宝塚ファン/宝塚歌劇団 トップスターの変遷

宙組トップスター・朝夏まなと―退団(4ページ目)

宙組トップスター・朝夏まなとさんが、2017年11月19日、『神々の土地』、『クラシカル ビジュー』の千秋楽(東京宝塚劇場)に、宝塚歌劇団を退団します。朝夏まなとさんの新人時代から今に至る軌跡をたどります。

桜木 星子

執筆者:桜木 星子

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朝夏まなとさん。彼女の魅力はナチュラルであること。自然体なのが個性。だから、どんな色にも染まれました。「ココは、たぶんこう来るだろう……」といった予測も与えず、悪役や三枚目でさえアク抜きされた作りで、毎回毎回新鮮でした。「朝夏まなと」というおいしい素材は、共演者やスタッフという旨味と、稽古という工程で、いつも最高の料理に仕上がりました。

様々な役を演じましたが、やはり1番似合うのは、正義感あふれる青年。誠実で温かく大らか。それは、学年を重ねても若々しく爽やかでした。

『Applause』

(C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

また、恵まれた容姿と、内からあふれる明るさは、豪華な衣装のコスチューム・プレイも似合いました。女役のスカーレット、美しい貴公子・フェルゼン、エジプトの武将・ラダメス、黄泉の帝王・トート……。全く色の違う宝塚の代表的な大役を、こんなにも与えられたスターは珍しいでしょう。そのどれもを吸収して、朝夏まなとの色に輝かせました。

レヴューでも名ダンサーとして楽しませてくれました。6名の男役と絡んで銀橋で踊った『カノン』の「パシオン・ネグロ」。音符のように流れる『Amour de 99!!』の「パッシィの館」。スタイリッシュにセクシーにエレガントに魅せた『HOT EYES!!』のすべて。「木星」に乗せて踊った最後の黒燕尾。そして、朝夏まなとさんを中心とした宙組の明るさ、溌剌さを楽しませてくれ、劇場中が一体となって盛り上がった名場面、『VIVA!FESTA!』のソーラン節。バレエで培った技術と、持ち前のセンスは、多くの名場面を作りました。

宝塚ファンで有名なAKB48の渡辺麻友さんも、朝夏まなとさんの熱狂的ファン。宙組の組子たちにも「まぁ様」と呼ばれ、慕われ愛されました。トップスターという手の届かない頂きにいながらも、スタッフや下級生の隅々までを気遣い包む温かさ。その人柄は、いつも舞台に現れていました。

また、朝夏まなとさんと同時に、実力があり宙組の戦力である娘役さんが4名も退団します。瀬音リサさん(2007年入団)、彩花まりさん(2009年)、涼華まやさん(2009年)、伶美うららさん(2009年)。

中でも、朝夏まなとさんの相手役を何度も務めた伶美うららさんは、若くして大人の女性ができる美しい娘役として、とても貴重な存在でした。匂い立つ色香で熱演した『翼ある人びと』のクララ、ゴージャスで圧倒的な存在感を見せた『王家に捧ぐ歌』のアムネリアス、しっとりと気品にあふれる『神々の土地』の大公妃イリナ。まだまだ活躍して欲しかっただけに、退団が残念です。


舞台は楽しいもの。舞台は楽しませるもの。そう感じさせてくれた宙組トップスター・朝夏まなとさんの時代が、もうすぐ終わろうとしています。

宙組の太陽と呼ばれた朝夏まなとさん、そして退団者の皆さん、ありがとう。



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