小学生や中学生の語彙力はまだ不十分……。語彙力の伸ばし方って?
1.読解力の前に必要な「語彙(ごい)力」とは?
語彙力とは、どれだけたくさんの単語(言葉の意味)を知っているかということです。ことわざや四字熟語はもちろん、「目にあまる」などの慣用表現を知っていることも語彙力に含まれます。認知心理学の研究では、英語の長文読解をするときに知らない単語が5%以上あると、文章全体の意味を理解することがほぼ難しくなるということがわかっています(中田達也著「英単語学習の科学」研究社より)。5%というと20語に1語の割合ですが、これを多いと見るか少ないと見るかは別としても、国語でもやはり同じようなことが言えます。
つまり、文章中に意味がわからない言葉があると、文章全体の意味を理解することが難しくなるのです。だから、言葉の意味がわかる「語彙力」というものが、文章読解にはとても重要になるのです。
2.語彙力が不足していると、文章を読むことが難しくなる
中学生向けの国語の教科書(光村図書出版)には、井上ひさしの「握手」という題材が掲載されています。その中に「だが、顔をしかめる必要はなかった」という一文があります。「しかめる」とは、「痛みや不快な気持ちから、表情をゆがめること」です。いつもルロイ修道士はものすごい力で握手をするので手が痛くなるのですが、その時は穏やかな握手をしたので「顔をしかめる必要がなかった」というわけです。
魯迅著/竹内好訳の「故郷」では、「覚えず寂寥(せきりょう)の感が胸に込み上げた」という一文があります。「寂寥」とは、「ものさびしい気持ち」ですから、20年来の故郷を見て、なつかしい気持ちではなく、さびしい気持ちになったのです。
国語で読む力をつけるには、語彙力を高めることが大切
わからない単語が多ければ多いほど、全体の意味を読みとることが難しくなります。先ほどの「故郷」では、「なぜ、さびしい気持ちになったのか」を意識しながら読まないと、物語全体の流れ(ストーリー)がよくわかりません。これは説明文でも同じことが言えます。
つまり、根本的な問題として、語彙力を上げない限り国語力・読解力は向上しないのです。それは、数学で計算問題が解けないのに文章問題や図形の問題といった応用問題が解けるはずがないのと同じです。
3.語彙力を上げるとっておきの方法とは?
では、語彙力はどうやって伸ばせばよいのでしょうか。たとえば、子どもが「斬新(ざんしん)な」という言葉が読めなかったとしましょう。斬新な:これまでにない全く新しいさま
このとき、読み方を教えてあげると同時に、どういう意味なのかも理解させる必要があります。親がわかりやすく教えてあげてもよいですし、子どもに辞書を引かせて自分で調べるようにうながしてもよいでしょう。
いずれにしても、知らない単語やわからない表現に出くわしたとき、「どういう意味なのだろうか」と疑問を持つことが大切です。そして、その意味を自分なりにかみくだいて理解したり、わかりやすい表現に言い換えたり、意味を調べたりする習慣をつけることが大切です。
とにかく、「意味がわからない言葉」があるということを、子どもが認識することが大切なのです。
4.語彙力を伸ばす問題集を一冊買おう
語彙力を上げるためには、たくさんの語彙に触れることが必要不可欠です。そのためには、一冊問題集を買って損はありません。おすすめは、内藤俊昭著「中学生のための語彙力アップ厳選1000語(すばる舎)」です。
例文中の言葉の意味を記号で選ぶ問題と、同じ言葉を別の例文でも答える問題があり、いろいろなパターンの問題を解くことができます。また、ページの裏に答えが書いてあるので、すぐに答え合わせをすることができて、手軽に勉強できる点もおすすめです。
欲を言えば、ガイドの記事「問題集は読め!0からわかる中学・高校のテスト勉強」で紹介したように、問題集にいきなり答えを書き込むのではなく、一通り正解を言えるようにしてから実際に書き込んで解くとよいでしょう。
その際、間違えた問題は赤ペンで答えを書き込まずに、ノートに間違い直しをすることが大切です。こうすれば、テストの直前にそのノートを見直すことで効率よく復習することができるでしょう。
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