損害保険/地震保険の入り方

地震保険の意外と知らない4段階の保険金支払基準

地震保険は火災保険と異なり被害状況によって予め決められた保険金の支払基準があります。2017年1月以降は、全損・大半損・小半損・一部損の4段階です。改定前は全損・半損・一部損の3段階ですが、当面この2つの支払基準が並行します。地震保険の支払基準について解説します。

平野 敦之

執筆者:平野 敦之

損害保険ガイド

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地震保険は被害状況により保険金の支払基準がある

地震保険の全損・大半損・小半損・一部損とは?

地震保険の全損・大半損・小半損・一部損とは?


地震保険は火災保険と必ずセットで加入するため、同一の証券番号の一つの契約です。しかし火災保険と地震保険は万が一のときの保険金の支払方法や考え方が違います。

地震保険には、全損・大半損・小半損・一部損などの固定した4段階の保険金の支払基準があります。改定前は3段階ですが、意外と知らない地震保険の支払についてお話します。

火災保険と地震保険の保険金支払の違いと考え方

火災保険は、今は契約金額を新品の金額(再調達価額)を基準に契約するのが基本です。そのため事故や災害などで損害があった場合、契約金額を上限に実際の損害を保険金として支払うのが基本です。

古い火災保険だと時価を基準にしているケースがありますが、分かりにくくなるので一旦ここは置いておいてください。それに対して地震保険の保険金支払の考え方は全く違っています。個々の被災した状況に応じて実際の損害を支払うわけではありません。

決められた保険金の支払基準に当てはめて、該当する場合にその基準に応じた保険金の支払がされるだけです。そのため実際の損害に対して支払われる保険金が、多いときもあれば少ないときもあるのです。

これは地震保険が、火災保険のように実際の損害を補償して建物を修理したり、再築するためのものではなく、被災した後の生活再建を目的としているためです。火災保険と地震保険は契約は一つですが、基本的な考え方のベースはこのように違います。

地震保険の保険金の支払(2016年12月31日までの契約)

具体的に地震保険の保険金の支払方ですが、契約日によって現状2つのパターンがあります。

2016年12月31日までの契約については、次のように全損、半損、一部損の3段階の支払になります。
  • 全 損:地震保険の保険金額の100%(時価額が限度)
  • 大半損:地震保険の保険金額の50%(時価額の50%が限度)
  • 一部損:地震保険の保険金額の5%(時価額の5%が限度)

地震保険の保険金の支払(2017年1月1日以降の契約)

2017年1月1日から地震保険の改定により、地震保険の支払基準は次の4段階になっています。

全 損:地震保険の保険金額の100%(時価額が限度)
大半損:地震保険の保険金額の60%(時価額の60%が限度)
小半損:地震保険の保険金額の30%(時価額の30%が限度)
一部損:地震保険の保険金額の5%(時価額の5%が限度)

このように地震保険の支払い基準は現在では保険の始期日によって2つに分かれています。

多くの人が地震保険が値上がりとなったことから、タイミングの合った人は2016年12月までに契約しているケースがあるでしょう。その場合、保険金の支払は旧基準になります。改定があっても、いつ契約したかの保険始期を基準に保険金が支払われますので注意してください。

地震保険の保険金の支払で注意すること3点

地震保険の保険金の支払いについて注意しておきたいことを3点挙げておきます。

■地震保険の支払い基準が2021年12月31日まで2つある

保険金の支払い基準が2つあるのはすでにお話ししたとおりですが、地震保険は最長5年間なので2021年末まではこの2つの基準が続きます。

地震災害があったとき被災状況によっては、新基準あるいは旧基準の方が保険金を多く貰えたということがでてきます。自分でコントロールできることではありませんが、違いがあるということだけは知っておいてください。

■地震保険は保険金が0円のことがある
地震保険の保険金の支払で覚えておきたいポイントの一つが、被災しても保険金が1円も支払われないことがあるということです。

解説した基準の一番下の「一部損」に該当しなければ、地震災害で被災しても保険金の支払はありません。細かいところは分かりにくいので大まかな目安とお伝えしておきますので、大よそのイメージだけつかんでおいてください。
  • 家財:時価の10%以上の損害
  • 建物:主要構造部(屋根、柱、外壁など)の3%以上の損害
建物は主要構造部なので、単に建物を囲っている門や塀が地震で崩れただけなら保険金の支払いはありません。家財でも高価な食器が数枚割れてしまっただけならやはり保険金の支払いはないでしょう。

家財は家電や家具など査定の単価の高いものが4~5点損害があると、一部損の基準には引っかかりやすいでしょう。

■被災したらまずは見て貰う
自分で大した損害がなくても実は一部損にかかることはあります。建物の亀裂などは、一般の人が見ても分からない、見落とすことはあるのでまずは損害を見に来て貰いましょう。

被害なしと決めつけないことが大事です。保険金をもらいい損ねるかもしれません。

共済の地震災害の支払い基準は?

地震保険の保険金の話をしていますが、共済の場合でも基本的な考え方は変わりません。軽微な損害なら対象外にしています。全労済などで数万円の見舞金などを支払う制度がありますが、一定額以上の損害がないと基本的なところから共済金の支払いはありません。

損保と共済は地震災害の補償についても商品内容が違いますし、保険金(共済金)の支払基準も異なります。また共済ごとにも基準は別々です。契約先の内容をチェックしておいてください。

地震保険には保険金の支払に総支払限度額がある

ちなみに地震保険の総支払限度額があります。これを超える地震保険の支払いがあるときは、加入者で按分することになっています。ちなみに現在の総支払限度額は11兆3,000億円です(2017年8月末)。

この話をすると不足しないのか、大丈夫なのかということをよく聞かれます。絶対に大丈夫だとは言い切ることはできませんが、この総支払限度額は固定されているものではなく加入者などを見ながら適宜見直されています。

ちなみに阪神淡路大震災が起こる前年1994年6月は1兆8,000億円、翌年1995年10月に3兆1,000億円に引き上げられています。現在阪神淡路大震災の発生前から、10倍以上の金額になっています。東日本大震災でも不足したわけではありませんが、上限が決まっている制度であることは覚えておきましょう。

いずれにしても地震保険の保険金の支払い基準には色々と制限があります。被災したときには気持ちの上で余裕がないでしょうから、日頃からこうしたことについても知っておいてください。

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