歳までの30年間で1250万円の削減
アドバイス3 「老後」は夫婦でともに乗り越えるべき難局
 

アドバイス1 セカンドライフへの準備は今からでも間に合う

まずは将来の収支をざっとシミュレーションしてみましょう。
 
ご主人の就業期間は65歳までで、その間は今と収支、貯蓄ペースは変わらないとします。65歳以降は年金生活(受給額は65歳まで就業分を加味し、夫婦の年金を手取り316万円と試算)。 また、退職時には退職金900万円と確定型拠出年金200万円を受け取ります。
 
「るな」さんの貯蓄残高の推移

「るな」さんの貯蓄残高の推移


コストの変化としては、クルマは75歳で売却。生活費も定年後は仕事の付き合いなどが減るはずですから、66歳以降は現在の80%(年間で約380万円)としました。
 
その結果ですが、図表でも示したとおり、運用による利益を考慮しない(元金のまま推移)と78歳、考慮(平均運用利回り2.5%)しても、計算上は80歳で手持ちの資産が底を尽きます。人生100年時代といわれる今、この老後資金では心許ないということになります。しかも、このシミュレーションには、不定期の大きな支出は盛り込んでいません。
 
したがって、資金的に老後への不安を解消するためには、今後をご夫婦のセカンドライフに向けた準備期間にシフトしていくことが望ましいと考えます。生活水準についての希望や思いもあるでしょうが、一般的に見て、世帯収入も年金の受給額も高いのですから、その準備は今からでも十分間に合うと考えます。
 

アドバイス2 87歳までの30年間で1250万円の削減

老後資金が不足することへの対策として、相談者ご夫婦ができることは、生活費の削減ということになります。
 
現在のような家計管理をいつから始められたかは不明ですが、例えば、ご主人からるなさんに渡されている16万円の生活費に対して、計上されている支出は16万5000円。わずかですが予算オーバーです。趣味娯楽費も一般的な水準と比較すれば多めですし、ご主人にも別途同様の支出があります。そのご主人が支出している雑費と小遣いの計22万円。こちらも圧縮する必要性があるでしょう。つまり、ご夫婦ともに支出を抑える必要があるわけですが、ともあれ、ご主人の支出内容が不明では、家計管理はできません。ここを明らかにして、ご夫婦で取り組んでほしいと思います。
 
では、具体的にどのくらいの削減が必要でしょうか。先のシミュレーションでは、87歳の時点で資産はマイナス750万円。このときに500万円程度資産が残っている状態にするためには、さらに1250万円の老後資金が必要になります。しかし、収入が変わらないならば、家計改善を実行して、87歳までの今後30年で1250万円、家計支出を削減しなくてはいけません。
 
仮に、65歳までの8年間で500万円、それ以降、87歳までの22年間で750万円の改善目標を設定するとします。その場合、65歳までに年間62万5000円(毎月5万2000円ほど)、66歳からは、現在の生活費の80%の生活費とした上で、さらに年間34万円(毎月2万8000円ほど)のコストダウンが目安となります。
 
ただし、これはあくまで現在の収入と生活費から逆算をして割り出した目安に過ぎません。今後、就業期間をどうするか、現在の、そしてリタイア後の生活費をどうするかによって、金額そのものも変わってきます。
 
投資については「つみたてNISA」を毎月3万5000円で始められたとのことですので、貯蓄内容がデータどおりであれば、実際の投資はこれに確定拠出年金が加わるので、バランス的にはいいと思います。「つみたてNISA」は、就業期間中(65歳まで)は継続していいでしょう。
 

アドバイス3 「老後」は夫婦でともに乗り越えるべき難局

さて、ご相談者のるなさんは、老後に向けてご主人が考え方を変えてくれるよう、積極的にコミュニケーションを取りたいと思われているとのこと。
 
実際、シミュレーションした結果から、老後資金は不足気味だといえます。このことをきっちり伝えるには、まずは公的年金額と老後の生活費(住宅ローン返済中と完済後、クルマの有無等で年齢によって異なる)を比較し、どのくらいマイナスかを数字でイメージしてもらう。例えば、そのマイナス幅は67~71歳がもっとも大きく、年間275万円。この5年間だけで貯蓄を1375万円取り崩すことになります。
 
年金による不足分をカバーするのが、自身で用意する老後資金ですが、定年を迎えた時点での金融資産と退職金、確定拠出年金の合計額がそれに該当します。るなさんの世帯では2280万円。この数字もしっかり認識して、それがどのくらいのペースで減っていくのか(実際の数字は図表に表示)、これも数字でイメージしてもらうとわかりやすいと思います。
 
話題となった「老後の不足額2000万円」を引き合いに出せば、老後資金は2000万円に届きますが、一般世帯より生活水準が高いため、結果的に足りなくなりそうだということも、老後について話し合うための、ひとつの材料になると思います。るなさん自身の健康面の不安、お互い節約を行う必要があることなども、併せて伝える。その上で、ご主人に老後の備えについて、関心を持つ、現状を認識してもらうよう話してみてください。
 
今現在、貯蓄もでき、収支がしっかり回っているため、なかなか関心は向かないかもしれません。しかし、これまでご夫婦で歩んできた紆余曲折、ご苦労のあった時期と同様に、老後も乗り越えないといけない難局であることを、ご夫婦で共有し、そのために協力し合うことがもっとも重要だと考えます。
 

相談者「るな」さんから寄せられた感想

このたびはありがとうございます。漠然と、ぼんやりと考えていたことに対して、実際に具体的数値と根拠を示していただき、とても有意義なことと実感しております。結婚した頃、30代だった二人には、「老後」という言葉はどこか自分とは縁遠いもの、いつか来るけどまだまだ遠いもの、目の前の生活に必死でそれはずっと先のこと。それが実際目の前に突然ハッキリと姿を現しようやく「現実」のものとなりました。とうとう自分にも老後が現実にやってくるのだと。恥ずかしながら、こんな年齢になってようやく気が付かされたのです。単に金銭の問題だけではなく、夫婦の関わり方の問題、今までの人生の進め方が正しかったのか、間違っていたのか、それを真剣に考えるきっかけにしていただいたと思います。想定外のことが起こってしまうのが人生であり、それを乗り越えて明るい老後を楽しめるようになりたい、そのために具体的に夫婦で話し合っていこうと思いました。具体的には「生活費の見直し」であると示していただいたので良かったです。
これこそ必要なものなのでしょう。夫との関わり方も変えていかねばなりません。ある意味第二の人生を始めるつもりで取り組んでいこうと思います。ありがとうございました!


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教えてくれたのは……
平野 泰嗣(ひらの やすし)さん
 
 

 

ファイナンシャル・プランナー、キャリアコンサルタントとして活躍。FPの妻と2人でFPオフィス Life & Financial Clinicを創立し、「自分らしく生きること」をモットーにライフ・ファイナンス・キャリアの3つの視点でのアドバイスをする。中小企業診断士として経営者・従業員のライフプラン支援も行っている。著書に『30代夫婦が働きながら4000万円の資産をつくる 考え方・投資のしかた』(明日香出版社)。All Aboutマネーの連載『ふたりで学ぶマネー術』も人気


取材・文/清水京武


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