一戸建て住宅を購入した後のメンテナンスなどにかかるお金を忘れてはいけない
建物の状態を良好に保ち、快適な暮らしをしていくためには、定期的な点検やメンテナンス、修繕、リフォームなどの維持管理が欠かせないのです。
とくに一戸建て住宅では、マンションのような修繕積立金がなく、すべて自分自身で計画的に考え、積み立てや工事を実施していくことが必要です。その費用を捻出できないような資金計画なら、結果的に「一戸建て住宅を購入したことが失敗だった」という事態にもなりかねません。
それでは、一戸建て住宅を購入した後にどのようなお金がかかるのか、その目安や注意点などをみていくことにしましょう。
一戸建ては「修繕にいくらかけるのか」も自由だが……
マンションの場合には、全体の修繕計画をもとに定期的な大規模修繕工事を実施し、そのための費用は毎月、修繕積立金として各区分所有者から徴収されます。それに対して、一戸建て住宅の場合には「いつ工事をするのか」「お金をどこにいくらかけるのか」も本人の自由であり、お金をまったくかけなくても(修繕工事などをせずに放置しても)まわりから怒られることはありません。
老朽化すれば周囲に迷惑をかけることもありますが、それ以前の段階で困るのは、あくまでも自分と家族だけです。
また、建物や敷地の条件によってメンテナンス・維持管理に必要なお金が大きく異なる場合も多いほか、たとえば設備の交換などでも「どのグレードの製品を選ぶのか」によって、数十万円あるいは百万円を超えるような違いが生じる場合があるでしょう。
そのため、「入居後にいくらかかるのか」という目安を明確に示すことはできないのですが、すでに購入している人を対象にしたアンケート調査などから、ある程度の傾向をつかむことはできそうです。
平均的な修繕費用は、築30年超で500万円以上
不動産情報サービスなどを手がけるアットホーム株式会社が2016年に実施した調査(新築一戸建てを購入してから30年以上住んでいる人を対象にした「一戸建て修繕の実態」調査)によれば、平均築年数は35.8年で、修繕費の平均総額は556万円になっています。修繕個所として最も多いのは外壁で、2位は給湯器、3位はトイレとお風呂が並んでいます。修繕をした人の割合が5割を超えているのは、それ以外に屋根、キッチン、洗面台、壁紙・内装、床となっており、いずれも平均して19年~25年程度に1回の頻度です。
ただし、理想的なメンテナンス周期としては10年程度の点検・補修、5~10年程度の塗装や塗り替え、10年程度の交換などが推奨されている部位もあり、実施者の平均年数はそれよりも長めだといえるでしょう。
それに対して、株式会社リクルート住まいカンパニーによる「2016年リフォーム実施者調査」によれば、一戸建て住宅のリフォーム費用は平均で675.7万円、対象住戸の築年数は平均で27.0年となっています。
アットホームによる調査結果よりも高い金額が示されていますが、リクルート住まいカンパニーの調査は「リフォーム費用300万円以上」の人を対象にした集計であり、一部に間取り変更など大掛かりなリフォーム工事も含まれることに注意しなければなりません。
一戸建てvsマンション、お金がかかるのはどっち?
株式会社リクルート住まいカンパニーによる調査によれば、リフォーム費用の平均が一戸建て住宅は675.7万円、マンションは519.4万円という結果も示されています。一戸建てのほうが150万円以上高いのですが、これをみて「一戸建てのほうがお金はかかる」というのは早計でしょう。一戸建て住宅の場合は建物の内と外の全体が対象となるのに対して、マンションの場合は一部の例外を除き基本的に部屋の中だけです。マンションの外壁や屋上、エントランスなどの共用部分や、エレベーターなどの共用施設に対しては、別途に修繕積立金などがかかっているのです。
仮に、マンションにおける毎月の修繕積立金と管理費の中から日常のメンテナンスなどに充てられる費用の合計が1か月あたり1万5千円/1戸だとしましょう。1年では18万円、これが30年間続けば540万円に相当します。それに加えて、管理員などの人件費も負担することになります。
一戸建て住宅の場合には、管理員や管理会社に任せる部分がなく、原則としてすべて自分と家族でやらなければなりません。その代わりに金銭的な面だけで考えれば、入居後のメンテナンス・維持管理費用は一戸建てのほうが割安だといえるでしょう。
一戸建て住宅でも計画的な積み立てが望ましい
一戸建て住宅の購入で失敗しないためには、入居後にかかるお金をしっかり頭に入れておくことが欠かせません。アットホーム株式会社による調査では、「修繕費を毎月積み立てていた」という人が9.9%にとどまるものの、「毎月積み立てるべき」という回答が53.5%に達しました。「積み立てておけばよかったと後悔している人が多いと考えられる」という分析もされています。
毎月の家計に余裕があり、とくに修繕を意識しなくても十分に貯蓄ができる世帯も少なからずあるでしょうが、そうでなければ「いつごろいくらぐらい必要か」を考えながら積み立てていくことが大切です。
どれくらいの費用をかけるのかはあくまでも自分次第ですが、30年間で500万円~1,000万円程度はかかると考えておくべきです。たとえば毎月2万円ずつ積み立てをすれば、1年で24万円、30年で720万円になり、平均的な修繕やリフォームならあまり無理なく対応できるでしょう。
中古住宅の購入では、建物の状態で費用が変わる
中古一戸建て住宅を購入するときには、建物のメンテナンスの状態にも十分に注意しなければなりません。中古住宅を購入してから自分の好みに合わせて全面的なリノベーション工事を予定するような場合は別ですが、しっかりメンテナンスされている建物と、必要な修繕もされていないような建物では、当初に必要なお金が変わってくるのです。
とくに屋根は20年程度で葺き替え、外壁は10年程度で塗り替えをすることが勧められているものの、それを過ぎても何ら手が加えられていない住宅が少なくありません。5年間隔程度でやるべきとされる防蟻処理(シロアリ対策)がされていない場合も多いでしょう。
材質や個々の状態などによっても異なるため一概にはいえませんが、購入を機にそれらをまとめてやろうとすれば、売買代金とは別に数百万円の費用がかかることもあります。もともとある程度のリフォーム工事を予定している場合でも、想定外の追加費用になりかねません。
それに対して、メンテナンスが行き届いた中古住宅なら、あまり手を加えることなく、あるいは自分の好みに合わせるためのリフォーム費用を負担することにより、すぐに快適な暮らしを始めることができます。
可能であれば修繕の履歴などを確認し、購入前のインスペクションなども活用しながら、建物の状態をしっかり見極めるようにしましょう。
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