不動産業には開発・分譲業、流通業、賃貸業、管理業などがあります。このうち、宅地または建物の取引について、一定の行為を「業として」行なうのが「宅地建物取引業」です。
【宅地建物取引業】
- 売買または交換(分譲業)
- 売買、交換または貸借の代理もしくは媒介(流通業)
宅地建物取引業者とは何らかの関わりをもつ人が大半
国土交通省や一般財団法人不動産適正取引推進機構がまとめたデータをもとに、宅地建物取引業者および宅地建物取引士の動向についてみていくことにしましょう。
宅地建物取引業者数は3年連続で増加
1970年代半ばまで10万以下だった宅地建物取引業者数はバブル期に急増し、1991年度のピーク時には14万4064となりました。その後はおおむね減少傾向が続いているものの、2014年度から2016年度にかけて3年連続で増加し、2016年度は167業者の増加でした。2016年度末(2017年3月31日)時点の業者数は、国土交通大臣免許(2つ以上の都道府県に事務所がある場合)が2431、都道府県知事免許が12万985で、合計12万3416となっています。
ただし、1997年度からの20年間では大臣免許が9.9%増加しているのに対し、知事免許は13.2%減少しています。数のうえでは全体の2%ほどにすぎない大臣免許の宅地建物取引業者ですが、その多くは大手であり、不動産市場での存在感は年々高まっているといえるでしょう。
その一方で、個人業者(個人でも免許を受けられる)の数は大きく減っています。1975年頃は全体の半数近くを個人業者が占めていましたが、2017年は13.7%まで減少しました。個人の大臣免許もかつては10業者以上ありましたが、2012年度以降は1業者を残すだけになっています。
なお、ここ数年は毎年5000前後の宅地建物取引業者が廃業(廃業処理および期限切れ失効)しているようです。他の業種と比べてどうかは分かりませんが、1年間でおよそ25業者に1業者が廃業しているため、決して安定した業界だとはいえません。
国土交通省および一般財団法人不動産適正取引推進機構の公表資料をもとに作成
都道府県別の宅地建物取引業者数は大きな格差
本店所在地による宅地建物取引業者数(2016年度末時点)を都道府県別にみると、最も多いのが東京都の2万4630、次いで大阪府の1万2608となっています。それに対して少ないのは鳥取県の294、島根県の384で、この2県を含む16県が1000未満です。もちろん、人口の多いところほど宅地建物取引業者の数も多くなるわけですが、大阪府よりも人口の多い神奈川県は、業者数が大阪府の3分の2弱でしかありません。大臣免許では東京都に本店をおく宅地建物取引業者が圧倒的に多く、神奈川県の勢力図にも影響しているのでしょう。
ちなみに人口あたりの宅地建物取引業数を計算してみたところ、多いのは東京都、大阪府、京都府、香川県、徳島県の順。少ないのは岩手県、鳥取県、秋田県、島根県、青森県の順でした。ただし、支店・店舗などは考慮していないため、生活のなかでの実感とは違うかもしれません。
また、個人業者の数だけをみると、大阪府には東京都の2倍近くの個人業者が存在し、さらに東京都よりも愛知県のほうが多いようです。宅地建物取引業者の組織形態にも地域ごとの特色があるのでしょうか。
宅地建物取引士資格の登録者数は100万人を超える
毎年実施される宅地建物取引士(2015年4月1日に「宅地建物取引主任者」から変更)の資格試験ですが、ここ数年の受験者数は18~19万人台で推移していました。しかし、2017年10月15日に実施された試験は20万9145人が受験し、9年ぶりに20万人を超えたようです。資格試験に合格し、都道府県知事の登録を受け、さらに宅地建物取引士証を交付された者が「宅地建物取引士」になりますが、資格試験に合格しただけ、あるいは合格後に資格登録を受けただけの状態にとどまる人も少なくありません。
仕事のためではなく、自分のために不動産の勉強をして試しに受験する人も多いのでしょう。
毎年の試験合格者は3万人前後ですが、そのうち都道府県知事の資格登録を受けるのは7~8割程度です。ただし、いったん登録すれば欠格事由に該当しないかぎり有効なため、その総登録者数は年々増え続けており、2016年度末時点で100万人を超えました。
成人のおよそ100人に1人は資格登録者ですから、みなさまの親族や友人・知人などにも少なからず該当する人がいるでしょう。
国土交通省の公表資料をもとに作成
ただし、資格登録者のなかで宅地建物取引士証の交付を受けている(宅地建物取引士になっている)のは50万人ほどにとどまり、さらに宅地建物取引業に従事している宅地建物取引士は30万人ほどにすぎません。
その一方で、宅地建物取引業の従事者数は50万人強ですから、その4割以上が宅地建物取引士ではないままで不動産取引を取り扱っていることになります。
宅地建物取引士であればそれで安心できるというわけではありませんが、資格を受けることである程度の自制心は生まれます。家を探すときの営業担当者に対して、宅地建物取引士なのかどうかを聞いてみるのもよいでしょう。資格をとろうとする意識を後押しすることにもなります。
監督処分を受けるのは年間0.2%ほど
宅地建物取引業法の規定に違反すれば監督処分を受けることになりますが、過去10年間の処分件数をみると、最も多かったのが2008年度の382件、少なかったのが2015年度の227件です。2016年度は251件(免許取消168件、業務停止処分55件、指示処分28件)で、宅地建物取引業者数の全体に占める割合は0.2%ほどにとどまっています。
このうちの多くは会社が行方不明になったこと(事務所不確知)や、営業保証金を供託できなくなったことなどが原因であり、重要事項の説明に問題があったり不正や著しく不当な行為をしたりして処分を受けたのは30件未満にすぎません。
ただし、監督処分以外の「勧告等」が697件(2016年度)あるため、一定の注意はしなければなりません。「強引な営業」などはそれだけで処分されるわけではありませんから、宅地建物取引業者の営業担当者をしっかりと見極めることも意識するようにしましょう。
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