年収が減っても家計を縮小できない『無自覚貧乏』
女性からの老後のお金の相談で特に多い「ミジメな老後」を送らないためのポイントを解説します。会社員の場合、多くが50歳で昇給はストップ。55歳で役職を離れ、役職分だけ給料が減り、60歳で定年退職。再雇用制度を活用して65歳まで働くとしても、60歳からの給料は半分以下に、と右下がりの収入構造になります。50代になって給料が上がり、少し贅沢を覚えてしまった家計は、この段階的に右下がりになる収入構造に追い付けないのです。
高収入だったときの消費生活にマヒしているのか、収入が減っても何となく、これまでと同じような外食や食生活、ジム通いやショッピングなどを続けるご家庭は多いです。
収入が減っているのですから、それに見合った生活をしなければ、家計は破綻してしまうのですが、退職金があるというだけで、セーフティネットがあるような幻想を抱いてしまうのです。
退職金によって、破綻の危機が先送りされるので、本来は、早急に対策が必要な家計の見直しも、破綻の自覚がないため後回しになっています。取り返しがつかない金額まで、減ってしまうこともあるのです。
50代の給与が、手取りで月50万円。60歳になり再雇用で働くようになったら給与が月25万円と激減した。というご夫妻は、退職金があるからと安心してそれまでの生活スタイルを続け、生活水準を下げなかったために、年金生活が始まるまでに1200万円も取り崩してしまったと、ご相談の際に嘆いていらっしゃいました。
65歳になり、年金生活になるというので、通帳を見てみたら、退職金が半分になっていたことに気が付いた。というのですから、その能天気さに驚きです。とはいえ、似たようなケースは数多くあります。
とても残念ですが、こういうご家庭も「ミジメな老後」へまっしぐらです。
子や孫からの『ねだられ貧乏』
ミジメさを嫌う親は、「このくらいは持っていて当然」「買って当たり前」というお金の使い方をしますので、子どもにもそれが自然に伝わります。子どもは、それが「常識」だとしてとらえていきます。まだ、自分では十分稼げない子どもたちに、必要なものを自分でお金の工面をして買うことを教えるのではなく、必要なものだからと親が買い与えてしまうのです。
こうして育った子どもは、親にねだるのが上手になります。
スキルアップのために、資格取得の費用をねだったり、婚活のためにとブランド物の洋服をねだったり。「必要なのだから」と言えば、親がなんとかしてくれると思っているわけです。
子どもが親世代になっても、「孫の教育のために、こういう習い事が必要なので、援助してほしい」とねだることもあるでしょう。
親は、子どもにも孫にも、いい顔をしたいので、ねだられると嬉しくなって、おもちゃやランドセル、ピアノの発表会の洋服も買ってあげたくなってしまうのです。
「孫へのお祝いもやれないなんて、ミジメなことはできない」そう思う人もいるかもしれません。でも、それでよいのでしょうか。
子どもが困っているのであれば、助けてあげたいと思うのが親心です。
ですが、それも限度があります。後先考えずに、援助をし続けていったら自分たちの老後のお金は無くなります。親は無尽蔵にお金を持っているわけではありません。
自分たちの老後のお金を切り崩しながら、援助を続けていって、貯蓄が無くなったらどうしますか? 毎月の年金では生活が困窮するようになったら、子どもに頼りますか? 子どもに迷惑をかけられますか?
ねだられ続けた結果、どうなるかはお分かりですね。
「ミジメな老後」まっしぐらです。
ミジメさを嫌うあまり、身の丈以上の支出にも気がつかないので、「ミジメな老後」にまっしぐらな落とし穴に落ちますよ、というお話でした。
本当にミジメでない老後を目指すのであれば、
「こんなこともできない生活は『ミジメ』だ」という思いにとらわれないで、身の丈に合ったお金の使い方=本当に自分にとって必要なものを見極める力をつけてほしいと思います。
「お金さえあれば、満足のいくものを買える」のではなくて、自分にとって、「何が心を満たすもの」であるのかも見つけていきましょう。
そうすれば、今の支出も見直せて、貯蓄を増やすことは可能です。落とし穴にも落ちないですむでしょう。
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