『Amour de 99!!』

(C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

2017年4月30日(日) 、宙組トップ娘役・実咲凜音さんが、ミュージカル・コメディ『王妃の館 -Château de la Reine-』、スーパー・レビュー『VIVA! FESTA!』の千秋楽(東京宝塚劇場)に宝塚歌劇団を退団しました。


実咲凜音 主な舞台歴

2009年 宙組『薔薇に降る雨』『Amour それは…』で初舞台

花組時代
2010年『麗しのサブリナ』新人公演・サブリナ(本役・蘭乃はな)*新公初ヒロイン
2010年『CODE HERO』ヴァネッサ *バウ初ヒロイン
2011年『ファントム』幼いエリック、新公・クリスティーヌ(本役・蘭乃はな)*ヒロイン
2011年『カナリア』アジャーニ *ヒロイン
2012年『復活』新公・カチューシャ(本役・蘭乃はな)*ヒロイン
2012年『近松・恋の道行』柏屋さが *ヒロイン

宙組トップ娘役時代(トップスター・凰稀かなめ)
2012年『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ
2013年『モンテ・クリスト伯』メルセデス   
2013年『うたかたの恋』マリー・ヴェッツェラ
2013年『風と共に去りぬ』メラニー・ハミルトン
2014年『ロバート・キャパ 魂の記録』ゲルダ・ポホライル(ゲルダ・タロー)
2014年『ベルサイユのばら―オスカル編―』ロザリー
2014年『ベルサイユのばら―フェルゼンとマリー・アントワネット編―』マリー・アントワネット(主演は朝夏まなと)
2014年『白夜の誓い―グスタフIII世、誇り高き王の戦い―』ソフィア・マグダレーナ・ア・ダンマルク

宙組トップ娘役時代(トップスター・朝夏まなと)
2015年『TOP HAT』デイル・トレモント
2015年『王家に捧ぐ歌』アイーダ
2015年『メランコリック・ジゴロ』フェリシア
2016年『Shakespeare ~空に満つるは、尽きせぬ言の葉~』アン・ハサウェイ
2016年『エリザベート―愛と死の輪舞―』エリザベート
2016年『双頭の鷲』王妃
2017年『王妃の館』 桜井玲子

新人時代

実咲凜音さんは、2007年、宝塚音楽学校に入学しました。同期生に、月組トップ娘役・愛希れいかさん、元星組トップ娘役・妃海風さんらがいる95期生です。
2009年、宝塚歌劇団に入団し、宙組『薔薇に降る雨』『Amour それは…』で、初舞台を踏みました。
愛称は「みりおん」「りおん」。

初舞台後、花組に配属された実咲凜音さん。研2で新人公演ヒロイン、バウホール公演ヒロインに抜擢されます。中でも『ファントム』新人公演のクリスティーヌでは歌唱力の高さを、『カナリア』のアジャーニでは、伸び伸びとした演技を評価されました。
そして2012年、宙組に組替えとなり、わずか研4で、9年上の凰稀かなめさんの相手役である宙組トップ娘役に就任します。



凰稀かなめさんの相手役に

トップ・コンビお披露目公演は『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』。ショートの鬘もよく似合い、ラインハルトの秘書官、ヒルダを堂々と好演。フィナーレのデュエットダンスも可愛らしく、可憐なトップ娘役の誕生となりました。

『モンテ・クリスト伯』のメルセデスで、我が子を守る母の強さを熱演。『うたかたの恋』では、純真無垢な少女マリーの一途な愛で、観客を泣かせました。
優しく気品あふれる『風と共に去りぬ』のメラニーは実咲さんにぴったり。たおやかな存在が印象的でした。『ロバート・キャパ 魂の記録』では、戦場カメラマン、ロバート・キャパを支える知的で勇敢な女性、ゲルタ・タローを好演し、演技の幅を広げました。

宝塚歌劇団100周年の2014年には、宝塚の代表作、『ベルサイユのばら』に続けて二度出演し、革命家ベルナールの妻・ロザリーと、フランス王妃マリー・アントワネットを演じました。清楚なロザリーに対し、気高いアントワネット。王妃としての、母としての想いを涙ながらに吐露する場面、続く断頭台へと向かう凛とした姿は絶品でした。

凰稀かなめさんの退団公演『白夜の誓い―グスタフIII世、誇り高き王の戦い―』では、ソフィア・マグダレーナ・ア・ダンマルクを。グスタフIII世との絡みが少ない中、王妃としての苦悩や愛情を表現しました。

朝夏まなとさんの相手役に

『TOP HAT』

(C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

凰稀かなめさん退団後は、新宙組トップの朝夏まなとさんの相手役に就任しました。
実咲さんにとって朝夏さんは、花組時代を共に過ごし、バウホール公演初ヒロインの相手役であり、花組から共に宙組にやってきた朋友。

その二人のお披露目は、フレッド・アステア&ジンジャー・ロジャースの代表作『TOP HAT』。粋でお洒落なロマンティックコメディーは、お互いを誰よりも知っている二人にぴったり。「Cheek to Cheek」のエレガントなデュエットダンスをはじめ、息の合った舞台は、客席を大いに沸かせました。

朝夏&実咲コンビの本公演お披露目は『王家に捧ぐ歌』。実咲さんは、敵国の将軍ラダメスを愛してしまったアイーダを熱演しました。初演では男役(安蘭けいさん)が務めた、出ずっぱりで歌い続ける役ですが、力強い歌で精悍な王女を作り上げました。黒塗りもエキゾチックで魅力的でした。

時代に翻弄されるヒロインが多い中、等身大の女の子が可愛かった『メランコリック・ジゴロ』のフェリシア。自然体で、生き生きとした演技力が光りました。
シェイクスピアの妻、アンを演じた『Shakespeare ~空に満つるは、尽きせぬ言の葉~』では、妻になってからの揺れ動く心を繊細に表現しました。

そして、自身が「演じてみたい」と願っていた『エリザベート―愛と死の輪舞―』のエリザベート。溌剌とした少女の頃から、孤独に覆われた最期の時まで、エリザベートの生涯を巧みに描きました。名曲「私だけに」のラストの高音の安定感は、歴代エリザベートの中でも断トツ。圧倒的な歌唱力が「歌える娘役ってやっぱりいい!」と改めて思わせてくれました。

宝塚のトップ・オブ・トップ、専科の轟 悠さんの胸を借り、上質な芝居を見せてくれたジャン・コクトー原作の『双頭の鷲』。エリザベートとはまた違う、耽美で狂気な世界に生きる孤高の王妃を、見事に演じました。

退団公演は、浅田次郎氏原作『王妃の館』。色々な悲劇の王妃を演じてきた実咲凜音さんの最後の役は、なんと日本人、ツアーコンダクターの桜井玲子。『カナリア』や『メランコリック・ジゴロ』を思い出させる、実咲さんの丁寧で誠実な芝居が、コメディーの美味しさを引き立てました。最高の笑顔で幕を閉じる、こんなサヨナラ公演もいい…。そう思える出色の出来でした。



実咲凜音の魅力

『エリザベート』

(C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

東千晃さん(元雪組、元星組トップ娘役)や紺野まひるさん(元雪組トップ娘役)を彷彿させる楚々とした美人の実咲凜音さん。在団期間の半分以上を、トップ娘役として活躍しました。

近年のトップ娘役の中では抜群の歌唱力の持ち主で、エトワールは4度も経験し、ショーでも一人で歌う場面が多かったです。中でも、『シトラスの風』や、実咲凜音ミュージック・サロン『Million Carat!』で披露した『ジャンニ・スキッキ』のアリア、「O mio babbino caro」の伸びやかな歌声は、鳥肌が立つほど素晴らしいものでした。

役に合わせて歌声のトーンを変えたり、台詞から歌へのチェンジも自然。自由自在に音を奏で、どんな高音を出しても、歌っている顔は涼しく美しく、まさに歌姫。『王家に捧ぐ歌』や『エリザベート―愛と死の輪舞―』といった、娘役が歌う比重のとても高い作品が上演できたのも、実咲さんの歌唱力あってのことでしょう。

宝塚では男役が主演をすると決まっていますが、原作では、または外部の舞台では主役となるマリー・アントワネット、アイーダ、エリザベートなどの大役を次々と演じたのも、特筆すべき点。スレンダーな体形ながら凛とした姿で、堂々とパワーあふれる舞台を作り上げました。

明るくて爽やかで、可愛らしい役から大人の役まで何でもござれの娘役ですが、演じるどの女性にも、優しさと気品がありました。そしていつも感じるのが、丁寧できめ細やかな演技。だからこそ男役たちが、より豪快に演じる事ができるのでしょう。

花組時代に芽を出し、演技巧者、凰稀かなめさんに育てられ、旧知の仲、朝夏まなとさんと共に大きい花を咲かせた実咲凜音さん。誠実に咲かせた花は実となり、後進という若い芽も育てました。
清く正しく美しく――。実咲凜音。そのままの娘役でした。

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