宝塚ファン/宝塚歌劇団 トップスターの変遷

宙組トップスター・朝夏まなと―退団(3ページ目)

宙組トップスター・朝夏まなとさんが、2017年11月19日、『神々の土地』、『クラシカル ビジュー』の千秋楽(東京宝塚劇場)に、宝塚歌劇団を退団します。朝夏まなとさんの新人時代から今に至る軌跡をたどります。

桜木 星子

執筆者:桜木 星子

宝塚ファンガイド


朝夏まなと 宙組トップスターに

宙組トップスターお披露目公演『TOP HAT』。ショーの要素が多いこの名作で、朝夏さんの最大の魅力である明るさや華やかさ、定評のあるダンスを存分に発揮しました。花組時代にも組んだ経験のある実咲凜音さんとの相性も良く、偉大な新トップスターの誕生となりました。

『TOP HAT』

(C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

大劇場お披露目は、歌劇「アイーダ」をモチーフにした大作『王家に捧ぐ歌』。歌唱力も素晴らしく、響きのいいよく通る声で名曲を聴かせ、地下牢の場面では観客を泣かせました。若く溌剌としたラダメス将軍は最高に煌めき、センターに立つ人のオーラに、あらためて圧倒された作品でもありました。

コスチューム・プレイの多い朝夏さんにとって久々のスーツ物が『メランコリック・ジゴロ』。ジゴロで詐欺師のダニエルを、リラックス、かつ誠実に演じました。男役二番手(真風涼帆)との芝居が多いのも、ファンを楽しませました。

トップになって初のオリジナル作品『Shakespeare~空に満つるは、尽きせぬ言の葉~』では、文豪、ウィリアム・シェイクスピアを演じました。シェイクスピアの芝居に賭ける人生、苦悩や喜びを、生き生きと爽やかに熱演しました。

『エリザベート-愛と死の輪舞-』

(C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

そして、『ベルサイユのばら』に続く宝塚の代表作、『エリザベート-愛と死の輪舞-』の初演から20周年という伏し目の年に、トートを演じる機会に恵まれました。

これまでにトートを演じたトップスターは8名。威厳と自信に充ち溢れ、孤高の権力者という印象が多い中、朝夏さんのトートは、力強くも、純粋でたおやかな若きプリンス。艶のある自然な声、手をはじめしなやかな一つ一つの動き、エリザベート(実咲凜音)に拒絶された時に見せる弱さ。ダイナミックなフィナーレ・ナンバー。一瞬たりとも目が離せない豊かな表現力。豹のように妖しく鳥のように優雅で、美しく魅惑的な「黄泉の帝王」となりました。

『バレンシアの熱い花』
では、身分違いの恋や復讐を共にする同志との友情を軸に、復讐に燃えるフェルナンドを熱演。情熱的なスパニッシュダンスも素敵でした。

浅田次郎氏原作の現代劇『王妃の館-Château de la Reine-』の小説家・北白川右京役では「こんな役もしっくりくるんだ……」と新しい顔に驚かされました。個性的な人物たちが織りなすコメディで、朝夏さんのはじけた演技は客席を大いに沸かせました。

コンサート『A Motion』では、J POPSのコーナーで、新たな朝夏まなとを見せ、宝塚の名曲コーナーでは、これまでの集大成を。レベルの高い歌とダンスに、楽しいトークも交え、朝夏まなとさんの魅力満載のステージでした。

そして最後の作品『神々の土地』で、ロマノフ王朝のために翻弄したドミトリー・パブロヴィチ・ロマノフを演じました。皇族であるがゆえの苦悩や、忘れられない女性への想いを繊細に表現し、翳りのある成熟した男の魅力で、男役の有終の美を飾りました。

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