副業可能な時代に直面するメンタルリスクとは?
副業でやりたいことを実現。楽しいからこそ疲労の蓄積に気づきにくい
一つの組織の社員であることにとらわれず、やりたいことや得意なことを活かしてビジネスのチャンスを広げ、給料以外の報酬を得ていくことは、人生の喜びと生きがいを増やすことにつながります。
ところがその一方で、副業に時間を割くことは自分を「過労」に追い込み、心身の健康を壊すというリスクもあるのだということを、意識しておく必要があります。
やりたいことでも、働く時間が増えれば疲労は蓄積する
副業に時間を割くということは、本来は休養するべき時間に働き続けるということです。しかも、インターネットを通じて1日中サービスを提供できるような事業を始めると、夜も昼もなく副業に意識を傾けざるをえない状況になるかもしれません。人はやりたいことに夢中になり、しかもその活動がうまくいき、報酬がついてくることを実感すると、強い快感を覚えます。そして、その快感を繰り返し得ることを求めて活動にのめり込みます。その時には心身にエネルギーが満ち溢れ、「今、まさに生きている!」というポジティブな感情を感じられるでしょう。
しかし、ポジティブな感情を感じていても、働き過ぎると疲労が蓄積し、心身の不調につながってしまいます。先週までは意欲的に働いていたのに、翌週から疲労が噴出し、気力がわかなくなってしまう、といったことが起こるかもしれません。
したがって、仕事にのめり込んでいる時にこそ、心身が発する“声”に耳を傾けることが大切です。では、心身の“声”に気づくには、どのようなポイントを意識するとよいのでしょう?
楽しい副業でも、焦りや苛立ちが増えてきたら要注意!
まず、いつもよりも焦りや苛立ちが強くなっていないか、よく振り返ってみましょう。時間を忘れて仕事に意識と時間を傾けるようになると、心身の興奮状態が持続し、心を落ち着けるゆとりをもてなくなってしまいます。そうして次第に、敵襲に備えるかのような過敏な状態になり、焦りや苛立ちの気持ちが強くなっていきます。
その結果、必要もないのに自分にプレッシャーをかけてさらに頑張り過ぎたり、他人や物事に怒りを募らせたりしてしまうことがあるのです。
たとえば、「〇日までに新しいサービスを開始しなければ」「サイトのアクセス数を〇日までに〇倍に増やさなければ」といった焦りに追われ、次々に目標を設定していき、常に副業の拡大に意識を向けてしまう……。
このように夜も昼もなく仕事に意識と時間を費やしていると、休日のひとときをのんびり過ごしているパートナーや家族に対して、不満を感じるようになるかもしれません。あるいは、日々の暮らしの中で生じる小さなトラブルに、過剰に苛立ちを感じるようになる可能性もあります。
不眠・疲労感の持続・体調不良のサインに気づく
夜中まで仕事をしていつの間にかそのまま寝てしまう。こうした生活で心身の健康は維持できていますか?
興奮した状態が続いているため、就寝時間になってもなかなか寝付かれず、眠りに入っても浅い睡眠を繰り返す。短時間で目覚めてしまい、疲れを翌日に持ち越し、本業に取り組む日中に体の重さを感じる。こうした睡眠の乱れはよく生じます。
同時に、体調にも変化が表れます。心身の緊張が持続し、肩や腰、首回りの痛みが取れない、頭痛が続いている。胃が重くすっきりしない、お腹の調子がすぐれない。肌が荒れやすく湿疹が治らない。こうした症状が続き、いつも不快に感じているという方も少なくありません。
また、家庭や本業でやるべき大事なことを忘れ、ミスを連発してしまう。焦りや苛立ちを晴らすために、お酒やたばこ、カフェインなどの依存性のある物質にはまる。買い物、ゲームなどの快感を喚起させる依存的な行為にはまる。こうした行動が増えていき、さらに心身を緊張と興奮に追い込んでいる方も少なくないと思われます。
副業に取り組む人は「休むという活動」をあらかじめ設定する
では副業に取り組む人は、心身の健康のバランスをどのように調整していけばよいのでしょうか?何よりも大切なのは、「休むこと」です。意欲に燃えて何かに取り組んでいる時こそ、意識して休む時間を確保することが必要です。意欲に燃えている時には、疲労を感じないため睡眠時間を削っても頑張れてしまいます。
数日間の短期的な取り組みであれば、心身を臨戦態勢に追い込んで頑張ることの意味も効果もあります。しかし、長期的に毎日続けていく副業に対して、興奮を持続させて臨んでしまうと、心身にダメージが生じてしまいます。
繰り返しますが、やりたいことに取り組み、ビジネスとして報酬につながるようになると、人は時間を忘れてのめり込んでしまいます。そして、のめり込んでいる時には、疲労に気づきにくいのです。したがって、心身の健康を維持するには、きちんと時間をとって「休むこと」が不可欠です。
副業は自分がやろうと思えば、何時間でもできてしまう活動です。したがって、「〇時になったら終了する」という時間の区切りをあらかじめ設けておき、「もう少しやっておきたい」と思ってもきっぱり仕事を終えて、パソコンやスマホ、タブレットを見ないようにする……。
こうしてきっぱりと「休むという活動」にシフトすることが大切です。