50代で初めてマンションを購入する人の割合は
一般的に30代~40代といえば、結婚して子どもも生まれ、ある程度の自己資金もたまってきており、そろそろ初めての住まいの購入を考え出す年代でもあります。60才または65才の定年前までにローンを完済するためにも、30代~40代くらいのうちにローンを組んだ方がよい、という考え方も根強くあると思います。一方、50代を迎えてから初めてマンションを購入する人も意外と多いことをご存知でしょうか。「初めて分譲マンションを購入する世帯主の年齢」(図1)では50代は8.7%を占めています。ということは、100人中約9人は50代ということになり、思ったより多いという印象ではないでしょうか。
50代で住み替え、買い替えでマンションの購入を検討している人も多いかと思います。いずれにしろ、定年後もずっと住むことを視野に入れたマンション選びをしたいですね。
50代でマンションを購入するメリット:
より目的に合った物件選びができる
50代といえば、まだしばらく子どもの教育資金が必要ですが、子育ても終盤に入り、今後かかる費用のメドが立ちやすくなっている頃でしょう。自分たちの老後の暮らしについて真剣に考え始める年代でもあり、例えば30代で購入する時よりも、これからの生活を具体的に想定しやすいので、予算も立てやすく、またより目的にあった住まい選びができる年代ともいえます。まずは老後の生活資金も含め、困らずに暮していけるよう予算立てをしっかり行い、無理のない範囲で、いくらのマンションなら購入できるか把握することが大切です。それは、モデルルームに足を運ぶことよりまず先にやっておくべきことと言えます。
さて、以上を踏まえたうえで、実際にマンションを購入する時に注意すべきことを見ていきましょう。
無理な資金計画は避け、老後破産を防ぐ
住宅ローンの返済期間は最長35年、完済時の年齢を80歳までとしている金融機関も多くあり、50才で借りて80歳に完済するというローンも組めてしまうのが現状です。しかし定年のない個人事業主ならまだしも、いくら銀行が貸してくれると言っても、定年のあるサラリーマンが80才まで返済しつづける計画はとても危険ではないでしょうか。50代のマンション購入では、長いローンを組まずとも購入できるような資金計画が必須です。初めてのマンション購入であればある程度の頭金があることが前提となるでしょうし、もし買い替えであれば、すでにお持ちの不動産の売却資金を当てることができますね。ご家庭ごとに事情があると思いますが、ぜひご夫婦で、無理がない計画となっているか、しっかりチェックしあってください。
高齢になってから破産状態の生活を送らざるを得なくなる「老後破産」が注目されていますが、そのようにならないためにも50代でのマンション購入ではより慎重に、マンション購入に充てる費用について考えていただきたいと思います。
予算によっては中古マンションや戸建て住宅も視野に 現在、新築分譲マンションの販売価格はとても高騰しています。参考として(株)不動産経済研究所が公表している2017年8月に首都圏で販売されたマンションの1m2当たりの単価は87.1万円でした。すなわち専有面積66m2の平均的な広さのマンションを購入するためには5748万円かかることになります。
もし首都圏でマンションを探している場合は、このようにかなり分譲価格が高騰しているため、一戸建てや中古マンションも視野に入れれば、同じ予算でもっとよい場所、もしくは広い家を得ることができる可能性もあります。
無理して買って、のちのち後悔しないように、「新築分譲マンション」だけにマトを絞らず、第二希望、第三希望までもって、よい選択ができるよう広い視野を持って探していただきたいと思います。
通勤・通学の便の良い立地を選ぶ
50代になって購入する場合は、定年後もずっと住む「終の棲家」として購入される方が多いと思います。その場合、多少不便でも緑の多い環境がよいと考えるかもしれません。しかし、定年退職までまだ10年近く通勤しなくてはなりませんし、子どもも高校生や大学生くらいの年齢で、まだ通学しているご家庭が多いでしょう。そのため、50代でマンションを購入する時には、やはり通勤の便の良さ、駅からの距離などを重視していただきたいと思います。駅から近いということは、定年退職後、高齢になってからも外出しやすい環境と言えます。外出しやすい環境は、健康的な暮らしを維持するためにも大切なことです。
また、終の棲家としてではなく、いつか転売や賃貸の可能性があるのであれば、なおのこと、マンションの立地選びは重要です。
マンションの共用施設を吟味する
マンションの魅力はその共用施設にあるといってもよく、最近の新築分譲マンションでは、豪華なエントランスホールやロビー、子どもを安全に遊ばせることができるキッズルーム、住人専用の公園など、魅力的な施設をそろえているものがたくさんあります。しかし、それらの施設の維持費は住民全員で負担していくものです。例えば子どもがすでに大きくなっている50代のファミリーにとって、キッズルームはなくてもよい施設のひとつとも言えます。一方で、例えば集会室があれば、高齢の住人が集まって囲碁や将棋を打ったり、社交ダンスを習ったりと老後の趣味や楽しみの幅が広がる可能性もあります。
維持費や管理の手間もふまえて適切な広さの住戸を選ぶ
50代でマンションを購入する時にはお子さんもすでに大きくなり、あと何年後かには進学や就職で家を出ていくことでしょう。購入時には子ども部屋が数室必要かもしれませんが、子どもたちがいなくなった後にその部屋をどう使うかイメージできていますか?住戸面積は広ければ広いほど光熱費もかかり、掃除などの維持管理も大変になります。反対に専有面積がコンパクトな住戸であれば、維持費や管理の手間を削減できるほか購入費用を抑えることもできます。高齢になっていろんなリスクを背負わないためにも、子どもが巣立った後の生活を視野に入れた、適切な広さの住戸、間取りを選んでいただきたいと思います。
どの程度の広さが適切なのか、参考に国が算出した家族構成に応じた住まいの広さを下に示します(表1)。
この表の中で「都市居住型」が都市部のマンションに該当します。夫婦二人暮らしなら55m2程度が理想の広さとなります。参考程度にご覧ください。
バリアフリーになっているか
定年後もずっと住む家として、バリアフリーのチェックも忘れずにしてください。最近のマンションは基本的にバリアフリー仕様になっており、高齢になっても住みやすくなっています。しかし念のため共用部と住戸内とそれぞれ下記のチェックをしてください。■マンションの共用施設のチェック項目
マンションの前面道路からエントランスホールに入りエレベーターの乗り場まで、またエレベーターを降りて自宅の玄関まで、車いすでもスムーズにいけるかどうか確認してみてください。もちろん、上層階に住むのであればエレベーターは必須です。
床に段差がないこと、段差があれば緩やかな勾配のスロープが併設してあること、車いすと人がすれ違えるよう廊下の幅が十分にあること、さらに壁に手すりがついていればなおよいでしょう。
■住戸内のチェック項目
まずは床に段差がないこと。マンションでもメゾネット形式といい住空間が上下階に分かれている間取りや、空間に広がりを持たせるためリビングを一段下げるなど、室内に段差を設けた間取りもありますが、日常的に階段や段差を使わなければならない間取りは避けた方が良いでしょう。
廊下は車いすが通れる幅があることや、必要な時に手すりを取り付けられるよう玄関や廊下の壁に補強下地が入っているとよいでしょう。寝室は、なるべくなら日当たりの良い場所にあること、寝室に近い場所にトイレがあることもぜひチェックしてください。老後にその家で昼間の長い時間を過ごすことを想像し、快適な生活ができる間取りを選んでいただきたいと思います。
後悔しないマンション選びを
以上見てきたように、50代になってからのマンション購入には、30~40代での購入とはまた異なるチェック項目があります。購入してから後悔することがないようしっかりと計画を立て、定年退職後に安心して快適な暮らしができるマンション選びをしてください。【参考記事】
住まいの広さはどのくらいが基準になる?
50代で住宅購入を実現するには(50歳からのマネープランとお金の貯め方)
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