北欧の住宅では一室多灯が一般的
越川:眠る直前まで強い白い光のもとで過ごしている人が多いのですが、なぜか、不快だと感じている人は少なく、これが普通だと思っているんです。くろださん:いい事例を知らないからだと思います。以前、スウェーデンで一般のお宅を訪問したことがあるのですが、どの家も一室多灯になっていました。そして、必ずといっていいほど、一人掛けのソファとスタンドライトが置いてありました。
一人掛けのソファの近くにスタンドライトで適度な明るさを確保しましょう
越川:部屋の明るさは控えめでも、本を読むならスタンドライトを追加すればいいし、くつろぐだけならそんなに明るさはいらない。寝室も、ベッドサイドなど、必要な場所に照明があればいい。北欧の住宅では用途によってあかりを選んで点灯しているんですね。
くろださん:ちょっと話がずれますが、北欧で印象的だったのはキャンドルの使い方です。住宅やレストランでキャンドルを上手に活用していました。
越川:暗がりでは、キャンドルのオレンジ色の炎が揺ぐのは効果的ですよね。部屋全体が明るい日本と北欧とでは、どちらがいいあかり環境でしょうか(笑)。新聞を読むのに部屋の隅まで明るくするのは無駄ですね。必要な場所に適切な明るさを配置する「適所適光」になっていればいいわけです。
くろださん:北欧の人たちは、冬が長く、家で過ごす時間が長いからなのか、照明の使い方が上手ですね。ぼんやりしたいときはキャンドルにしてとか、次は作業をするから別のあかりをつけるといった具合に、照明の組み合わせを変えています。
ホテルの照明がくつろげる理由
越川:日本人のほとんどは、照明で部屋の雰囲気が変わることに気づいていないけれど、欧米や北欧の人はよく知っているといえるでしょうね。くろださん:照明の点灯の仕方を変えることで、同じ部屋でも模様替えのような効果があることを欧米や北欧の人たちは知っているのだと思います。照明によって部屋のインテリアを何パターンにも変えて、暮らしを楽しんでいるんです。
越川:これが、まさにインテリアにおけるあかりの役割というところでしょうか。同じ照度でも周囲が暗いと影ができ、浮かび上がって見える。光の当て方次第で表情が違って見えることもあるのに、残念です。
照明を変えると、落ち着いた印象に変えることができるでしょう
くろださん:照明を変えることで、「うちって、こんなにカッコよかったんだ」と驚くと思います。照明でインテリアを操れたら、自宅でくつろぐ時間が増えるのではないでしょうか。私はホテルの照明が好きなんですが、お手本にしてほしいですね。
越川:ホテルの部屋は、ちょっと暗すぎると感じる人がいるかもしれません。実際には、多灯にすることで必要な明るさが得られるようになっているんですが、慣れないから暗いというネガティブな印象だけが残ってしまう。普段の明るさとの差が大きすぎるのでしょう。
くろださん:加えて、一室一灯だと照明の点灯・消灯が1カ所ですむので、便利だと感じているのかもしれません。照明が複数あれば、照明がある場所に行って1つ1つ点灯・消灯をしないといけない。雰囲気はよくなるんですけれどね。
越川:そう、落ち着くんですけれどね。くつろげる空間には適度な暗さが必要であるということを実感できれば、自分の部屋にも取り入れようと思う人が増えて、日本の住宅のあかりもぐんとよくなるでしょう。最近では、複数の照明を点灯・消灯できるスイッチやお手持ちのスマートフォンやリモコンで制御できる製品もあるので、活用するのもいいでしょう。
LED照明なら簡単にできる調色や調光
あかりとくつろぐ空間づくりについて話す、くろださんとガイドの越川
越川:はい、もちろん可能です。照明メーカーのショールームで展示されているのは、すべてLED照明といっていいでしょう。器具のバリエーションも豊富なので、お気に入りのLED照明が見つかると思いますよ。
くろださん:新築やリフォームの際は、ぜひ、多灯にチャレンジして欲しいですね。
越川:多灯にすれば、メインの照明を消したり、メイン以外の照明を点灯することができます。すると、同じ部屋なのに雰囲気が変わることに気がつく方も多いんじゃないかな。
くろださん:「一室多灯にしましょう」といわれてもどうしたらいいかわからない方や、現在、一室一灯にお住まいの方は、調色・調光できるタイプの照明器具を選んでほしいですね。リビングに勉強机を置いているご家庭こそ、調色・調光できるシーリングライトが適していると思います。
越川:LEDが省エネだということは皆さんご存知だと思うのですが、もっと知ってほしい特徴は、1つの光源で光の色や明るさを変えられること。シーリングライトには調色・調光機能を備えたものがたくさんあります。勉強するときは昼光色や昼白色で明るく、団らんのときは電球色にして明るさを控え目にする、なんてこともリモコンで簡単に操作できます。
くろださん:少しゆとりのある方は、スタンドライトを追加して多灯にしてほしいですね。観葉植物とスタンドライトを組み合わせると、葉の影が壁に映って、いい雰囲気をつくり出します。
観葉植物の近くに、下からの照明を組み合わせると、いい雰囲気をつくり出します
寝室の照明からチャンレンジするのがおすすめ
くろださん:それから、私がおすすめしたいのは寝室のあかりを変えること。ホテルのスタンドライトが気に入って、同じような照明を購入しました。自宅のベッドサイドに置いていますが、これがとてもいいんです。越川:どんなデザインの照明器具ですか?
くろださん:四角いセードのシンプルなスタンドライトです。天井の照明を消してスタンドライトのみにすると、「ここはホテル?」っていうくらい部屋が変わりますよ。リビングで子どもが勉強するお宅でも、寝室なら挑戦しやすいのではないでしょうか。いい雰囲気にして、心地よく眠りについてほしいですね。
行灯のような低い位置に照明を配置すると、落ち着きやくつろぎ感が増す効果があります
くろださん:照明もインテリアもパーソナルなもので、正解はないのですが、そもそも自分はどんな空間が快適なのか、わかっていない人が多いと思いますね。
越川:そうかもしれませんね。くろださんは照明について相談を受けたとき、どんなアドバイスをしますか?
くろださん:基本的には好みでいいと思うのですが、「消したときにもかっこいいと思える照明器具を選びましょう」と話しています。大半は点灯していない時間ですし、インテリアを演出するアイテムの1つですから。
越川:冒頭で話をした照明の役割の2つ目ですね。アドバイスの結果、どんな照明器具を選ぶ方が多いのでしょうか。
くろださん:以前は、シンプルなものや小型の照明器具を選ぶ人が多かったのですが、最近はインテリアアイテムとして存在感のあるスタンドライトなどを選ぶ方が目立ちます。インテリアとしての照明やあかりについて関心を持つ人が少しずつ増えているということでしょうか。
越川:単に、明るさを確保するための照明ではなく、もっとあかり環境について注目してほしいですね。そのためには、ホテルやレストランで「くつろげる」と感じたら照明はどうなっているか、観察してみましょう。照明の配置や明るさに心地よさの理由があるのかもしれません。
くろださん:私はホテルで素敵なスタンドライトを見つけたことがきっかけで照明に興味を持つようになったのですが、外出先で照明に目を向けると発見があると思いますよ。
越川:そうですね。お気に入りの空間を探したり、好きな照明器具を見つけるところから照明について関心を深めていくのもありだと思います。本日はありがとうございました。
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※一般社団法人 日本照明工業会・住宅リニューアル小委員会
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